旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2017年9月27日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

スイスの祭り 伝統のウンシュプンネンを楽しむ

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祭りのハイライトは華麗なパレード

スイス中はもとより世界中から人々の集まる12年に一度の祭りがあります。
スイスの山岳リゾートの一つ、ユングフラウの拠点となるベルナーオーバーランド地方のインターラーケン。

「ウンシュプンネン」は1805年に始まった200年以上の歴史を持つスイスという国を体現した祭り。
首都ベルンとアルプス山岳地方の暮らしの違いからお互いいがみ合う状況を改善しようと、祭りとしたのが始まりと言われています。近世では、スイス全土を巻き込む大きなものになっています。

26のカントン(州)がそれぞれの民族衣装で集まるフォークダンスや歌。
石投げやレスリング。現代野球の基礎となった球打ちなど、素朴ながら伝統の様式を守って繰り広げられるイベントです。

インターラーケンの鉄道駅となるオスト(Ost)とヴェスト(West)の中間にこの街のランドマークのヘーエマッテ公園があり、ここにテントやスタンドを設営した会場が出来上がっています。ウンシュプンネンウィークと呼ばれる一週間は屋外、屋内、観覧席とわかれて各種イベントが目白押しです。

カジノのある建物の前でアルペンホルンが並ぶ演奏会は独特の雰囲気です。
扇型に30以上ものホルンを並べて、民族衣装の指揮者に合わせて演奏します。
アーレ川の水辺とハルダー山に音がこだまして、美しく返ってきます。

アルペンホルンは野外演奏ですzoom
アルペンホルンは野外演奏です

屋外で行なわれる石投げは、男女別でウンシュプンネンシュタインと呼ばれる石を投げてその距離を競います。ホルヌッセンというスイス式野球は、棒の上に球を置きそれを木の棒で打つ古式豊かなもの。あいにくの天気で、地面がぬかるんでいましたが参加者全員が真剣です。
スイス製品が並ぶ多くの店が出ています。チーズなど乳製品が中心のファーマーズマーケットです。

伝統の石投げは飛距離を競いますzoom
伝統の石投げは飛距離を競います

テント内では、さながら音楽の祭典といったところ。
声楽、管弦楽、フォークダンスなど多彩な催しが続きます。
スイスオルガンが鳴り、カウベルを打ち鳴らし、ヨーデルを奏でるグループもあって、聞き惚れます。観客は、テーブル席で食事しながら賑やかに見ています。一緒に歌いだす者、口笛を吹く者、踊り出す者・・・楽しそうです。

テント内で華麗に繰り広げられる舞台 カウベルを背負う黄色い男性の頭の上には日本の風景ジオラマが載りますzoom
テント内で華麗に繰り広げられる舞台 カウベルを背負う黄色い男性の頭の上には日本の風景ジオラマが載ります

会期内にスイス空軍PC-7チームが9機編隊でパフォーマンスを見せました。地元スイスのピラタス社のターボプロップ機。ジェット機チームよりも低高度での演技の為、山容と重なる飛行が多く、スイスらしい風景を切り取ることができました。

催しの最終日のイベントは、アクロバット飛行の航空機の爆音で始まります。
スイス空軍が誇る「パトルイユ・スイス」のF5Eタイガーのチームです。
山岳地で、アクロバット飛行を披露すること自体が驚きですが、その美しさは他では味わえないものです。緑の山肌をバックに赤と白のコントラストの機体が飛ぶ様子は、写真に収めると色彩的に美しく、心に残るイベントとなりました。最後には、光るフレアを残して機体が散会していきました。
これを合図にパレードの始まりです。

スイス空軍(上)とパトルイユ・スイスのアクロバット飛行zoom
スイス空軍(上)とパトルイユ・スイスのアクロバット飛行

ヘーエマッテ公園前の東西駅間を結ぶホーヘ通りに観覧席が作られて、26カントンに加えて71もの団体がパレードを行います。
これを見ていれば、スイスの文化のすべてがわかります。
フォークロアな衣装に身を包み、時には観客に地元の特産品を手渡す場面もあり、パレードは和やかに進みます。

色々な山車があるのですが、中には自動車やトラクターを改造したものまで工夫があり、トラックの荷台でスイスの生活を再現しているものまでありました。

度肝を抜かれるのは、火縄銃のようなライフルを使った実弾射撃をしながらパレードする人達。永世中立国で徴兵制も残るスイスならではの光景ですが、歩きながら空砲を打ち上げる様子は堂々としています。

ファーネンシュヴィンゲンと呼ばれる旗投げも競技となっており、美しく国旗やカントンフラッグが投げ上げられていました。

旗振り(上)と実弾射撃zoom
旗振り(上)と実弾射撃

見るもの全てが初めての体験で、新たな世界が広がった充実感でいっぱいになります。

次の機会は12年後の2029年。告知する看板も見掛けましたが、日本ではひと回りに一回開催の祭りが無いだけに、気の遠くなる時間の経過の中で伝統を育み続けるスイスの力強さを感じました。

撮影カメラ:CANON EOS 70D
撮影レンズ:TAMRON 18-400mm/F3.5-6.3Di II VC HLD


協力:
スイス政府観光局
⇒ https://www.myswitzerland.com/ja/home.html 

スイス インターナショナル エアラインズ
⇒ https://www.swiss.com/jp/ja

スイス・トラベル・システム
⇒ https://www.myswitzerland.com/ja/swiss-travel-system-ag.html

インターラーケン観光局
⇒ http://www.interlaken.ch/en/discover-interlaken.html

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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