旅の扉

  • 【連載コラム】舞台とハワイと時々ニューヨーク
  • 2020年1月27日更新
アート&トラベルライター:青山ルビー

映画版キャッツで愉しむ、プチ・ロンドン観光

ロンドンではクリスマスシーズンに公開となった映画版CATS(キャッツ)。写真はウエストエンドの劇場街にある映画館zoom
ロンドンではクリスマスシーズンに公開となった映画版CATS(キャッツ)。写真はウエストエンドの劇場街にある映画館

映画版ならでは ミニ観光気分を味わう

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24日に日本公開となったミュージカル映画CATS(キャッツ)。イギリスの詩人TS・エリオットの作品を原作に、ミュージカルの巨匠アンドリュー・ロイド・ウェバーが作り上げた作品を、トム・フーパーが監督し映画化されたものです。ミュージカル版は1981年のロンドン初演以来、ブロードウェイをはじめ世界各地で上演されている名作です。

自ら『ジェリクルキャッツ』と名乗り、自由に生きる猫たちが主人公で、年に一度だけ開催される特別な『ジェリクル・ボール(ジェリクルキャッツ達の舞踏会)』の一夜を描いています。“ジェリクル”というのは造語で、人間や周りに媚びを売らず、精神的に自立して自由な生き方を選んでいる猫を表しています。飼い猫でも精神的にジェリクルとして生きていれば仲間として認められるようなのですが、街で生きる猫も多いため、ごみ置き場が主な舞台となります。

集まる猫たちは、長老猫がたった1匹だけに与える“新しい猫人生を生きる権利”を求めて、自分こそがふさわしいと、歌やダンスでアピールします。それぞれの猫人生の苦悩や葛藤、過去への執着と解放、喜びなどが表現され、それを観る人間オーディエンスにも感動や示唆を与えてくれる、という作品です。猫が主人公ですが、人間の生き方や決断、どう生きるのか、どう生きたいのかという大きなテーマにも通じています。

舞台版のキャッツでは、ロンドンの街中のごみ置き場を再現した舞台セットで、主人公の猫たちのサイズにあわせて、ゴミのセットが巨大サイズで置かれた、とてもシンプルなものです。セットは最初から最後まで大きな変化はなく、小物を使った演出やライティングだけでシーンに合わせた情景を表現しています。

ミュージカルが映画版として制作されると、毎回いろいろな賛否両論の声が巻き起こります。ですが、映画版ならではの楽しみとして、舞台では表現しきれなかった情景や主人公たちを取り巻く街の雰囲気が映像として追加され、作品の世界がより鮮明にオーディエンスに届くという点があると思います。

映画版キャッツでは、ごみ置き場もきちんと出てきますが、フィーチャーされる猫やその楽曲にあわせてロンドンの街並みがチラホラと出てきます。ロンドン好きには観光の視点からも楽しめる内容になっていますので、最近のロンドンの街並み写真とあわせて、登場する場所を少しご紹介したいと思います。

工事中のビッグベン。時計部分はかろうじて一部外から見られるようになっているzoom
工事中のビッグベン。時計部分はかろうじて一部外から見られるようになっている
ロンドンを象徴するランドマーク、時計塔ビックベン

ビックベンの愛称で親しまれている英国会議事堂(ウェストミンスター宮殿)の大時計は、映画キャッツの中やポスターの中にも出てきます。テムズ川沿いに立つ国会議事堂は時計台を含め大工事が進行中です。

2017年に始まったビックベンの工事は2021年まで続く予定だそうです。本来であればトラファルガー広場からもその雄姿がみられますが、今は工事の足場に覆われた仮の姿となっています。映画の中ではもちろん、美しい姿を見せています。 
ナショナル・ギャラリーに面したトラファルガー広場には、噴水や4頭の大きなライオンの像があるzoom
ナショナル・ギャラリーに面したトラファルガー広場には、噴水や4頭の大きなライオンの像がある
大きなライオンが印象的なトラファルガー広場

ロンドンを代表する美術館、ナショナル・ギャラリーに面したトラファルガー広場には、噴水や4頭の大きなライオンの像があり、クリスマスマーケットをはじめ、季節ごとに様々な催し物が行われ、多くの人でにぎわっています。人間がライオンに乗るのは禁止されていますが、映画では猫たちが乗っていました。
ピカデリー・サーカスの広場には、矢を射る天使エロスの像があるzoom
ピカデリー・サーカスの広場には、矢を射る天使エロスの像がある
天使が羽を広げる印象的な銅像が迎えてくれる、ピカデリー・サーカス

優雅な弧を描くショッピング天国リージェント・ストリートや劇場が立ち並ぶシャフツベリー・アベニュー、ヘイマーケットなどの大通りが交わるピカデリー・サーカスは、待ち合わせ場所としても有名なエロスの像があります。頂点にいる天使が羽を広げて矢を射る姿が印象的です。キャッツの映画の中でも猫たちとのコラボレーションが見られました。 
テムズ川にはいくつもの橋がかかるが、美しい2つの塔がそびえるタワー・ブリッジは特に人気が高いzoom
テムズ川にはいくつもの橋がかかるが、美しい2つの塔がそびえるタワー・ブリッジは特に人気が高い
ロンドンの街をつらぬくテムズ川

映画キャッツの中にはテムズ川にかかる橋も登場します。写真のタワー・ブリッジは大きくは出てきませんが、後ろに映り込んでいたような。

また、テムズ川にかかる別の橋と近くの鉄道駅が登場します。詳細は説明されませんが、ビッグベンとタワー・ブリッジの間で鉄道が通る位置関係から、ハンガーフォード橋あたりかな(あくまで推察)と思います。このようにテムズ川近辺も少し登場します。
緑と赤の組み合わせはロンドンの劇場やお屋敷でよく見られる配色です。これが映画にも登場していましたzoom
緑と赤の組み合わせはロンドンの劇場やお屋敷でよく見られる配色です。これが映画にも登場していました

繁華街の路地裏と劇場

映画の中にはロンドン中心部の路地裏や、劇場街、繁華街近くのバーやショップも少し登場しています。一瞬ですがロンドン・タクシーも見られました。

舞台版のキャッツでは垣間見ることのできないロンドンの街並み。美しいロンドンを映画版で味わってみてはいかがでしょうか。


”映画ならでは”の楽しみがもう一つ

舞台版にはなく、映画ならではのもう一つの楽しみは、自身も猫役として映画に登場するテイラー・スウィフトが、アンドリュー・ロイド・ウェッバーと共に制作した新曲「ビューティフル・ゴースト(
Beautiful Ghosts)」です。

映画の中では白猫のヴィクトリアを演じるフランチェスカ・ヘイワードが切なく歌い、エンドロールではテイラー自身の歌声が流れます。キャッツを代表する名曲「メモリー」と、まるで対を成すような歌詞は、美しく素晴らしいの一言です。往年のキャッツファンも、きっと納得してくれる新曲ではと感じました。

展開が早く、ダンサーの踊りとシンガーの歌唱力で走り切る感覚の舞台版には、もしかしたらフィットしないかもしれませんが、映画版ではこのエモーショナルな新曲が繊細さとインパクトを与え、物語の深みが増しています。

ロンドン観光気分と深みを増したストーリーを同時に愉しむことができる映画版キャッツ。とても楽しい1時間50分でした。

*写真は
201912月時点のロンドンです。映画版では架空の看板が出てくるなど、実際の姿そのままではありませんのでご了承ください。(CASINOCATSINOになっているなど、猫つながりの遊びを見つけるのも楽しいです)

アート&トラベルライター:青山ルビー
ミュージカルやバレエなど、舞台に魅せられて約20年。ロンドン、ニューヨーク、東京で足しげく劇場に通う。「オペラ座の怪人」は25回以上、「レ・ミゼラブル」は15回以上、「RENT」は10回以上鑑賞。新作巡りやキャストにもこだわりが。また、ハワイの大自然と文化をこよなく愛し、ハワイ渡航歴25回以上。ハワイ州観光局公式ハワイスペシャリスト上級(ハープウ)を保持。温泉ソムリエ協会認定温泉ソムリエ。
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