旅の扉

  • 【連載コラム】coffee x
  • 2016年9月28日更新
アムステルダムカフェより
カフェエッセイスト:安齋 千尋

Coffee x Notes to Self

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-The Prologue
"Segui il tuo corso et lascia dir les genti”-― Dante Alighieri, The Divine Comedy
汝の道を進め、そして人々をして語るにまかせよ.

First breakfast on my own weekend with my Bialetti moka pot, fig on the cracker in a cute swedish package after no appetite, no coffee for a week. wearing his shirts, swimming in the water, Beethoven’s sonata from spotify, my life sense has been nourished by beautiful experiences that I’ve encountered. Believe yourself, my sense is not going away.

Dignity? Aha, Thanks for the word for me. No, I’m just a woman who knows strong magic kiss and being honest to my feeling.

Useful notes (Rule number 1: Fuck what they think. )

-Because with right person, sometimes kissing feels like healing (Lisa MacMann Gone)

-Say it before you run out of time. Say it before it’s too late. Say what you re feeling. Waiting is a mistake.

-Your friends will do anything to distract you but the only thing you’ll be thinking about is him.

-Note to Self, you gotta do this for you, This is for you. This isn’t about anybody. Live for you. Honor you. Never lose sight of that.

-No more expectations. Just gonna go with the flow and whatever happens happens.

-Time will pass, these moods will pass and i will eventually be myself again (Kay Redfield Jamison)

-Taste, in the dress sense, cannot be bought: but it can be acquired. Snobbery is the last thing you can afford. (Vogue February 1950)
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幸せなキッチンを夢にして形にした人が作ったベーカリー、Het Wilde Broodにて天然酵母パンの香りとかわいいお鍋やミルクポットが並ぶカフェに来ました。自信と食欲をなくしていた私は、食事は大切な人たちがいなければちっともワクワクしないことに気がつき、でも私の生活のセンスは決してなくならないことと、私の進路は何かと強く模索している途中です。
私はコーヒーの香りと朝食、太陽とハーブ。とてもベーシックなものを幼い頃から愛しいと思っていきました。時代の流れはきっとFeminist、TEDなど、はっきり女性の権利を主張することであって輝いていて素敵だなと思う女性はとても強かったりします。特にヨーロッパではそれを求められます。私はとても中途半端で、日本人女性のしなやかな家庭を支える強さを信じて、また一方で自由奔放、その真ん中で今まで来たのだなと思う今月のカフェ時間です。
ある時、映画の字幕をつけるワークショップに参加した時のこと。講師の女性がTEDの字幕と映画の字幕をつける文脈で、私はTEDのファンではないけれどね、とさらっと言ったのでした。とてもいい天気で、スペイン人の彼女が振舞ってくれるクスクスをal fresco lunchで眩しい太陽の下10人ほどの生徒がテーブルを囲みました。束ねたコリアンダーをちぎりながら、最後にこの果実皮をすって食べてね、と大きなオレンジを手渡してくれたのでした。小さな最後の隠し味。広がる香りと日差しと、共通の話題を交換しながらとても幸せでした。素敵な人。仕事と生活のセンスをきちんと大切に表現できる強い人。
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旅は時にとても孤独です。
出勤前に友人に弱音を吐いて、嫌々ながら夜勤をこなした日、いつも前向きな同僚に囲まれたのは神様の助け舟だったと思います。
私は懲りずに恋愛トークとマイナス思考な自分を嘆いていました。すると誰が見てもとっても可愛くて悩みなんてなさそうなまだ若いオランダ人の後輩が、Everybody has their own backpackよ、と笑顔で言うのを聞いてありがとうとこの笑顔を反芻しています。幸せいっぱいに育ったように見えて、私の何倍も波乱万丈な幼少期を過ごした話をしてくれました。どこにそれを隠しているのかしら。
ここで弱くならないために、私は大切な人々に出会い、本や映画、美しい旅の思い出に支えられているのでした。高校の国語の授業で先生が取り上げた国際児童図書評議会における美智子妃殿下メッセージの中で印象的だった新美南吉の『でんでん虫のかなしみ』を思いました。改めてこの基調講演の全文を読みながらきちんと前を向きましょうと思っています。私は国語の授業が大好きでした。
いつまでもメソメソしないでちょうだい、というとても頭の切れるブルガリア人の同僚、彼女は友人として女性としてはっきりと私にアドバイスをくれる稀有な存在です。
それでも、とにかくその日の仕事を終えるとなんだかもう体が空っぽで、空気になったみたいな気がしていて帰ろうとすると、昨晩私の弱音を聞いた友人が待っていてくれました。早朝7時。何時からいてくれたんだろう。そして、お腹が空かないといった私におにぎりを作って持ってきてくれていたのでした。泣かないように緊張していた心が一気に緩んでしまった瞬間、ありがとう。目が覚めてから食べた塩味は、ごちそうさまさまです。
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心が温かい友人たち、いつもミラクルをくれる人たち、でも私もそのエネルギーをいつかあげられるように大切にブログを書いています。
去年も私を助けてくれたカフェBlack Goldのオーナーが誕生日にDJをするからおいで、と言ってくれたので寝られない夜も自転車で出かけた夜のアムステルダム。その友人の友人たちがまた優しく迎えてくれました。大きな体のシェフの大先生がワインを飲んでいるから寄りなさいと言ってくれること、そして映画館で Magnoliaを見る真夜中の1時。心に巣食う悲しみ、恥、孤独、病気を笑いを踏まえて3時間、見ているのが辛いマグノリア。私が世界一嫌いなシーン、カエルが空から落ちてくる映像に吐きそうになりながら、初めて見た時はちっとも面白くなかったのに今はカエルのシーン以外はとても大切な映画です。
You need me ー同じ監督Paul Andersonの映画Punch-Drunk Loveから感じるキーワード。この映画を毛布にくるまって見た大切なイタリア人の友人もまた今月Milanに帰ってしまいました。引越し前夜のパーティで、彼はきちんと私のことをアムステルダムの大切な女性として彼のママと弟に紹介してくれたのでした。ありがとう。荷物の整理の中で、私にと持ってきてくれたETのTシャツを着ている今朝の自分が醜くないようにしゃっきりしないと。
最近スーパーで見つけたスウェーデンから来た可愛いパッケージのクラッカーと、コーヒーを入れた久しぶりのお腹が空かない朝食。Angelina Jolie & Brad Pittが別れるくらいだから、ここは強気で行かないと!とわけのわからないやる気と、母とのSkype、弟がパパになったことの幸福、人生はミラクルの連続です。オカマのJCくんの卵の洗礼、生卵を持って頭から足の先まで祈りながら浄化するように摩り最後に静かに水の中に割るというもの、をこなしてとにかく今日も起きなくてはいけないのは私だけではもちろんありません。
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-The Epilogue
さようなら、の準備をしていました。
ここは国立美術館の向かいの小さな運河脇にあるカフェBack to black.
i love you と言えない距離はなんだろうと、言葉の壁でも文化でもなく、お互いが大切すぎるために言えなかったことを吐き出すこと、そして認めなければいけないお互いの弱さのこと。
でも。
最後のデートと言いながら、着物でスクーターに乗るハレンチな夜。
Amsterdamで一番好きなところに連れて行って欲しいと頼んだら、行き先はクラッシックコンサートの音楽場でした。着物姿が目立ち、そして美しい彼の立ち姿とのコントラストが素敵ですねと、広報の方が写真を撮ってくれました。
世界一幸せ、本当にそう思うわ、と伝えました。きっとこのデートは最後ではなさそうです。結局世界は私が作り上げるものだから、こんなに美しい瞬間がある自分の旅を書き留めるブログの機会をいただいていること、またカフェに行くパワーが戻りました。
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皇后殿下の第26回IBBYニューデリー大会基調講演(宮内庁ホームページより)
The 26th Congress of The International Board on Books for Young People(IBBY),New Delhi (1998)
Theme: Peace Through Children's books
Keynote Speech by Her Majesty Empress Michiko of Japan
― Reminiscences of Childhood Readings―

http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/ibby/koen-h10sk-newdelhi-e.html

Magnolia (1999)
http://www.imdb.com/title/tt0175880/
Punch-Drunk Love
http://www.imdb.com/title/tt0272338/
Black Gold

https://www.facebook.com/blackgoldamsterdam/?fref=ts
Back to Black
http://www.backtoblackcoffee.nl
カフェエッセイスト:安齋 千尋
Amsterdamに住んでいます。外国で暮らすため、京都で仲居をしながら学んだ日本、Londonでの宝物の出会いがありヨーロッパにきて10年以上が経ちました。世界中どこにいてもいいカフェに出会うことがとても楽しみです。入った瞬間の香り、音、新聞、いつものバリスタと目が合うこと、私の日々の幸せな瞬間はカフェにあります。
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