旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2019年1月25日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

アジアのエミレーツを目指すと言うベトジェットエア

エアバスA321neo型機zoom
エアバスA321neo型機

ベトジェットエア
ベトジェットエアは2007年に創業し、2011年に就航を開始したベトナムのLCC。機材はエアバスのA320とA321の71機を保有します。LCCというと大手航空会社の古い機材を利用しているというイメージもありますが、ベトジェットエアは新機材のみ。東南アジアで最初のA321neoを導入し、更に116機の受注残があります。今後新たにボーイングの737max機を100機導入することも発表しました。全て揃えば、287機となり現在の機材の4倍の規模になることが見込まれる、成長真っただ中のエアラインです。

成田就航 
日本路線では茨城空港などへのチャーター便で実績を重ね、2018年の11月8日に関西空港⇔ハノイ線、12月14日にホーチミン線を相次いで開設。首都圏発の定期便はこの2019年1月11日に成田空港とハノイを結ぶ路線で毎日の就航を果たしました。

セレモニー
成田空港第二ターミナルビル98番ゲートでは出発に先立ってセレモニーが行われました。主催者側としてベトジェットエア副社長の「ドゥ・シュアン・クワン」氏が挨拶に立ち、来賓の駐日ベトナム大使「ヴー・ホン・ナム」氏が祝辞を述べました。その後、成田国際空港長の石井靖男氏と成田国際空港会社社長の夏目誠氏への記念楯と航空機モデルの贈呈があり、テープカットで締めくくられました。両袖には成田のクウタンとベトジェットのAmyというキャラクターが揃い、出発旅客の記念撮影に応えていました。

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成田空港でのセレモニー テープカットの様子

搭乗へ
飛来したのは、エアバスA321neo(VN-A646)です。機体前部に東南アジアで初めて受領したneo機であると描かれていました。ゲートのセレモニーとボーディングブリッジにもある装飾を抜け機体に向かいます。前方5列30席は赤いヘッドレストが目印で、上級クラスのスカイボスを含む優先席であることがわかります。一般航空券で、座席だけ前方がいいという旅客にも有償でアサインが可能です。

座席など
今回は、スカイボスのサービスを経験してみようと手配していました。往復で空港ラウンジサービスが付き、機内持ち込み手荷物重量が一般の7kgから10kgに増えます。また、受託手荷物を30kgまで預け、優先チェックインと優先バゲッジタグ、優先搭乗、座席指定を受けることができます。
席につくとペットボトルの水とオシボリのサービスがありました。シートバックモニターは無いものの、シートには機内誌、Cafeメニュー、免税販売、吐袋、安全のしおりがセットされています。機内ではスマートフォンやタブレットで動画を見ている人を見掛けます。今後は、機内エンターテインメント機器が衰退していくのではないかと思わせる光景です。
スカイボスの2列目から5列目はシートピッチが広いわけではありません。降機時に早く降りる事ができる場所として人気があります。この席は後方とはカーテンで仕切られますので、落ち着いた空間になります。追加料金のかかるこのエリアは空いていることが多いとのこと。運が良ければ、3席を独占して寝て行くことができます。これは夜間便となる復路で有効な使い方。往復で座席指定を変えてもいいと思います。一列目は、テーブルが収納されているので肘掛部分が固定となっており、寝ることはできませんが、足元が広いので、こちらも捨てがたい席ではあります。

前方は赤いヘッドレストのスカイボスシートzoom
前方は赤いヘッドレストのスカイボスシート

食事へ
客室乗務員が食事と飲み物のリクエストを聞きにきてくれます。スカイボスにはそれらが含まれていますので、HOTミールの中から好みで選ぶことができます。Jet Cafeと書かれたメニューを見ると、ライスと麺が半々ほどあって、ホットミール10種の中から「シンガポール風ヌードル」を頼んでみました。併せてチリとベトナム醤油のHuong Vietが付いているのですが、個人的にはこの醤油が気に入りました。他に軽食6種類、スナック類7種類、ドリングが16種類と充実しています。スカイボスには出発後すぐと到着直前の2度の食事が含まれています。お客様に機内サービスを楽しんで貰おうと2度食事を提供していると言います。2食目は「ベトナム式豚肉入り蒸しケーキ」を頼みました。おつまみも載せたトレーでサービスされるので、セット式の機内食は満足感が高く感じます。成田空港発では6時間を超えるフライトですので、二回の食事サービスは嬉しいです。

スカイボスは二回の食事つきzoom
スカイボスは二回の食事つき

話しを聞く
230人乗りの機体なので、男性3名、女性2名の計5名の客室乗務員が乗務していました。その中で、日本語を流ちょうに話すThuyさんに、手の空いた時間に話を聞いてみました。千人を超える客室乗務員のうち男性は3割ほど。今回のフライトが特別でした。乗務員のベースがベトナム国内5カ所にある中で、ハノイベースに所属しています。ハノイ大学の日本語学科で学び、日本線の定期就航もあって、2018年6月に日本語通訳から転身し航空業界へ。先に就航した関西空港線にも乗務済み。一泊のステイで最初の目的地の道頓堀を経験。次には京都を目指すそうです。

SKY SHOPは帽子をかぶって販売ですzoom
SKY SHOPは帽子をかぶって販売です

社内の雰囲気は
若い会社なので、上下関係に縛られず伸び伸びと仕事をしています。国際線乗務で各国の出入国係官から派手な制服に「ワオ」と言われる事にも慣れてきたと言います。各国で注目を浴びているようですね。有名な女性社長タオ氏と会う機会があって、気さくに声を掛けてくれたことが嬉しかったそう。社員には面談やメールでコミュニケーションを図る中で、「アジアでのエミレーツ航空を目指そう」と言われ、皆で頑張っていこうと気持ちがまとまったと言います。エミレーツはサービスの評判も良く、世界第四位の大会社。大きな目標になります。ベトジェットと言えば機内でのビキニのダンスが有名ですが、今回のフライトではビキニどころか民族衣装でのダンス披露もありませんでした。保守的な日本のお役所に気を遣って遠慮したようです。就航初便くらいお披露目があってもいいように思います。

機内販売も
フライトの後半では、ベトジェットのグッズが多いスカイショップと呼ばれる機内販売の時間です。客室乗務員は気分を変えて販売用でもあるキャップ(85,000ドン、約430円)をかぶって接客します。

日本人副操縦士の福井さん(後列右)、日本語堪能なThuyさん(前列右)と皆さんzoom
日本人副操縦士の福井さん(後列右)、日本語堪能なThuyさん(前列右)と皆さん

今後のベトジェット
大量機材発注があり、新規路線開設の勢いは続きます。予定されている国際線は、ロシアやオーストラリア。長距離路線では、A321neoの航続距離7,400キロメートルを生かした路線展開を行っていきます。

日本人パイロット
今回の発見は、パイロットに日本人がいたこと。副操縦士に福井さんが乗務し、機内アナウンスも行っていて、大きな安心感をもたらしてくれました。福井さんは「neo機は燃費がとてもいい」と笑顔で話してくれました。日本でIT企業を興した経験を持つ異色の技術者パイロット。勢いのある大企業で働けることが励みになるようです。予期せず日本人の活躍を見ることができたこととスカイボスの充実サービスを満喫できた嬉しさを胸に機体を後にしました。

協力:ベトジェットエア  https://www.vietjetair.com/

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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