旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2020年1月8日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

ドイツ観光地の人気ナンバー1に輝いた「ミニチュア・ワンダーランド」

高低差のある巨大なスイスのテーマパークzoom
高低差のある巨大なスイスのテーマパーク

巨大なジオラマテーマパーク
欧州、特にドイツでは日本以上に鉄道ファンが多く、乗車、撮影、模型を集めるなど、大人が楽しむ趣味と言われています。世界に輸出される鉄道模型メーカーが多くあり、腕を競い合っています。そのドイツで鉄道のジオラマを深耕したテーマパークができたのも自然な成り行きです。ドイツのブラウン兄弟の夢から始まったHOサイズ(1/87)の「ミニチュア・ワンダーランド」は2001年に営業を開始しました。

広がり続ける驚きの施設
「中部ドイツ」、「オーストリア」、架空の都市「クヌッフィンゲン」の3つのテーマでスタートしたエリアは年々拡張を経ています。鉄道のみならず、「スカンジナビア」では船が現れ、「クヌッフィンゲン空港」では航空機が登場し、現在9つのテーマを持つ世界を作り上げました。最も新しい場所は、イタリアの「ベニス」です。現在も拡張は続けられており、モナコと南仏プロバンス地方が2020年中にお披露目されます。続けてFun Fairというおとぎの国がデビュー。2021年には南米。2023年に中央アメリカとカリビアン諸国、そして2026年にはアジアの国がデビューする予定です。

現在までの敷地面積は約1,500㎡。製作費は3,500万ユーロとのことですので、日本円に換算して42億円にもなります。

子供にも人気のスイスのテーマパーク コンサート会場zoom
子供にも人気のスイスのテーマパーク コンサート会場

現在入る建物が手狭になり、運河を隔てた隣のビルへの拡張が決まりました。ドイツの観光地NO,1になったこともある、世界中の人に愛されるこの場所は、一年365日稼働しており、一番長い営業を行う週末では、午前7時から深夜1時まで、最大18時間営業をすることがあります。

数字で見る大きさ
設立以来常に拡張している為、リピーターが多く飽きさせない工夫が随所に見られます。それは、単に鉄道のジオラマというだけでなく、生きた動きのあるテーマパークだからです。1,040の車両が1,380の信号機のある線路を50台のコンピューター制御によって動きます。館内には、見学者が自由に試せる稼働スイッチが200にも及び、人形の数は実に26万体。フィギュアが動きを持って物語を作り出します。見どころのひとつとなる夜景のシーンを作るLED照明はなんと39万個にもなります。15分に1回の割合で夜になり、ジオラマにセットされた照明が美しく輝きます。このような生きた展示が人を惹きつけるようです。

まずはエレベーターに乗り2階に向かいます。一般成人の入場料15ユーロ(日本円換算で約1,800円)を払い、ゲートを抜けます。売店とレストランもありますが、それは最後のお楽しみ。取材に際し、トーマス・セルニーさんが案内してくれました。最初に向ったのは、国別入場者を示すサインボード。総計1,928万人あまりの中で日本人の訪問者は3,8万人ほど。遠い国とはいえ、先進国でこの数字は少し寂しいように感じます。

空想の飛行場で航空機が飛ぶ
まず目を引くのは、架空の空港「クヌッフィンゲン」です。模したのはハンブルク空港ターミナルビル。ここには52機の航空機があり、離着陸を繰り返しています。自動で航空機が動くのは勿論、風向きによって使用滑走路が変わる様子も再現できるようになっているのは驚きです。現代の旅客機が飛び、昔の航空機は駐機場に華を添えます。ターミナルビル周辺は特に細かく造られています。多くの車両がビルに向かう様子が表現されており、タクシーの車列の中には、よく見るとトナカイがいるという場面もあり、細かいところまで目が離せません。

クヌッフィンゲン空港ターミナルビルの奥に広がる駐機場と滑走路zoom
クヌッフィンゲン空港ターミナルビルの奥に広がる駐機場と滑走路

本物の水に浮く船舶
船が運航するのは、北欧スカンジナビアの様子。北海とバルト海には3万リットルの水が貯められ、潮の満ち引きが再現されています。フィヨルドを見学する北欧のクルーズが運航し、最大の船舶はイタリアのAIDA blu号です。2,100人が乗る7万トンのこの船舶は、バックヤードで出番待ちでした。修理場にあったのはギリシャ船のスーパーファーストで2.5万トンの貨客船です。お客さんの目に触れる海に浮かぶのは、ベルグヴィック港に停泊する5千トンのユーロエクスプレスで、貨物船。波に揺られ動く姿は、実際の船と見まがうばかりの出来栄えです。

スカンジナビアテーマパークは船が中心 バックヤードでAIDA Blu号の前のMr. トーマスzoom
スカンジナビアテーマパークは船が中心 バックヤードでAIDA Blu号の前のMr. トーマス

スイス山岳鉄道
高低差の広がりを持つのはスイスで、山岳鉄道が作られています。建物の3~4階へと吹き抜けでアルプスが広がり、5,982mのマッターホルンが鎮座しています。スイスらしく、チョコレート工場も稼働しています。また、スイスが誇る音楽家DJボボによるコンサートの様子が再現されており、多くの観客が声援を送る姿は圧巻です。館内のスピーカーの音楽で臨場感溢れる場所になっています。

バックヤードも公開
本来、製造・修理などの作業部分は閉鎖的な場所で行ってもいいものですが、ここでは多くが公開されています。模型工房、テクニカルルームやコントロールルームまでガラス窓の奥の位置にて実際の作業が見られるようになっています。現在は、建設中のモナコの街が出来ていく姿を見学することができます。

全てのテーマパークを動かす指令センター(上)と技術作業場zoom
全てのテーマパークを動かす指令センター(上)と技術作業場

語りのある26万体のフィギュア
この施設の目玉は、この細密なジオラマとその規模にあるのは間違いありません。でも、それだけにとどまらないところがすごいところ。常に成長する規模も素晴らしいのですが、ジオラマに配されたフィギュアに命が吹き込まれている様子がわかることです。

慈善コンサート会場では、演奏者と観客が一体となって盛り上がる様子が再現されています。スイスの街角では、スイスホルン奏者と踊る人々が軽快に描かれます。ベニスの街の中に、スイッチを押すと地震で揺れる建物が1軒あることに気付きます。そのまま見ていると、壁が抜け落ちて建物の中の様子がさらされます。そこには、カップルが仲睦まじくベッドにいる様子が見えました。このような発見をしていくだけで、時間が経つのを忘れてしまいます。

フィギュアの表情のあれこれzoom
フィギュアの表情のあれこれ

レストランに行けばパスタやシチュー、ソーセージなど温かい食事が販売され、来場者が長時間滞在する事を想定しています。売店では、子供向けのおもちゃから、資料性のある書籍やDVDなどもあり、全世代向けに楽しむ工夫のされた場所です。ミニチュア・ワンダーランドは、ここへの訪問の為だけに渡航してもいいと思わせる施設でした。

協力:ドイツ観光局        ⇒ https://www.germany.travel/jp/index.html
        ミニチュア・ワンダーランド ⇒ https://www.germany.travel/jp/index.html (英・独)

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

ブログ「あびあんうぃんぐ」:http://blog.livedoor.jp/avianwing
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