旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2018年8月14日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

夏のシカゴタウンを駆ける、爽快バイクツアー 【連載】建築&アート、音楽と食を巡るシカゴの旅 Vol.1

バイクツアーの終盤、ミシガン湖畔のビーチから眺める高層建築群はシカゴを代表する景色のひとつ。zoom
バイクツアーの終盤、ミシガン湖畔のビーチから眺める高層建築群はシカゴを代表する景色のひとつ。
初めてシカゴを訪れました。

日本が猛暑に見舞われた7月下旬、初秋を思わせる高い空と澄み切った空気に包まれたシカゴ。ここはアメリカ中西部のイリノイ州最大にしてニューヨーク、ロサンゼルスに次ぐ、アメリカ第3の都市。摩天楼のようにそびえる建築群とヨーロッパを思わせる古い町並みがしっくりとなじみ、街のいたるところから聞こえてくる音楽、日本でも行列ができるスイーツから各国料理まで、じつに多彩な表情にあふれたところです。

街の見どころをぐるっと巡る3時間のバイクツアーに参加
街全体に碁盤の目のように通りが走り、そのうえフラットな地形が特徴のこの街は、自転車で巡るのがぴったり。そのため、レンタサイクルや、日本でも最近増えている自転車のシェアシステムが充実しています。
とはいえ、初めての街で、しかも海外で地図を見ながら自転車を走らせるより、頼りになるガイドさんの案内があったほうが絶対、安全かつ効率がいい。そこで参加したのが、「ボビーズ・バイク・ハイク(Bobby's Bike Hike)」の「Lakefront Neighborhoods Tour(38.50ドル)」。シカゴ初心者が訪れるべきシカゴ川北側の主要スポットと、ミシガン湖畔のビーチを約3時間で回る、一番人気のツアーです。
ガイドのピーターさん。バイクツアー出発前にツアーの概要、注意事項の説明を受けます。zoom
ガイドのピーターさん。バイクツアー出発前にツアーの概要、注意事項の説明を受けます。
集合場所は、五大湖のひとつミシガン湖に突き出た「ネイビーピア(Navy Pier)」という桟橋に近いビル。ツアーの申し込み手続きをすると、この日のガイド役・ピーターさんがそれぞれの体格と身長に合った自転車を選んでくれました。参加者は11名。軽~く慣らし運転をして乗り心地を確認したら、いざ出発です!

大通りのまん中を堂々と走る爽快さ!
このバイクツアーでは、ガイドさんを先頭に2~3列になって車道のまん中を堂々を走ることができるのも特徴。たとえば、昼間の銀座の中央通りを、自転車の隊列を組んで走る姿を想像してみてください。ちょっと、気分よくないですか?
高級住宅街のゴールドコースト。右の建物は、かつてヒュー・ヘフナーが所有していた高級アパート。小さな路地や住宅街まで入っていけるのも、バイクツアーならでは。zoom
高級住宅街のゴールドコースト。右の建物は、かつてヒュー・ヘフナーが所有していた高級アパート。小さな路地や住宅街まで入っていけるのも、バイクツアーならでは。
右折、左折、スピードダウンは、手信号で前から後ろへと伝えていきます。これも、グループツーリングをしているみたいで楽しい! 通称「マグマイル(Mag Mile)」と呼ばれる、ブランドショップ街を走り訪れたのは、シカゴきっての高級住宅地ゴールドコースト。このあたりは歴史的な大火災、1871年のシカゴ大火のあと、ドイツ人企業家により開発されたエリア。そのせいかヨーロッパ調の瀟洒な建物が目立ちます。アールデコ調、ビクトリア調、なかにはアジアのテイストを取り入れたものなど、異なる建築様式は、それだけで目の保養になるほど。ひときわ目を引くジョージアンスタイルの高級アパートには、雑誌『PLAYBOY』の創刊で知られる実業家ヒュー・ヘフナーが所有していたこともあるそうです。

広大なリンカーンパークは、シカゴ市民の遊び場
次に訪れたのは、ミシガン湖畔沿いに南北8.5kmにわたって整備されたリンカーンパーク。この公園、ニューヨークのセントラルパークと比べても約1.4倍の広さがあるというのだから、驚きです。敷地内には動物園、温室植物園、博物館やさらにゴルフコース、各種スポーツの競技場も。もちろん、サイクリングコースも整備されています。なかでも年中無休、無料で入園できる動物園は、人気スポットのひとつ。この日は日曜日だったこともあり、多くの家族連れでにぎわっていました。
左上/リンカーン像のつま先は、みんなに撫でられてピカピカに。中・右上/かつてのドイツ人街オールドタウンでは教会の内部も見学できます。下/リンカーンパーク内の池にかかる橋の上からの眺めは必見。zoom
左上/リンカーン像のつま先は、みんなに撫でられてピカピカに。中・右上/かつてのドイツ人街オールドタウンでは教会の内部も見学できます。下/リンカーンパーク内の池にかかる橋の上からの眺めは必見。
広大なリンカーンパークの中で外せないスポットが、公園名の由来にもなった第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの立像です。ケンタッキー州出身のリンカーンですが、シカゴがあるイリノイ州に移り住んだのち、法律の勉強をして弁護士・政治家としての活動を始めました。そのリンカーンの出世にあやかり、立像の足をなでると夢がかなうといわれているのだそうです。
リンカーンパークをいったん離れた後は、ドイツからの移民が多く暮らしたオールドタウンへ。石畳と教会が残る町並みには、童話の世界に登場しそうなかわいらしい家も少なくありません。高層建築が林立する一方で、閑静な住宅地にたたずむ個人の邸宅に見どころが多いことも、「建築の街シカゴ」の懐の深さかもしれません。

クライマックスはビーチサイドのサイクリングコース
再びリンカーンパークへ戻り、フリータイムを楽しんだ後は、ビーチサイドへ。冬の寒さが厳しいシカゴでミシガン湖畔は、短い夏を満喫する格好の遊び場。日光浴、キャンプ、ピクニック、サイクリングやランニングなど、思い思いに過ごす人であふれていました。湖の水温は夏のこの時期でも17℃くらいとのこと。泳ぐには冷たすぎますが、中にはウエットスーツ姿で泳ぐ人の姿も見られました。
ビーチパークでひと休み。サイクリングにはもちろん、ピクニックにもおすすめのスポットです。zoom
ビーチパークでひと休み。サイクリングにはもちろん、ピクニックにもおすすめのスポットです。
バイクツアーの終盤は、湖畔のサイクリングロードをひたすらまっすぐ走ります。この日の最高気温は28℃。日差しは強いけれど、空気はからりとしていて湖を渡ってくる風はひんやりと気持ちいい! 心地よい汗をかいたツアー終了後、シカゴ名物のひとつクラフトビールがどれだけ美味しかったか、言うまでもないでしょう。
レイクフロントを走るサイクリングロード。風が気持ちよくて、ぐんぐん飛ばしたくなる!zoom
レイクフロントを走るサイクリングロード。風が気持ちよくて、ぐんぐん飛ばしたくなる!
3時間のツアーで実際に自転車に乗っている時間は1/2~1/3程度です。途中、立ち止まって建物やスポットの説明があったり、休憩時間も挟むので、自転車さえ乗れれば体力は心配ありません。英語だけのツアーですが、片言程度分かれば大丈夫。ただし、日差しが強いので、日焼け止めとサングラス、飲み物は忘れずに。

今回はシカゴ川の北側、ノースサイドを回るツアーでしたが、ほかにはサウスサイドを回るもう少しハードなツアーも。さらにパンフレットには、シカゴ名物のピザやホットドッグとクラフトビールのテイスティングができるツアーを発見。 
「ビールを飲んで自転車に乗ってもいいの?」
と、つっこみたくなりますが、ビール好きの私は興味津々です!

●Bobby's Bike Hike
BobbysBikeHike.com
●協力
シカゴ観光局

choosechicago.com/jp
ユナイテッド航空 
www.united.com
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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