旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2020年2月25日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

館内すべてがミュージアム! アートな街のアートなホテル「QTミュージアム・ウエリントン」

パブリックスペースに飾られているのは、コンビーフの缶で作られた実物大の水牛のオブジェ。近くでじっくり鑑賞したい。zoom
パブリックスペースに飾られているのは、コンビーフの缶で作られた実物大の水牛のオブジェ。近くでじっくり鑑賞したい。
アーティストが多く集まる街としても知られているニュージーランドの首都・ウエリントン。市内にはニュージーランドや先住民マオリの歴史がわかる貴重な資料を収集する美術館から、コンテンポラリーアートを楽しめるギャラリーまで50カ所以上があり、アート好きの人にも楽しみが多い街です。そんなウエリントンを旅する拠点にぴったりのホテルが、「QT Museum Wellington(QTミュージアム・ウエリントン)」。居ながらにしてミュージアムを巡るような体験ができるホテルです。

歴史あるアートホテルのビジョンを引き継ぎ、新たな魅力を創出する
以前は実業家でありアートコレクターでもあるオーナーが所有し、「Museum Art Hotel(ミュージアム・アート・ホテル)」の名で営業をしていたこのホテル。「世界の素晴らしい芸術品が見られるベストホテル10軒」に選ばれたこともあったのだそう。前オーナーのコレクションとともに、スピリットも引き継いたのが、オーストラリアを拠点にデザインホテルを展開するQTホテルズ&リゾーツ。ここが、ニュージーランド初進出になります。
アート作品に囲まれて寛げるロビーラウンジは、地元の人の社交場としても人気がある。zoom
アート作品に囲まれて寛げるロビーラウンジは、地元の人の社交場としても人気がある。
リブランドによる2017年のオープンにあたり目指したのは、ホテルの歴史を重ねながら新たな魅力を創出すること。そんなところにも、ニュージーランドの人たちの“サスティナブル” “エシカル”にこだわるライフスタイルが影響したのかもしれません。

パブリックスペースと客室を手掛けたのは、建築家でありデザイナーでもあるシェリー・インダイク氏。もとからある独創的なコレクションの数々を活かしながら、居心地のいい空間を作り出しています。まっさきに目を引くのが、コンビーフの缶で作られた実物大の水牛のオブジェ。実際に触れることができ、近くで見ると大胆な発想のなかに、缶の色、細かな模様まで緻密に計算して作られていることがわかります。

私が滞在したのは、パステルのイラストが可愛いこの客室。zoom
私が滞在したのは、パステルのイラストが可愛いこの客室。
19人の地元アーティストが手掛けた客室が楽しい!
全165室の客室も、一つひとつが展示室のよう。なかでも「Gallery 4(ギャラリー4)」と名付けられた4階フロア25室の内装は、地元アーティスト19人が手掛けています。いくつかを見せてもらいましたが、モノトーンでまとめられたシックなものから、壁面に砕ける波をダイナミックに描いた客室、パステルの優しい色調、アバンギャルドなものまで、それぞれに19人の個性が躍ります。客室からテラスの壁面までみっしりと描かれたペイント、カバのオブジェ、アメニティなどにも遊び心があふれていて、個性が強いものがまとまって一体感を醸しているのも見事です。
それぞれのアーティストが楽しんで作ったことが伝わってくる。テラスの壁までみっしり描かれたイラストもすごい!zoom
それぞれのアーティストが楽しんで作ったことが伝わってくる。テラスの壁までみっしり描かれたイラストもすごい!
いまも語り継がれる、ホテルにまつわるエピソードとは?
ホテルがあるのは、ウエリントンの街の中心に近く、ニュージーランド国立博物館「Museum of New Zealand, Te Papa Tongarewa(テ・パパ・トンガレワ)」の向かい側という好立地。ラムトン港に面し、海辺の散策も楽しめるロケーションです。
じつはこのホテルには今でも地元の人たちに語り継がれているエピソードが残ります。「ミュージアム・アート・ホテル」だった1993年のこと、地盤沈下の被害から免れるため、海側から120mも建物を移動させ、現在の場所に引っ越してきたのだそうです。レールを敷き、4階建ての建物を引っ張って動かしたというのですから驚き。その作業現場に、ぜひとも立ち会ってみたかったと思うのは私だけではないでしょう。
ハーバービューのロケーション。もとは今より120m海側にあった建物を、そのまま移動させた。zoom
ハーバービューのロケーション。もとは今より120m海側にあった建物を、そのまま移動させた。
また、ホテルの前にある信号機は、先住民マオリの舞踏「ハカ」をモチーフにしたもの。赤がシコを踏んだような停止ポーズ、青が片足を踏み出し片手を上げたポーズになっています。赤から青に、青から赤に点滅しながら変わる瞬間が楽しくて、横断歩道を渡るのを忘れ、しばらく立ち止まり見入ってしまいました。このハカ信号、市内中心部の大きな交差点にも何カ所か設置されているのでチェックしてみてください。

クリエイティブな街・ウエリントンには、アート作品を鑑賞できるミュージアムやギャラリーだけでなく、市内の建築物やショップのサイン、ホテルや信号機にまで、デザインと遊び心があふれています。
ニュージーランド唯一の国立博物館の向かい側にあり、ウエリントンのアート巡りにぴったりのロケーション。zoom
ニュージーランド唯一の国立博物館の向かい側にあり、ウエリントンのアート巡りにぴったりのロケーション。
●QT Museum Wellington(QTミュージアム・ウエリントン)
90 Cable Street, Te Aro, Wellington
TEL+64 4 802 8900
www.qthotelsandresorts.com/wellington/

【協力】
ニュージーランド政府観光局 Tourism New Zealand
https://www.newzealand.com/jp/
ニュージーランド航空 AIR NEW ZEALAND
www.airnewzealand.jp
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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