旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2019年3月30日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

人生を楽しもう!~カナダ・ケベック州へ~ケベックシティ氷点下編④

若き日のエリザベス女王がシャトーフロントナックに宿泊された時に使用されたティカップzoom
若き日のエリザベス女王がシャトーフロントナックに宿泊された時に使用されたティカップ
~ケベックシティに宿泊するならば~

 古都ケベックシティには個性的なホテルがたくさんあります。

 最も有名なホテルは、町のランドマークでもあり、国内外の賓客の定宿となっている「フェアモント ル シャトー フロントナック」でしょう。
 一生に一度は宿泊してみたいと憧れるラクジュアリーなホテルで、1893年の創業。現在はリノベートされて、外観は古城でも部屋の中はモダンです。ホテル名は17世紀にヌーヴェル・フランスの総督だったフロントナック伯爵ルイ・ド・ブアドの爵名に由来。ホテルの脇に伸びる遊歩道テラス・デュフランの辺りは、200年間にわたり総督たちの邸宅がありました。
 そんなロケーションに建つだけにセントローンス川を見下ろす眺望は絶景。エリザベス女王の宿泊された部屋を見学させていただきましたが、川に漂う流氷をあやしく照らす満月の光に目を奪われました。女王様も紅茶を召し上がりながら、美しい月夜を見上げたでしょうか。

・フェアモント ル シャトー フロントナック(Fairmont Le Château Frontenac)
 https://www.fairmont.jp/frontenac-quebec/

氷のベッドで眠る気分はいかにzoom
氷のベッドで眠る気分はいかに
 ケベックの冬ならではのお楽しみをホテルでお探しならば、「オテル ド グラス(HÔTEL DE GLACE)」はいかがでしょう?
 毎年1月から3月までケベックシティ郊外にオープンする氷でできたホテルです。いわゆる北欧でも人気の「アイスホテル」ですが、スウェーデン発祥のICE HOTELにインスピレーションを得て、独自のものを作ったといいます。
 場所は「バルカルティエ休暇村(Valcartier)」というウィンタースポーツが楽しめる大型リゾートホテルの敷地内。42室あり、そのうち6部屋がスィートルーム。氷の寝台の上に特製のマットが敷いてあり、寝袋に入って眠ります。室内の温度はマイナス3度から5度に保たれるそうですが、「かまくら」と同じで、極寒の外から部屋に入ると、何とも暖かいのが不思議。ベッドに寝て、あおむけになると、氷から出る静かな冷気と、水色とも透明ともつかない氷の色にからだが吸い込まれていくようで、とても不思議な気分でした。
 暖炉のある部屋もありました。炎のゆらぎを見ていると気持ちが安らぎます。本物の火に見えましたが、小さく表示が掲げられていました。「身体は暖められないの。でも、心は暖まってください」
 お望みとあらば氷のチャペルで結婚式を挙げることも可能。また、アイスバーは観光客にも大人気で、氷の椅子に腰かけ、氷製のグラスで特製カクテルを飲むこともできます。

・バルカルティエ リゾート(Valcartier)
https://www.valcartier.com/en/activities/winter-park-resort/

先住民族の文化を紹介する博物館を隣接していますzoom
先住民族の文化を紹介する博物館を隣接しています
 ケベックシティは歴史と自然豊かな土地柄です。町から少し離れたホテルでは、ケベックでも知る人ぞ知るという魅力を体験することができます。ケベックシティの中心地から車でわずか15分、北西に約10キロ走ったところに、ワンダケ(Wendake)という地域があります。このあたりは「ヒューロン-ウェンダット ネーション(Nation Huronne-Wendat)」という先住民族の土地。そのサンシャルル川のほとりに建つ人気ホテルが「オテル ミュゼ プルミエ ナシオン(Hôtel-Musée Premières Nations)」です。
   
 そもそもの歴史ですが、カナダにはヨーロッパ人が来る前から、先住民族が自らの政府組織をもって暮らしていました。彼らは「カナダ・インディアン」あるいは「ファースト・ネーション(部族集団)」と呼ばれており、現在、政府に登録されているのは約54万人、カナダ国民の約1.8%です。彼らのための「保留地」は国内に2,200か所以上あり、そこに約605のファースト・ネーションが居住しています。
 それぞれ固有の文化や社会を形成していた彼らは西洋と出合って以来、多くの困難を経験してきましたが、今、あらゆる面での復興を目指す転換期にあり、そうした観点からも注目を集めているホテルです。

 ホテルの開業は2008年。55室で博物館を併設しています。先住民族というとトーテムポールしか思い浮かびませんでしたが、それは西海岸側の先住民文化のようです。ここでは「ロングハウス」と呼ばれるかつての先住民族の家を再現した建屋で、シャーマンに扮した女性が神話を聞かせてくれたり、たき火で伝統のパンを焼かせてくれたり。「こういう文化がカナダに存在するのか」とただ感心しました。
 従業員のほとんどは先住民族で、広報の女性もお父様が先住民族でした。
ジビエを試してみました。付け合わせのビーツやアスパラも新鮮zoom
ジビエを試してみました。付け合わせのビーツやアスパラも新鮮
 「オテル ミュゼ プルミエ ナシオン」の人気の秘密は、ホテル自体のクオリティの高さでしょう。
 
 シンと静まり返った白銀の世界に囲まれて、ロビーの暖炉は一段と暖かさを演出します。部屋のベッドの上の毛皮はどこまでもなめらかな手触り。壁にかかった「ドリームキャッチャー」は、本当に良い夢だけを運んでくれそうで、とにかくゆったりくつろげるホテルです。

 レストラン「ラ トレイト(La Traite)」も予約が難しいレストランだそうです。お客様は誕生会と思しき家族連れからカップルまで。お洒落な店ですが、ケベックらしいというか、ファーストネーションのおもてなしなのか、気取ったところはありません。
 一方、料理は本格的。シェフは現代風にアレンジしたという先住民料理を出してくれます。バイソン、赤シカ、イノシシの3種類のジビエを煮込んだ料理をいただきました。
 肉に全く臭みがなく、どれも良いお味で感激しました。

・オテル ミュゼ プルミエ ナシオン(Hôtel-Musée Premières Nations)
   (http://tourismewendake.ca/hotel-musee-premieres-nations/en/)
目の前は自然のアイスリンク。町まではわずか15分の距離です。zoom
目の前は自然のアイスリンク。町まではわずか15分の距離です。
 ケべコワはとにかくアクティブ。寒さなどものともせずに戸外に出るのが大好きな印象です。
「仕事で成功したら、郊外の自然豊かなところに家を建てるのが多くの人の夢なんだ。だから、この湖の周りにある家の持ち主は皆お金持ちばかりだよ」と言って、ケベックの友人が連れて行ってくれたのは、町の中心部から約25キロ北にあるボーポール湖のほとりに建つ「エントラージュ スールラック(Entourage sur-le-lac)」でした。
 湖は全面厚い氷におおわれ、天然のアイスリンクでは、大人も子供もスケートやアイスホッケーを楽しんでいます。湖の周りには立派な邸宅が森に点在しており、湖の雪の上を散歩しているワンコや飼い主さんたちも、どことなくセレブな空気を漂わせています。
 せっかくなので、私も久しぶりにアイススケート靴を履いてみました。気分はザキトワか浅田真央選手!足は全くそのようには動いてくれませんでしたが、多少の冷や汗も含めて、気持ちの良い汗をかきました。
 ケベックシティの町は見どころ満載ですが、こんなに近いところで味わえるカナダの大自然を満喫するのもおすすめです。車で2,3分走るとスキー場もありました。
朝食が美味しすぎて、食べ過ぎました。zoom
朝食が美味しすぎて、食べ過ぎました。
 このホテル、運動できる環境は抜群ですが、ここでシェイプアップするのはちょっと難しいかなと、朝食のプレートが運ばれてきた瞬間に確信しました。
 吹き抜けのホールに作られたレストランは、ガラス越しに真っ白な雪をかぶった山々と凍った湖を眺めながらの食事です。直径30センチはありそうな大皿に載せられたエッグベネディクトにブルーベリーとメープルシロップがたっぷりかかったパンケーキ。昼食は必要ないほどのボリュームですが、あまりにおいしそうで「目」で完食してしまいました。
 部屋には自分でできるエクササイズ用器具も備え付けられていましたが、軽い運動くらいでは取り返しのつかなくなりそうな朝食でした。

・ホテル エントラージュ スールラック(Entourage sur-le-lac)
 https://entourageresort.com/

・取材協力:ケベック州観光局(https://www.quebecoriginal.com/en)
フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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