旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年12月3日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

山梨の名水育ち『富士の介』は、お魚博士もお墨付きの美味しさ!

世界で唯一、キングサーモンの血を引く山梨県のブランド養殖魚『富士の介』。zoom
世界で唯一、キングサーモンの血を引く山梨県のブランド養殖魚『富士の介』。
山梨県のブランド養殖魚、『富士の介』を知っていますか?
生産量がまだ少なく、食べられる場所も機会も限られてるこの希少な魚を訪ね、秋が深まる山梨路を訪れました。

キングサーモンの血を引く、名水育ちのお嬢様

世界文化遺産の富士山をはじめ、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父などの山々に囲まれた山梨県は名水の地。『富士の介』は、この豊富な名水を利用し、魚の養殖技術開発に取り組む山梨県水産技術センター忍野支所で誕生しました。
『富士の介』が誕生した山梨県水産技術センター忍野支所。豊富な名水を利用した養殖技術の開発に取り組んでいます。zoom
『富士の介』が誕生した山梨県水産技術センター忍野支所。豊富な名水を利用した養殖技術の開発に取り組んでいます。
キングサーモンを父親に、ニジマスを母親に生まれた『富士の介』。開発に着手してから交配成功までに、10年を要したといいます。開発担当者である主任研究員の三浦正之さんにお話を伺いました。

「キングサーモンの血を引く養殖魚の成功例は、『富士の介』が世界初。マス類の中で最も体が大きくなり味も良いキングサーモンは、“マス類最高級”の魚と呼ばれています。しかし、野性味が強く用心深い性格もあり、淡水の飼育下ではエサの量を食べないため養殖には向きません。一方のニジマスは、エサの食いつきがよく育てやすいこともあり、県内で古くから養殖されてきました。両者のいいとこどりで誕生した魚なんですよ」と三浦さん。凛々しい名前をもつ『富士の介』ですが、じつはすべて女の子。清冽な水で大切に育てられたお嬢様というわけです。

応援団長は、お魚博士のあの人!

もうひとつの特徴が、雌でありながら卵を持たないこと。これにより産卵で味が変わることがなく、つねに安定した身質と味わいになるのだそうです。身の色は、目にも鮮やかなサーモンピンク。きめ細やかな身質と、ほどよい脂ののり具合、豊かな旨みをもちます。
開発担当の三浦研究員(上)。『富士の介』の美味しさにほれ込んだ、さかなクン直筆の応援イラストも。zoom
開発担当の三浦研究員(上)。『富士の介』の美味しさにほれ込んだ、さかなクン直筆の応援イラストも。
現在、この水産技術センターで生まれた卵をもとに、県内7業者が養殖を手掛け、孵化から2~3年飼育したところで出荷されています。『富士の介』を実際に食してその美味しさに太鼓判を押し、自ら応援団長を買って出てくれたのが、お魚博士として知られるさかなクン。

希少なブランド養殖魚を味わい尽くす『富士の介フェア』

「脂がのっているのに、こんなに優しく上品な味の魚を食べたのは初めてかもしれない」と、さかなクンお墨付きの味を体験するため、『富士の介フェア』開催中の石和温泉『木創りの宿 旅籠(りょかん)きこり』を訪れました。
素材そのものを味わってみたくて、まずは何も付けない状態でお刺身をひと口。なめらかで舌のうえでとろける脂はとても上品で、熟成させた白身魚を食べているよう。甲州八珍果に数えられるリンゴや栗を組み合わせた焼き物、淡白な身の食感と風味を生かし、中心部をややレアに残した揚げ物など、どれも素材の持ち味を最大限に引き出したものばかり。山梨県ブランド食材のひとつでもある『甲州富士桜ポークの出汁しゃぶ』といった肉料理もあり、山梨の食を存分に味わえる内容でした。

生産量がまだ少なく、味わえる店舗も限られている『富士の介』。その存在をもっと知ってもらおうと、山梨県内のホテル・旅館、飲食店など31施設では『富士の介』フェアを開催中です。和食、会席料理のほか、フランス料理のフルコースで提供するレストランもあり、いずれも山梨食材をふんだんに使った料理になっています。
『富士の介フェア』メニューの1例。『甲州富士桜ポーク』のほか、どの料理にも山梨県産食材がたっぷり!zoom
『富士の介フェア』メニューの1例。『甲州富士桜ポーク』のほか、どの料理にも山梨県産食材がたっぷり!
山梨県独自の感染予防対策に適合する『やまなしグリーン・ゾーン認証施設』とは?

今回、訪れた石和温泉は首都圏から1.5~2時間とアクセスも良く、これからの季節は冬の温泉旅にぴったりの地。そこで気になるのが感染予防対策です。山梨県に出掛ける際、宿泊・飲食施設を選ぶ時の目安としたいのが、『やまなしグリーン・ゾーン認証施設』。認証を受けるためには、県が定めた数十項目にのぼる感染症対策に必要な基準に適合する必要があります。さらに施設側の自己申告ではなく、県が行う現地調査で確認できた施設だけに認証マークが交付されることもポイント。利用者は認証マークに組み込まれたQRコードをスマホで読み取ることで、各施設独自の対策も個別チェックできるシステムになっています。
フェア参加施設のひとつ『きこり』。玄関のスリッパ、宴会場、大浴場など、温泉旅館として万全の感染症対策が取られていました。zoom
フェア参加施設のひとつ『きこり』。玄関のスリッパ、宴会場、大浴場など、温泉旅館として万全の感染症対策が取られていました。
山梨食材を引き立てる、ワインの存在

山梨といえば、忘れてならないのが甲州ワイン。山梨県は、日本におけるワイン醸造発祥の地といわれ、日本最大数のワイナリーを擁しています。食後には、今回の料理に合わせて3種類のワインを提供してくれたワイナリー『ルミエール』を訪れました。ここは、1885(明治18)年、日本の近代化が進みつつある時期にいち早く西洋の食文化に注目し、誕生した醸造所。ヨーロッパ品種のブドウを導入し、土地がもつ自然の力を活かしながら農場の整備や醸造技術を向上させ、個性豊かなワインを造り続けています。
老舗ワイナリーの『ルミエール』。甲府盆地を一望するブドウ畑では、すべて手摘みしたブドウからワインが造られています。zoom
老舗ワイナリーの『ルミエール』。甲府盆地を一望するブドウ畑では、すべて手摘みしたブドウからワインが造られています。
山梨まで出かけなくても、東京に居ながらにして『富士の介』を味わえるレストランがあります。日本橋にある山梨県ブランドのレストラン『カーヴ・ド・ワイン県やまなし』は、都内で唯一の『やまなしグリーン・ゾーン認証施設』。山梨食材尽くしの料理のほか甲州ワインも提供し、感染症対策も万全。まずはここで、お魚博士お墨付きの味を、ワインとともに楽しんでみるのもいいですね。

〇『富士の介フェア』(2021年3月31日まで開催中)
https://www.pref.yamanashi.jp/nou-han/fujinosuke/fujinosuke_fair.html

●協力: 
山梨県農政部
木創りの宿 旅籠(りょかん)きこり https://www.yamashita.gr.jp/mizuho/index.html
ルミエール ワイナリー https://www.lumiere.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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