トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2013年1月24日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

バンクーバーの小さなカフェ

GENE CAFE/バンクーバーzoom
GENE CAFE/バンクーバー
15年ぐらい前に作った映像作品があって、久しぶりに観てみたら、我ながらけっこう面白いんだな。でも当時は気がつかなかったボロもあちこちで見つけちゃって、よし、と思い立って再編集することにしたのです。音楽も一部入れ替えます。CDを探すのは面倒なのでiTunesで曲を購入。半日パソコンの前に座ってめでたく完成。そうすると今度は人に観てもらいたくなります。

さっそくYouTubeに載っけてFacebookで告知。「ぜひ観て下さい。」すると、即座に反応があります。とんでもないスピード時代になりましたね。で、寄せられたメッセージ。「マックさん観れないよ。」「あ、こっちも観れない。」「観れませーん。」て、おかしいなあ。僕の方からはちゃんと観れるんだけどなあ。

調べてみたら、どうやら挿入した音楽が著作権法に引っかかるらしい。ふうん。画面には「この動画は以下の国でブロックされています。」という少し怖いメッセージが出て、日本やアメリカはもちろん、アルゼンチンやらアイスランドやらその他ほとんどの国々で僕の投稿した動画が観れない設定になっていることをお知らせしています。

逆に、ブロックされていない国、地域もありました。南スーダンとヨルダン川流域。2カ所だけ。

そんなわけで今回は南スーダンについて語ります。ヨルダンのことは前にも話しましたもんね。

スーダンと聞いて、最初に頭に浮かぶのが「アブドーラ・ザ・ブッチャー」。黒人のプロレス選手、悪役でね。試合では反則ばっかりやって、毎回頭から血を流して最後は結局負けちゃうの。日本で大活躍しましたね。少年時代から偏屈だった僕のヒーローでした。で、彼の出身地がスーダン。どういう経緯でアメリカに渡ったのかなってウィキで調べてみたら、実はアフリカ系ってだけで、カナダ出身なんだそうな。話がここで終わりました。
GENE CAFEのエスプレッソマシンzoom
GENE CAFEのエスプレッソマシン
しょうがないですね。カナダの話をしましょう。こういう風に僕のお話にはいつも脈略がないの。ま、僕の生き方を象徴していると言えるでしょう。

僕が田園調布でダダティークというお店を経営していることは皆さん知っているかしら?カフェのようなギャラリーのようなアトリエのような変な店です。そのダダティークにしょっちゅう来てくれていたカナダ人の女性がいました。某新聞社に務めるジャーナリストで、専門分野がアート関連ってこともあって意気投合。絵だの映像だの写真だの、店が終わった後も時間を忘れて熱く語り合うぐらい仲良しになったんだけど、おととしの冬、突然仕事辞めて国に帰ってしまいました。残念。

それから1年が経過した昨年のクリスマス、何の前触れもなく彼女から連絡が入ります。年末年始を日本で過ごすとのこと。積もる話がいっぱいあるよ。って、一体どこで何してるんだい?聞けば、何とバンクーバーでカフェをオーガナイズしてるそうな。その名も「GENE CAFE」。ジャーナリストからずいぶんな転身だよね。ま、そういう僕もミュージシャンから飲食業に参入してきた輩なんですけど。

んならお互いのお店同士、姉妹協定を結ぼうよって、東京とバンクーバーに新たなパイプラインが通ったわけです。一緒に何かやりましょう。こういうのはアイデアを構想している時がいちばん楽しいの。彼女が東京での冬休みを終えて帰国した後、さっそくバンクーバーと東京をSkypeでつないで現地GENEのスタッフらとやりとりしました。ちょうどカフェの営業が終わった時間帯でね。店に残って和んでる女の子たちと話してるうちに何だかすっかり自分が現地にいるような気分になりました。こうなると実際に行ってみたくなるのが心情。今回については「行きたい。」だけではなくて「行く。」ことになるんじゃないかという気がします。
GENE CAFE 店内で和む常連客zoom
GENE CAFE 店内で和む常連客
バンクーバーってどんな所?で、あれこれ調べてみました。河、海、山、豊かな自然に囲まれた都市でカナダ最大の港がある。ハリウッドばりの映画製作拠点となっていて、最近では冬期オリンピックの開催が記憶に新しい。ふむ。若手のアーティストやクリエーターも多く、彼らが集うスポット、随所に散らばった小さなカフェらの盛り上がりが熱いとのこと。コムデギャルソンはあるかしら?答えは「ノー」でした。つまり、東京ロンドンパリ的な都市感とは全く異なるのテイストの街と考えた方がよいのだと思います。

大都市って、あるポイントで見ると何処も同じで個性がないと思いませんか?わざわざ飛行機に乗らなくてもロンドンやニューヨークで起こっていることは、東京にいれば大体わかる。手に入るし、体感できる。以前パリに行った時に、あっちこっちの洋服屋を回ったんだけど、全然かっこいいと思える服に巡り合えなくて、ふと「あ、ココいいじゃん。」と思って入ったショップがコムデギャルソンで笑っちゃったことがあります。

もちろん、ロンドンもパリもニューヨークも大好きなんだけど、今はその手の大都会のトレンドとは関係なく、勝手に盛り上がってるような都市の方に興味があります。東京に暮らしていて、日常生活の中でバンクーバーの情報が入ってくることはほとんどないですもんね。きっとそこには想像もできないような、素晴らしいことが、僕を待ちかまえているに違いない。
さて、GENE CAFEは枝分かれの始点となる2本のストリートに挟まれた細長い船の舳先のような形をしていていて、店の壁のほとんど全面がガラス張りの小さなお店です。地元の若者の憩いのスペースになっているみたいですけど、オーガナイザーとしては、もう少しクリエーティブな要素を注入したいとのこと。

僕ならカウンターに席をとって、コーヒーを飲みながら本を読みます。世界的に有名な小説を敢えての日本語訳で。例えばサリンジャーとかね。すると、隣に座った女の子は僕が何を読んでいるのか気になって気になってしょうがないわけだ。「ねえ、何を読んでるの?」ってところから話が始まって、日本ではサリンジャーが流行ってるのか(まさかね。)とか、読んでてイライラしてこないのかとか、翻訳であのニュアンスが伝わっているのかとか、カナダの小説家のことは知っているかとか、そういう風にコミニュケーションが展開していくんです。

バーやカフェの不思議。カウンターで隣の席にたまたま座った人とは何故かとても趣味が合うのです。たぶん世界共通。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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