旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2019年11月2日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

偉大な詩人の名を掲げたレストランと、アフターシアターに訪れたいジョージア料理店 ~二度目のロシアはモスクワの旅 Vol.5

ロシア料理といえば、ボルシチ。どの店で食べても美味しく、「白いボルシチ」もあります。zoom
ロシア料理といえば、ボルシチ。どの店で食べても美味しく、「白いボルシチ」もあります。
最近、モスクワの食のレベルは飛躍的に上がってきているのだそうです。ステーキ、イタリアン、フレンチのほか、和食の看板を掲げた店も観掛けました。とはいえ、せっかくならロシアらしい料理を味わいたいもの。ボルシチ、ピロシキ、ビーフストロガノフ、最近、日本でも人気が高まっているジョージア(かつて、グルジアと呼んでいた)の料理も気になります。

プーシキンの名を掲げた、モスクワを代表するレストラン
モスクワのレストランガイドを見ると、必ずといっていいほど筆頭に紹介されていのがロシアを代表する大詩人、アレクサンドル・プーシキンの名を掲げた『Cafe Pushikin(Кафе Пушкинъ;カフェ・プーシキン)』。プーシキンは偉大なる詩人であり、現代ロシア語を確立した人物としても知られています。
ロシアの古い邸宅を思わせる『カフェ・プーシキン』。写真はカジュアルな1階、2階はもう少しフォーマルな雰囲気です。zoom
ロシアの古い邸宅を思わせる『カフェ・プーシキン』。写真はカジュアルな1階、2階はもう少しフォーマルな雰囲気です。
歴史ある店のように思われますが意外に新しく、1999年にプーシキン生誕200年を記念して誕生したのだそう。フランスの歌手、ジルベール・ベコーの「ナタリー」という歌に登場する架空の店「カフェ・プーシキン」をイメージして作られたそうです。

とはいえ、重厚な外観、帝政ロシア時代を思わせる天井画とクラシックな家具が置かれた店内は雰囲気たっぷり。1階と2階でインテリアもメニューも異なり、1階は薬局をイメージしカジュアルな料理を、高い天井までみっしり本を敷き詰めた2階は図書館をイメージし、1階より高級なロシア料理をコースで提供しています。
上左/キノコとミートのパイ。上右/モスクワでも美味しいと評判のボルシチ。サワークリームを浮かべて食べます。下/ビーフストロガノフもロシア料理の定番。zoom
上左/キノコとミートのパイ。上右/モスクワでも美味しいと評判のボルシチ。サワークリームを浮かべて食べます。下/ビーフストロガノフもロシア料理の定番。
予約して訪れたのは1階。帝政時代の薬局を思わせるカウンターはバーコーナーに、ほかにテーブル席があります。料理はやや現代風にアレンジされている印象です。ここで必ず味わってみたいのが、ロシア料理を代表するボルシチ。色鮮やかなスープにリンゴが入っていて、サワークリームを落として食べると塩気と酸味がちょうどいい具合にバランスを取ってくれます。
夜の『カフェ・プーシキン』。重厚な外観がひときわ存在感を放ちます。zoom
夜の『カフェ・プーシキン』。重厚な外観がひときわ存在感を放ちます。
モスクワを代表する有名店ゆえに観光客が多く、早めの時間帯はグループ客や子供連れのファミリーも見られましたが、観光地特有の騒々しさは感じられませんでした。バーカウンターには地元の人らしきカップルも姿も。ロシアらしい雰囲気を楽しみながら食事やお酒を楽しめます。英語のメニューがあり、料理の説明もきちんと英語でしてくれるので、片言の英語が分かれば不便はありません。

余談ですが、以前訪れたサンクトペテルブルクには『Literaturnoye Cafe(リテラトゥールノエ・カフェ)』つまり、『文学カフェ』という名の店があり、入り口のテーブルにプーシキンの等身大人形が、つい声を掛けたくなるほどリアルな姿で座っていたことを思い出しました。ロシアの人にとって文豪といえば、第一に名前が挙がるのがプーシキンなのでしょう。
●Cafe Pushikin(カフェ・プーシキン)
TEL 495-739-0033
Tverskoy Boulevard 26a , Moscow
12:00~24:00 
無休


バレエやオペラ鑑賞後、ゆっくり食事ができる店
もう1軒は、ボリショイ劇場、赤の広場からも近い『EZO(エゾ)』。かつては日本でも「グルジア」と呼んでいた、ジョージア料理の店です。
ボリショイ劇場や赤の広場から歩いて10~15分の便利な場所にある『エゾ』。夜のイルミネーションも楽しめます。zoom
ボリショイ劇場や赤の広場から歩いて10~15分の便利な場所にある『エゾ』。夜のイルミネーションも楽しめます。
ロシアではジョージア料理の人気は高く、メニューを掲げる店をたくさん見掛けました。この店は中心街から近く、夜遅くまで営業しているので、ボリショイ劇場でバレエやオペラを鑑賞したアフターシアターでもゆっくり食事ができるのが魅力。種類は多くないですが、ジョージアワインも提供しています。

オーダーしたのは、チーズとクルミのペーストをナスで巻いた「パクラジャン」という冷たい前菜。これがワインととてもよく合います。他には、ロシア版・小籠包「ヒンカリ」もジョージア料理を代表するメニューとのこと。具は牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉から選べ1個からオーダーできます。ひし形のパンは「ハチャプリ」と呼ばれるチーズパン。生タマゴがのったものが定番のようですが、トマトや挽き肉をのせたものもありました。
上左/クルミのペーストをナスで巻いたパクラジャン。上右/日本では珍しい馬肉のソーセージ。下左/魚のスープ、ウハー。下右/生卵を乗せたチーズパンのハチャプリと、ジョージア風の小籠包ヒンカリ。zoom
上左/クルミのペーストをナスで巻いたパクラジャン。上右/日本では珍しい馬肉のソーセージ。下左/魚のスープ、ウハー。下右/生卵を乗せたチーズパンのハチャプリと、ジョージア風の小籠包ヒンカリ。
メニューに写真が添えてあるので、ジョージア料理に詳しくなくても写真を見ながら選べます。英語が通じますし、若い男性スタッフはフレンドリーでとても親切。店の前の通りは夜遅くなっても人通りが多く、女性だけで訪れても安心です。
●EZO(エゾ)
TEL 967-022-7707
Kamergerskiy Pereulok, 6с1, Moscow
12:00~24:00
無休


ロシア料理というと色鮮やかなスープの「ボルシチ」がまっさきに浮かびますが、スープにも白いボルシチや「ウハー」と呼ばれる魚のスープも。どれもサワークリームを浮かべて食べます。ロシア風水餃子の「ペリメニ」、小籠包風の「ヒンカリ」など小麦生地を使った料理が多いことも特徴。またパンがとてもおいしく、ライ麦で作る黒パンだけでもいろいろな種類がありました。全体的に塩味が強い印象ですが、日本人の口にはよく合うと感じました。日本では見かけたことがないもの、初めて耳にする料理を試してみるのも、ロシアの旅の楽しさです。
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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