旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2017年10月8日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

スイス交通博物館は知を刺激する遊園地

飛行機屋外展示の実機 コンベア990とDC-3zoom
飛行機屋外展示の実機 コンベア990とDC-3

アクセス
日本から直行便の着くチューリッヒ空港からスイス鉄道に乗ること1時間。
湖のほとりルツェルンの街にスイス交通博物館はあります。
航空機の展示も充実しているとの情報を得て、期待を胸に向かいました。

ルツェルンからさらに1駅離れたフェルケールス駅の目の前にあります。
交通博物館へ向かってみるので、敢えて交通手段を往復で変えてみようと船で行ってみます。朝の湖面は静かで美しく光ります。船尾のスイス国旗が湖面の青と対比をなして風にたなびきます。

船着き場から徒歩数分で入口に到着。博物館の湖側壁面には空港にあるボーディングブリッジが設置されていました。

船で向かえば気分が上がります 壁面にはボーディングブリッジがデザインされていますzoom
船で向かえば気分が上がります 壁面にはボーディングブリッジがデザインされています

20,000㎡を超える敷地があり、7つの展示館の中に3,000の展示物があります。うち3館が鉄道なのは、山岳鉄道も縦横無尽に走るスイスならでは。今回は、航空展示館を中心にご紹介します。

航空機野外展示
野外の展示で目を引くのは、コンベア990コロナードとDC-3です。
コンベア990は、マッハ0.91を謳った1960年初頭の俊足機なのですが、37機の生産で終わるという短命の機体。日本航空でも運航していたコンベア880の後継機で、ストレッチを果たせて流線型の翼上燃料タンクの設置で巡航速度と航続距離が伸びたものの、導入したエアラインは9社ほどで成功とは言えませんでした。

その中で、アメリカン航空に次いで多い8機を導入したスイス航空は、羽田空港路線にも就航させて、日本で見ることができました。1974年の退役までの飛行記録は、23.6万時間で1億7,500万キロを飛び、900万人を運んだと記録されています。

機内は、ファーストクラス2-2配列3列、エコノミークラス2-3配列の15列が設置され、87席となっていますが、エコノミー後方の座席が取り除かれているので、107席であったと推測されます。ハットラックの形状や、シートベルト着用サインなど、機内装備品が現在とは随分違う形状に郷愁を覚えます。

ファーストクラスとコックピットの間のスペースに4人が座れるラウンジも装備され、狭い機体ながらも配置に工夫があります。見学者が多く通りますので、通路側のシートにビニールカバーを装着し、ロープで座れないように仕切ってあります。長く展示保存する為の知恵ですね。

コンベア990機内への入口近くからと機内の様子zoom
コンベア990機内への入口近くからと機内の様子

DC-3は、言うまでもなく世界で最初の成功した商業用航空機で、軍事用のC-47型も含めれば1万機を超える生産数を誇ります。
1936年の初飛行以来、80年を越えた現座でも現役で飛ぶ機体があるのも頑丈さゆえ。スイス航空HB-IRNのこの機体はステップがついているものの、機内見学は許されていませんでした。ドアに装着したアクリル板越しに中を見ることができます。

子供用の乗用飛行機もあって、DC-3との並べるとより愛らしく見えました。

DC-3と乗用飛行機zoom
DC-3と乗用飛行機

航空機屋内展示
屋内展示場へ足を向けると、ワイドボディー エアバス機の機体断面が輪切りにされており、機内装備と貨物室のコンテナを見ることができます。

ジェットエンジンや、航空管制室の再現も含め、飛行船や気球などと多くの飛行機がところ狭しと並べられています。
世界一周を成功させたソーラーインパルスの機体もスイス製。日本中を沸かせたブライトリングDC-3もスイスのプロジェクト。スイスは冒険家を支援する体制が整っています。

1925年当時のフォッカーFVIIa単発機や、地元スイス製でヒマラヤを飛んだピラタスポーター機など歴史を飾る名機がならびます。

スイスインターナショナル航空に加えて破たん前のスイス航空の展示も多く、客室乗務員の制服を着たマネキンがカートを押す姿が再現され、機内のシートの展示と共に空旅への好奇心をかき立てます。

屋内展示館の様子zoom
屋内展示館の様子

自動車館
自動車館にも足を運んでみました。
一番新しい自動車館は2009年にリニューアルされた建物。外壁は道路標識に覆われているのですぐにわかります。只、この奇抜さは好き嫌いがわかれるところ。

立体駐車場を思わせるカーシアターにF1カーを含め多くの車を展示。リフトで見たい車を見学エリアに運んでくることも可能なスタイルです。自転車などの二輪、三輪自動車なども豊富に展示します。

自動車館の内外zoom
自動車館の内外

シアターが充実していて、毎日5~6本を上映するのはさながらシネマコンプレックスの様子。
敷地を取り囲むように建てられた展示館で、中ほどに池が造られペダルボートを体験できます。足でこぐ乗り物もあって、子供に優しい展示環境です。
多くの親子連れでにぎわっていました。

営業案内
入場料:大人          30スイスフラン(約3,500円)
                スイス・トラベル・パス持参者は半額
    ユース(6歳から16歳)15スイスフラン
    6歳未満        無料

開館時間:10:00から18:00(冬季は17:00まで)
     年中無休

スイス交通博物館
⇒ https://www.verkehrshaus.ch/en

協力:
スイス政府観光局
⇒ https://www.myswitzerland.com/ja/home.html

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

ブログ「あびあんうぃんぐ」:http://blog.livedoor.jp/avianwing
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