旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2019年10月15日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

JALの次世代フラッグシップA350-900型機に乗る

ラウンジから見たA350-900型機zoom
ラウンジから見たA350-900型機

2019年9月1日。羽田空港と福岡空港を結ぶ路線でJALの新型機がデビューしました。就航開始したのはエアバスA350-900型機。10月の秋晴れの爽やかな日に搭乗してみました。

ラウンジから
出発に先立って、羽田空港ではダイヤモンド・プレミアラウンジを利用しました。駐機場に面して部屋が広がり、窓側の一人席に座ると、航空機が目の前に駐機している様子がうかがえます。ラウンジ内の装飾は、グリーンアートインスタレーションと呼ばれるうねりのある松がアクセント。東信、花樹研究所の東信(あずままこと)氏の作品“Black Pineeee”です。どことなくザ・ペニンシュラ東京のロビーにある臥龍の門を思い起こさせます。ゆるやかな曲線に心落ち着く時間が過ごせます。

窓の対面にあたる壁にはライブラリーがあり、こちらは旅心をかきたてます。ライブラリーの監修は、BACHの幅允孝(はばよしたか)氏の手によるもの。嬉しいことに、JALのエアラインバッグや、Boeing747ジェンボジェットの写真集なども並べられています。ガラスの向こうにあって手に取ることはできませんが、展示作品として楽しむことができます。

ここで、おにぎりと味噌汁、バゲットやスープの軽食を摂って行くこともできます。

搭乗する機体が目の前にあるという時間に利用できたのは幸運です。機体後部の大きなAirbus A350の文字が誇らしげ。鶴丸の色と同じ赤いウィングレットがしなり、光を受けて輝いています。前方に目をやると、コックピットまわりのアンチグレア塗装がアイキャッチであることがよくわかります。6連窓が黒く丸いサングラスを掛けているように思え、機体全体の引き締め効果があります。

ラウンジ内部 奥の壁にはライブラリーがありますzoom
ラウンジ内部 奥の壁にはライブラリーがあります

ゲートへ
少し早めに11番搭乗口に向かいました。より近くに機体が見えて気持ちが高揚します。出発準備に忙しい様子を見ることができました。前方から見てもこの機体は全体を包むゆるやかなカーブであることを実感します。

いよいよ機内へ
2本のボーディングブリッジが369人を機内へつなぎます。搭乗口ではチーフキャビンアテンダントが笑顔で迎えてくれました。機内に入ると、ギャレーの壁面に鶴丸のオブジェがあり、高級感を醸し出しています。奥の通路に向かう際に見えたギャレーの棚にハロウィンの装飾が置いてあり、和みます。

チーフキャビンアテンダントが機内にいざなってくれますzoom
チーフキャビンアテンダントが機内にいざなってくれます

シートまわり
2-2-2配列で2列12席のファーストクラスは、隣席との間にデバイダーがあり、座席の配列が窓の2席と中央2席ではずらされており、横の視線が気になることがありません。15.6インチのモニターはリモコン付き。前席まで距離があってタッチパネルでは届かないので、非常にいい装備です

クラスJは、2-4-2で94席がならびます。読書灯や座席肘置き内側の収納スペースに加え、アーム型のパーソナルリーディングライトに11.6インチのモニター画面があるなど工夫が凝らされています。えんじ色の落ち着いた色調が目を休めます。

普通席は3-3-3で全263席。全体が黒のレザーシートに生まれ変わった新国内線仕様。ヘッドレスト部分のレザーには同色の鶴丸が刻印され、目立たないものの静かにJAL色を出しています。普通席のシートピッチで10インチモニターはとても大きく感じます。

3クラスともシートの色調が主張せず、大人がくつろげる空間に仕上がっています。Wi-Fiは今までのように上空に行ってからではなく、地上走行開始時からゲート到着時まで使えるので、非常に便利です。

ファーストクラス(左上)、クラスJ(右上)、普通席(左下)と客室後部ギャレーzoom
ファーストクラス(左上)、クラスJ(右上)、普通席(左下)と客室後部ギャレー

座った普通席は、AC電源やUSBポートは前の座席の背に装備されているので、すぐに手が届きます。カップホルダーに加え、シートポケットが3つも装備されているので、スマホや文庫本など身の回りのものを置くことができます。安全のしおりや、機内販売カタログなどは背もたれ上部にあるので、下のポケットは何も入っておらず、余裕の収納力があります。使い勝手のいいシートまわりに、普通席であっても快適に過ごせました。

静粛な機内
機内の静粛性は、新次元に入ったと言っていいレベルです。5~6列前にいる航空ファンらしき乗客の写真撮影するシャッター音が離陸時でさえクリアに聞こえました。私の座った最後部でもその状況。思わずシャッターをサイレントモードに切り替えたくらいです。エンジンより前方であればなおさら静かでしょう。

個人用画面エンターテインメントサービス
インフライト・エンターテインメントは使い勝手が向上しています。Panasonic Avionics CorporationのVoyager3が装備され、音楽と映像共に、オンデマンドになっています。番組の終了時に出る8ケタのコードを控えておけば、次回のフライト時に続きが楽しめる機能付きです。

雑誌やマンガも引き続き用意され、機内誌のSKYWARDを画面で読むというスタイルは新しい感覚です。今後行ってみたい気に入った観光地の案内などを見付けたら、客室乗務員にお願いして新しい冊子を持ち帰ることができます。

フライトマップは、コックピットのヘッドアップディスプレーのように、左手に対気速度がノット表示、右手に高度がフィートで、上方に旋回角度、下方に進路を表示させる方法もあります。表示面下左から高度がメートル、中央に対地速度がキロで、右に目的地までの距離がキロで表示され詳細かつ丁寧です。

機外カメラは2つ。前輪下にあって前方を映しだすものと、尾翼にあって、景色とともに機体を見下ろすように設置されているもの。
驚いたのはモニター画面がクリアで解像度の高いこと。尾翼のカメラで画面の機首左前方に富士山がくっきりと見えた時には、思わずおっと声が出ました。富士山は、福岡行きでは通常左手窓側からしか見えないのですが、モニターを通して右舷席側に座っていても見ることができたのは嬉しい発見でした。福岡空港の北風運用時に市内で大きく左旋回し滑走路34へ向かいますが、この様子がリアルに垣間見えて操縦しているような感覚になります。

画面左上方に見えるのは雪の無い富士山zoom
画面左上方に見えるのは雪の無い富士山

機内サービス
機材が変わっても受け継がれているのは客室乗務員の笑顔のサービス。飲み物を配り、機内販売を行う様子は変わらぬおもてなし。一つのカートを前後にはさみ、テキパキとドリンクサービスを進めていく動きは、丁寧でいて的確です。

機内販売は、カートの動きとは別に、客室乗務員が、搭乗後でも買えるオーダーハガキとお勧め商品のフェイラー JALオリジナルハンカチセット「ディズニー ミッキー&ミニー」を持って客室をまわります。限定商品が好きなお客さまに好評のようです。1時間30分のフライトが短く感じる、気持ちのいい移動時間でした。

サービスの様子zoom
サービスの様子

この機体になったワケ
機種選定では、今までの流れで冒険することなくボーイング機を決めることもできたはずです。経営破綻を経験したからこそ、これまでのやりかたを敢えて変えていく勇気を持てたと考えられます。このA350型機が飛び始めてJALの社員は自分たちの選択は間違っていなかったと確信したはずです。

将来は国際線へ
2023年からはより大型のA350-1000型機で国際線にもデビューする予定。今後は機内装備を決めていくことになります。SKY SUITEのプロダクトネームでいくのか、新たなコンセプトの客室装備でいくのか、利用者としてとても楽しみです。

協力:           JAL ⇒ https://www.jal.co.jp/
JAL A350特設ページ ⇒ https://www.jal.co.jp/dom/A350/index.html?m=dfs

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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