旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2019年11月20日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

台湾・台中に誕生した温泉溪谷の楼閣『星のやグーグァン』 【後編】桃源郷のような空間で温泉三昧&リフレッシュ体験

温泉入浴後は森の空気をたっぷり吸い込めば、体中が浄化された感覚を味わえる。zoom
温泉入浴後は森の空気をたっぷり吸い込めば、体中が浄化された感覚を味わえる。
2019年6月、台中郊外の谷關(グーグァン)温泉に開業した、ラグジュアリー温泉リゾート『星のやグーグァン』。全室、自家源泉かけ流しの半露天風呂付き客室も魅力ですが、自然の地形を活かしたランドスケープデザインの中で過ごす時間もとても心地よいもの。【前編】につづき【後編】では開放的なパブリックスペースで体験した、谷關の自然と文化を楽しむアクティビティをご紹介します。

ウォーターガーデンは蝶やトンボが舞う、夏の終わりの桃源郷
訪れたのは10月の終わり。この時期、夏の気配もわずかに残っているのが感じられます。晴れた日の昼間は30℃近くにまで気温が上がるとのことでしたが、標高800mのここにはひんやりと心地よい風が吹き抜けていました。
ガゼボがあるプールとビオトープ風のウォーターガーデン。蝶やトンボが舞い、野鳥の声が賑やか。白いフクロウが姿を現すことも。zoom
ガゼボがあるプールとビオトープ風のウォーターガーデン。蝶やトンボが舞い、野鳥の声が賑やか。白いフクロウが姿を現すことも。
豊富な湧き水を巡らせたウォーターガーデンで戯れるのは、鮮やかな色をまとった蝶やトンボたち。このあたりは特に蝶の種類が多いことで知られる場所だとか。人工的な音は一切なく、耳に届いてくるのは水が流れる音と鳥のさえずり。早朝は特に鳥の声が賑やかです。

体中に早朝のフレッシュな気を取り入れる『氣循森呼吸』を体験
ウォーターガーデンにはいくつものガゼボ(西洋風の東屋)が配され、自由にくつろぐことができます。早朝、プールサイドに設けられたデッキで行われるのが、気功をベースにした深呼吸とストレッチを組み合わせたオリジナル体操『氣循森呼吸(きめぐりしんこきゅう)』。起き抜けの軽いストレッチのつもりで参加してみたら、これがなかなかの運動量。普段の生活ではあまり使わない部分がしっかり伸ばされ、少しだけインナーマッスルまで鍛えられたよう。なによりも体中が新鮮な森の空気で満たされた感覚が心地よく、リフレッシュとはまさにこのこと。
毎朝7:30から30分間行われる『氣循森呼吸(きめぐりしんこきゅう)』を体験。インストラクターは、現地スタッフのファンさん。zoom
毎朝7:30から30分間行われる『氣循森呼吸(きめぐりしんこきゅう)』を体験。インストラクターは、現地スタッフのファンさん。
3種類のメニューから選べる朝食
身体を動かした後は、ウォーターガーデンを見渡せるダイニングでブレックファストタイム。朝食には台湾式・和食・洋食の3種類が用意されています。当然、チョイスは台湾式。ホタテの貝柱と鶏のお出汁でじっくり炊かれたお粥は、旨みがたっぷり。そのままても十分美味しいのですが、煎り落花生やデンブ、ザーサイやピータンといった台湾ならではの薬味を添えると、いくらでも食べられます。もちろん、お粥のお代わりもOK。デザートには台湾の伝統的なスイーツ『豆花(トウファ)』とフルーツが付きます。
朝食後は腹ごなしを兼ねて、館内とウォーターガーデンの散策へ。敷地内の植物や季節の花々を通じて、この地のストーリーを紹介するアクティビティが用意されています。土地の背景や歴史を知れば親しみがぐんと増して、よりディープな滞在を体験できます。
台湾式・和食・洋食から選べる朝食メニュー。台湾式朝食ではお粥と伝統的なスイーツも味わえる。zoom
台湾式・和食・洋食から選べる朝食メニュー。台湾式朝食ではお粥と伝統的なスイーツも味わえる。
ひんやりデザートと養生茶をいただきながら温泉三昧のひととき
午前中のおやつタイム『谷茶のひととき』も見逃せません。大浴場の湯上り処では季節に応じてこの地域の食文化を取り入れたオリジナルスイーツが振る舞われます。この日は『五葉松のかき氷』。す~っとした清々しい香りがあり、かき氷の中にはほんのり甘く炊いたアズキが忍ばせてありました。

夕方の入浴前に体験したいのが、『星のやグーグァン』が誇る温泉達人がより効果的な入浴方法を教えてくれる『温泉の時間』。指南役は、台湾とともに日本の温泉文化にも通じたユエさん。入浴中におすすめのストレッチ方法と、"美人茶"と呼ばれるローズヒップティー、有機ウーロン茶、肝臓を労わる養肝茶の3種類の養生茶について、飲み分け方を教わりました。
上/季節に応じて湯上り処で振る舞われるスイーツは、外のテラスで味わいたい。下/台湾の養生茶をいただきながら、入浴中におすすめのストレッチ方法を教わる『温泉の時間』。zoom
上/季節に応じて湯上り処で振る舞われるスイーツは、外のテラスで味わいたい。下/台湾の養生茶をいただきながら、入浴中におすすめのストレッチ方法を教わる『温泉の時間』。
台湾の食材と日本料理の技法を味わうディナータイム
夕食のメニューは、日本食コースとアラカルトから選べます。会席仕立てのコース料理に登場するのは、谷關名物として知られるチョウザメの南蛮漬けをはじめ、土瓶蒸し、お造りの盛り合わせ、和牛の小鍋仕立てなど。食材と調理法はもちろんのこと、有田、備前、福井の塗り物など器も厳選したものばかり。驚いたのは、新鮮で豊富な魚介類。ほとんどの食材が地元産とのことですが、まさかこんなに美味しいお刺身を台湾で食べられるとは想像もしていませんでした。
和食中心のメニューを提供しているのは、台湾のお客さんが7~8割を占めていることもあり、日本の温泉文化とともに食を通じて日本の魅力を伝えていきたいためだとか。アラカルトメニューも今のところ和食中心ですが、バリエーションを増やしていく予定だそうです。
台湾産の新鮮な食材を使い、日本料理の技法で作られるコース料理の一部。台湾ビールや、台中産ブドウのワインも味わえる。zoom
台湾産の新鮮な食材を使い、日本料理の技法で作られるコース料理の一部。台湾ビールや、台中産ブドウのワインも味わえる。
居ながらにして谷關の温泉と自然、この地に伝わる文化も体験できる『星のやグーグァン』。今後はスパプログラムも開始し、アクティビティ・メニューもさらに充実させていくとのこと。また異なる季節に再訪するのが楽しみです。

●星のやグーグァン
台湾台中市和平区博愛里東關路一段温泉巷16号
TEL 0570-073-066(星のや総合予約)
料金:1泊18,000台湾ドル~(1室あたり、税・サービス料別、食事別)
※1台湾ドル=約3.60円(2019年11月現在)

アクセス:台北松山空港より台北駅で乗り換え、高速鉄道・台中駅から車で約90分/台中国際空港から車で約90分(台中からの有料送迎も可能)
https://hoshinoya.com/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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