旅の扉

  • 【連載コラム】ヘルシー目線でアジアの旅をスナップ!
  • 2018年6月22日更新
Asian Wellness Journey アジアン・ウェルネス・ジャーニー
ライター・エディター:河辺さや香

食と絶景の宝庫!世界有数のジオが魅せる下北エリアの旅

©︎yOUzoom
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本州の最北端に位置する下北地域は、様々な地質が揃う土地だということをご存知でしょうか。このような場所は日本有数どころか、世界的に見ても非常に珍しいジオなのだそうです。今回は特有のジオについて学ぶと共に、この地が育む食材を通じて、下北への理解を深めてきました。まさに絶景、絶品食材のオンパレード! 国内のウェルネス旅には欠かせない要素がバッチリ揃っています。
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©kana 全国に知れ渡る大間のまぐろも、下北ジオの産物
豊富な海産物に恵まれた奇跡の土地

まさかり型の下北地域は、太平洋、陸奥湾、津軽海峡という異なる3つの海に囲まれた地。「この地でとれない海産物はない」と思わせるほど、ありとあらゆる海の幸に恵まれています。かの有名な大間のまぐろをはじめ、うに、いか、ほたて、あんこうなどは、東京で活躍する有名シェフたちも切望するほどの絶品だと、地元の方もおっしゃっていました。

では、なぜ「この地でとれない海産物はない」のでしょうか。簡単に説明すると、下北地域を囲む3つの海は、大洋・内湾・海峡という明確に異なる海洋環境がそろっているからです。海産資源に影響を与える海底には4つの地質が延長して分布しており、岩場の形や岩の質、砂地の海底や藻場の形成には、地質が大きく影響を与えています。

こういったジオと、潮の流れとの関係性、また一部地域では伝説により海藻を採らない場所が存在するといった事情が複雑に重なり合い、豊富な海産物に恵まれた奇跡の地になったわけです。
佐井港から船で30分の場所にある仏ヶ浦zoom
佐井港から船で30分の場所にある仏ヶ浦
ここはどこ!? 日本とは思えない秘境へ

下北地域の西岸に、この土地のジオを代表する秘境があります。それが、今回私が訪れた仏ヶ浦(ほとけがうら)です。
“天が与えし断崖絶壁”と呼ばれる辺境の地では、長い年月をかけて風雨に洗われたことによって生みだされた自然美を望むことができます。100m近い高さの奇石・怪石が、2kmに渡って連なる様子は圧巻!白緑色の岩は、なんと約1500万年前に出現したものだそうです。

日本国内とは思えないような見たことのない絶景にしばし息を呑みましたが、神秘的で静寂な環境によって、だんだんと心が落ち着いていきました。
©kana 仏ヶ浦で行われた「ジオ・ダイニング」の会場zoom
©kana 仏ヶ浦で行われた「ジオ・ダイニング」の会場
史上初のジオ・ダイニングが開催

そしてこの地で、下北の食材を体験するイベント“ジオ・ダイニング”が行われました。むつ市にお店を構えるシェフ3名と、東京・西麻布のフレンチ「HOUSE」総料理長・谷祐二氏によるコラボレーションにより、海の幸や季節の食材が調理され、その場で振る舞われました。実は仏ヶ浦でこのようなイベントが行われたのは史上初。国の名勝、及び天然記念物ゆえ、環境保護のためいろいろな制約があるのですが、それを見事にクリアして実施されたこの催しは、地元でも大きな話題を呼びました。
©︎yOU 左上「雲丹とサンふじりんごの最中」、右上「ホワイトアスパラガスとイカの冷麺」、左下「昆布〆東通牛と根曲がり竹」、右下「中トロの蒸し寿司」zoom
©︎yOU 左上「雲丹とサンふじりんごの最中」、右上「ホワイトアスパラガスとイカの冷麺」、左下「昆布〆東通牛と根曲がり竹」、右下「中トロの蒸し寿司」
そのまま食べない、うにの贅沢な使い方

さて、この日振る舞われたコースは、地元で捕れたうにをふんだんに使った、まさに“うにづくし”のコースでした。と言ってもメインにだけに登場するのではなく、さりげない使いみちも。“新鮮な食材を現地でいただくなら、そのままが一番美味しい”とも考えられがちですが、いい意味で期待を裏切られた形です。趣向を凝らした全9品がテンポよく登場し、その度に歓声が沸き起こりました。「こんなうにの使い方もあるんだ」「意外な食材との掛け合わせに度肝を抜かれた!」など、様々な意見が飛び交います。いずれにしても、新鮮でクオリティの高い食材が豊富にとれるからできること、これこそ究極の贅沢と言っても過言ではありません。シェフたちも手応えを感じたようでした。

なお、現在下北シェフたちのお店でそれらの料理をいただくことができます。うに以外にも、青森特産のりんごや山うど、いか、下北のブランド牛・東通牛など、様々な食材が使われていますが、どれも新しい視点で考案された意外性のあるものばかり。きっと、これまでにない食体験ができることでしょう。

【Shimokita GEO=DINING Menu】
① 雲丹とサンふじりんごの最中
② 天然山うどのクランブルスティック
③ ホワイトアスパラガスとイカの冷麺
④ 昆布〆東通牛と根曲がり竹
⑤ じゃがいもと椎茸のおづけばっと雲丹ボナーラ
⑥ 中トロの蒸し寿司
⑦ 雲丹コロッケ
⑧ まぐろ吸い
⑨ けいらんダンジュ
⑩ 名物 海峡サーモンの押し寿司(4月下旬〜7月上旬の期間限定。要予約)

【提供店舗とメニュー】
■アグレアーブル(竹川克範シェフ) 住所/青森県むつ市小川町2-17-1 電話/0175-23-9114 ①②③④⑤⑦⑧⑨
■レストラン&ワインバー パザパ(新保敬仁シェフ) 住所/青森県むつ市小川町2-10-1 電話/0175-34-9707 ①②③④⑤⑦⑧⑨
■鮨割烹 東寿し(柿本泰平シェフ) 住所/青森県むつ市横迎町1-2-40 電話/0175-22-2031 ⑥⑩
©︎yOU 日本三大霊場の恐山。11月〜4月は閉山なので注意。zoom
©︎yOU 日本三大霊場の恐山。11月〜4月は閉山なので注意。
恐山に歴史的な温泉郷etc. とにかくいろんなサプライズが待っている!

下北地域には他にも、日本三大霊場の恐山や550年の歴史を有する下風呂温泉郷、そして最高級のマグロがとれることでも有名な大間崎など、多くの見どころがあります。季節ごとに景色も旬の食材もガラリと様変わりするので、それぞれの魅力をぜひ感じとってみてください。

なお、仏ヶ浦やその他の地域への詳しい行き方は、下記の「しもきたTABIあしすと」ホームページを参考に。最北端の大間崎までは函館港からフェリーでたったの90分なので、空路+フェリーでのアクセスもおすすめです。

取材協力:
しもきたTABIあしすと (https://gururin-shimokita.com/

ライター・エディター:河辺さや香
出版社勤務、北京・上海・シンガポールでの生活を経て、現在は東京を拠点にフリーランスとして活動中。アジア女性ならではのヘルシー&ビューティーなライフスタイルに関心を持ち、漢方養生指導士(漢方スタイリスト)や養生薬膳アドバイザー、他にジュニア野菜ソムリエの資格も持つ。各媒体に旅、食、料理、健康にまつわるトピックスを執筆中。“アジアを旅するライターユニット”Tom☆Yam(http://www.team-tomyam.com/)のメンバー。
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