旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2019年11月28日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

台湾・台中に誕生した温泉溪谷の楼閣『星のやグーグァン』 【タウン編】ローカル気分に浸る、谷關温泉ぶらぶら歩き

谷關の温泉街のあちこちでこんな光景が。水着を着用しプールのように楽しむのが台湾式温泉入浴法。zoom
谷關の温泉街のあちこちでこんな光景が。水着を着用しプールのように楽しむのが台湾式温泉入浴法。
九州とほぼ同じ広さに100カ所以上の温泉地がある台湾。今回、訪問した『星のやグーグァン』がある谷關(グーグァン)温泉が位置するのは、台中郊外・山岳地帯の渓流沿い。谷關温泉は1907(明治40)年、古くからこのあたりに住むタイヤル族によって発見されました。このころ台湾では日本による統治が行われ、明治時代に発見されたことから『明治温泉』とも呼ばれていました。実際に明治天皇がこの地を訪れ、日本の警察所の招待所も置かれていたそうです。『星のやグーグァン』は静かな渓谷の環境にあることから、人里離れた一軒宿のイメージですが、ゲートを出ればそこは地元の温泉街。【タウン編】では、台湾のローカル気分を味わえる温泉街散策をご紹介します。

ゲートの外に開けた温泉街をぶらぶら歩く

『星のやグーグァン』から徒歩5分の場所にあるのが、『谷關古霊寺』です。きらびやかな装飾が美しい小さなお寺は温泉開湯より古い1898(明治31)年の建立。台風などたびたびの天災に遭いながらも復興し谷關の町を見守ってきたことから、地元の人々の心のよりどころになっています。

上左/地元の人から親しまれている『谷關古霊寺』。上右/良縁を授けてくれる神様、月下老人。下左/一番高いところから町を見守る観音様。下右/小さいながら立派な造りの拝殿。zoom
上左/地元の人から親しまれている『谷關古霊寺』。上右/良縁を授けてくれる神様、月下老人。下左/一番高いところから町を見守る観音様。下右/小さいながら立派な造りの拝殿。
本堂があるのは、建物の脇から延びる階段を上った2階。小さなお寺とは思えないほど立派な造りです。せっかく訪れたので、旅の安全を祈願することに。長さ30cmもあるお線香に火を点つけたら、両手で掲げ3回拝礼します。このとき住所、名前、生年月日とともに願い事を唱えいるのが台湾式の参拝だとか。

さらに階段を上った3階では、まっ白な観音様が訪れる者を優しく見守ります。その足元に佇むのが、たっぷりとした髭を蓄えた月下老人。台湾では最強の縁結びパワーを持つとされる神様です。左手に持った赤い書物に人々の運命が記されているといい、最高の伴侶に結びつく赤い糸を授けてくれるのだそう。“運命の赤い糸”の由来がこの月下老人にあると聞けば、お参りせずにはいられません。地元の人によると、ここ谷關温泉の月下老人はチョコレートクリーム入りのプチシューが大好物なのだとか。良縁の願掛けをするなら、温泉街のコンビニでプチシューを買ってから出かるとご利益が倍増するかも!?
左/谷關温泉の歴史を周辺の見どころを紹介する『温泉文化館』。日本語のガイドマップも備えている。右/坂道を下ると渓流に架かる吊り橋へ。zoom
左/谷關温泉の歴史を周辺の見どころを紹介する『温泉文化館』。日本語のガイドマップも備えている。右/坂道を下ると渓流に架かる吊り橋へ。
『温泉文化館』は谷關温泉屈指のエンタメスポット!
渓谷に沿って開けた谷關温泉名物のひとつが、吊り橋。長い年月をかけて形成された山野を望み、心地よい風に吹かれながら散策を楽しめます。『谷關吊橋』を渡った渓谷沿いにあるのが、『温泉文化館(谷關ツーリストセンター)』。施設内では谷關温泉の歴史をはじめとした台湾の温泉について紹介しているほか、タイヤル族の衣装を着て記念写真が撮れる部屋も。入館、民族衣装着用のどちらも無料なので、ぜひ体験してみてください。隣接する温泉公園には、ドクターフィッシュがいる足湯もありました。
どこか懐かしさを感じさせる谷關の温泉街。地元のレストランや土産物屋巡りが楽しい。zoom
どこか懐かしさを感じさせる谷關の温泉街。地元のレストランや土産物屋巡りが楽しい。
ランチでは谷關の名物料理に舌鼓
温泉街には“中華家庭料理”の看板を掲げた店が軒を連ねます。生簀や水槽で見られるのが谷關名物のチョウザメやマス。その料理が評判の1軒『山江餐飲』を訪れました。日本語メニューがあり、壁に貼られた料理の写真を見ながら選べるから便利。5人で川エビの唐揚げ、チョウザメのしょうゆ煮、野菜の炒め物、鶏肉料理、チャーハンなど6~7品とビールも飲んでお会計は1人当たり約1,500円。その美味しさと安さもにびっくりです。
お土産を探すなら、温泉街にあるお茶や乾物の専門店へ。タイヤル族の民族衣装を着た店員さんが迎えてくれるコンビニエンスストアでも、台湾らしいスナックやプチプラコスメが見つかります。
上/谷關名物のチョウザメやマスをはじめとしたローカル料理を味わえる。下左/温泉広場の土産物屋。下右/コンビニスタッフのユニフォームはタイヤル族の民族衣装。zoom
上/谷關名物のチョウザメやマスをはじめとしたローカル料理を味わえる。下左/温泉広場の土産物屋。下右/コンビニスタッフのユニフォームはタイヤル族の民族衣装。
渓谷の風に吹かれてトレッキングを楽しむ
もうひとつの吊り橋『サオライ吊橋』を渡り、遊歩道をしばらく歩くとトレッキングコースの入り口に出ます。このあたりには散歩気分で歩ける1時間程度のコースから、7~8時間ほどかかる本格的なトレッキングコースまで、いくつものルートが張り巡らされています。地元・台湾の人たちは散策やトレッキングのあと、温泉で疲れを癒して帰るのだそうです。
渓谷に架かる『谷關吊橋』(上)と『サオライ吊橋』(下)は谷關温泉のシンボル。時間があればトレッキングコースも歩いてみたい。zoom
渓谷に架かる『谷關吊橋』(上)と『サオライ吊橋』(下)は谷關温泉のシンボル。時間があればトレッキングコースも歩いてみたい。
『星のやグーグァン』の敷地を出て、温泉街散策を兼ねたランチタイムを過ごしても3時間程度あれば十分楽しめます。施設内で温泉三昧のゆったりとしたリフレッシュタイムを過ごすのももちろんいいけれど、時間に余裕があれば台湾のローカルな温泉気分も楽しんでみてはいかがでしょうか。『温泉文化会館』には周辺を案内した日本語のガイドマップが用意されています。

●協力:星のやグーグァン
https://hoshinoya.com
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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