ANAの一番新しい就航都市
ANAがデリー、ムンバイに次いでインド第三番目の就航地として選んだのはチェンナイ。インドのデトロイトと称され、600社を超える日系企業が進出する南インドを代表する都市として有名です。
就航開始は2019年10月27日。以降週3便で成田空港と結んできました。2020年3月29日のウラジオストク線への新規就航までは、ANAの一番新しい就航地になります。
現地では、気候が安定していて暑さがおさまる1月下旬にこのチェンナイへ行って来ました。
チェンナイへ飛んだ
ANA825便は成田空港を11:10に出発します。ANAの国際線最長のメキシコ路線に使われる、エンジン強化型のボーイング787-8型機JA827Aに乗り込みます。3つのコンパートメントの2つめ主翼中央部までがビジネスクラスの46席です。その後ろにプレミアムエコノミークラス21席が続き、3番目のコンパートメントはエコノミークラスのみ102席があります。機体半分のスペースがビジネスクラスで出張需要が旺盛な路線だとわかります。全体的にとてもゆとりのある空間になっていました。
今回乗ったのはエコノミークラス。ボーイング787のインフライトエンターテインメントはタッチパネルで操作が楽です。マップ機能では、オートプレイを使って自動で拡大・縮小する画面で飛行経路を確認することができます。エコノミーでも座席にはクッションとブランケットが用意されており、ヘッドセットは簡易なものではなく耳を覆う本格的なもので、高級感があります。画面の下にはUSB端子もありました。
食事を愉しむ時間
楽しみにしていた機内食の時間。おつまみとしておかきが最初に配られました。次にドリンクサービスが始まります。ドリンクリストを見るとインド線ならではのチャイの用意もあるようです。アルコールも充実。日本酒は土佐の「司牡丹純米辛口」、スパークリングワインはフランスの「ヴーヴ・オリヴィエ・ブリュット」、ワインは赤白ともにANAオリジナルの「トゥーレル・ド・トロミー」。他にはビール、ウィスキー、ジン、ウォッカがありました。
メインは、フィッシュorチキン?と口頭で聞かれ、予想とは違う物が出てくる経験はないでしょうか。ANAでは客室乗務員の配ってくれる写真付きのメニュー2種類の中から選ぶことができます。選んだのはシーフードのトマト煮込みバジル風味。彩りが良くしっかりとした味付け。さすがは日系エアラインの機内食です。小鉢も充実しており、前菜は和風ジュレのかかったほぐし鶏、フレッシュハーブ添えのヘルシーサラダ。和風小鉢は中巻きと枝豆の春雨サラダ、さらにイタリアンドレッシングのかかったミックスリーフのサラダもあります。野菜メニューが豊富で健康に気を遣ったものだとわかります。これにコーンスープ、バゲットとチーズの添えられたクラッカーでボリューム満点です。そして食後にはハーゲンダッツのバニラカップが配られ、思わず笑顔になりました。
しばらくして機内は暗くなり睡眠時間となりますが、客室乗務員はその間も機内の様子に目を配りながら、休むことなくミネラルウォーターや時にはコーンスープ、チャイなどを配って歩いていました。
到着の1時間半前になると、ボックスミールが配られました。この箱がとても可愛い。ふたが飛行機の形にくりぬかれていて、そこからサンドイッチが見えています。中身はコールスローをのせたサンドイッチで、ここでも野菜の多さに大満足。十勝ヨーグルトとフルーツが添えられて、にぎやかな軽食でした。
飛行経路
本州を中部、関西、九州北部へと一直線に飛び、上海から中国大陸に入ります。昆明市、ミャンマー、バングラデシュを通り、コルカタからインドに入り南下しチェンナイに至ります。
フライト時間は冬の西行のために10時間5分が設定されており、帰路の夜間便は、ジェット気流に乗って7時間25分となります。
着陸前には、降下中と到着した空港内での写真撮影は禁止とのアナウンスが流れます。インドでは、国防上の理由から、空港だけでなく鉄道駅などでも撮影が禁止されているようです。時刻は17時50分。機窓で見るベンガル湾に面した街も夕暮れの時間になっていました。
ANAに聞く、チェンナイの潜在力
チェンナイはビジネス利用の都市として認知されている場所だといいます。南インドで代表的な港湾都市であることも、経済が活気づく指標となります。「日系、外資系自動車メーカーを中心とした製造業に加え、近年は商社等が整備した工業団地へ中小企業が加速的に進出しています。旅客だけでなく貨物需要に応えることができる工業都市としての潜在力が、チェンナイの強みです」と、ANAチェンナイ支店の総務・営業マネジャーの種田 慶氏が答えてくれました。
観光需要を取り込みたい
種田氏によると、就航後3カ月の滑り出しは好調でビジネス利用は安定しており、この先は観光需要の喚起を想定しているとのこと。チェンナイ市街南部には、世界遺産「マハーバリプラムの建造物群」で有名なマハーバリプラムがあり、南西方向には5000年前の預言者が残した「アガスティアの葉」による占いで有名なカーンチプラムがあります。また、チェンナイ市内には極彩色に彩られた美しい寺院「カーパレシュワラ寺院」やローマ法王も訪れた「サントメ教会」など、観光地が散在しています。さらにチェンナイ市の南東に広がる長い海岸線は、ビーチリゾートとして開発されており、今後観光需要がさらに増えることが予想されています。
日本に関心が向くインドの今
タミル映画と称される映画産業が盛んなタミル・ナドゥ州で制作された映画「SUMO」は日本人力士が登場する内容。今夏の封切りに向けて期待が高まっています。現地では直行便の就航を機に日本へのツアーの造成が始まっており、今後南インドから日本を訪れる観光客もさらに増加すると期待されています。
日系エアラインの課題は、就航先での認知度向上ですが、チェンナイは双方向での交流が期待される路線となっているようです。
ANA社員がチェンナイで奮闘
年間を通してロードを高めるために奔走する忙しい時間の合間にインタビューに答えてくれた種田氏。入社16年の中堅社員です。過去には、客室乗務員として3年間乗務した経験を持っています。他職種を経験したことが今に活きていると言います。飛行機が好きだと伝えた私をチェンナイ国際空港にほど近い小高い山に案内してくれました。カトリック教会が山頂にあるセントトーマス山のナショナルシュラインです。07滑走路を離陸していく機体が力強く上昇していく様子を見つめる彼の目に、日印の架け橋となる強い意志が感じられ、頼もしく思いました。
JALは3月29日からチェンナイの西へ350㎞の「ベンガルール」に就航します。南インドへ先行するANAは、盤石の体制でライバルを迎える用意ができているように思えました。
協力:ANA ⇒ https://www.ana.co.jp/