旅の扉

  • 【連載コラム】coffee x
  • 2016年6月16日更新
アムステルダムカフェより
カフェエッセイスト:安齋 千尋

Coffee x History

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あの時 yes と答えていたらふたりはどこにいたのだろうー
6月の午後のAmsterdam。映画『天使のくれた時間』のキャッチコピーから始まる沢木耕太郎の本を読んでいます。今日は父の誕生日。Amsterdamに来たらいちばん連れてきてあげたいカフェScandinavian embassyにてアイスコーヒーな休日です。
もしあの時あの道を選んでいたら、人にはそれぞれ分岐点となる決断があります。どちらにしようか迷ったケーキと一緒ではなくて、チョコレートケーキにすればよかったなの場合また次に買えば良いから、いいわけをつけていくのではなく、関係を構築していくことで選択に強くなること。そして誰よりも好きな父が、チイちゃんなら大丈夫と信じてくれることを思い出して前向きになったら、どうしようもないことに熱くなっていた喉をアイスコーヒーが心地よく通るものです。
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Museum Insel Hombroichへ
3日間だけだけどAmsterdamを離れるから会いたいなと言えば、私の好きなイスラエル料理やさんにご飯を食べに連れて行ってくれるノースリーブの夕暮れの時間を経て、私は親友の住むdusseldolfに行ってきました。梅雨ではなく、なんとなく雨曇りが多い週です。さて何をしましょうか.
ここは電車とバスで30分の街NeussにあるMuseum Insel Hombroichです。安藤忠雄の建築があるLangen Foundationがあることも、もちろん偶然知ることになりました。
すぅっとする、日本語だとなんとなくでも美しさが伝わるといいのですが、抜けるような水色の涼しい空と麦畑の真ん中の一本道をベビーカーを押しながら女子ふたり。道の終点に美しい美術館があります。駅を降りて、線路沿いの林を抜けると、ジャガイモ畑が開けて、引っこ抜いて今晩の食卓に、とか麦畑を歩きながら左右の麦の大きさが違うことを見つけて、もしやこれは大麦と小麦、さすがドイツ!とか、ミステリーサークルを見つけて写真を撮ったり。中学生の頃から知っている彼女が偶然にドイツに住んでいて、制服と重いカバンを持って通った登下校のトーンと変わらず話すことができて横にいることはとてもとても幸せで、この時間は新しい私たちの宝物です。
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さてまずはカフェ、そして歩々蓮華。
千尋がこういうカフェで働いていても全然不思議じゃないよね、という友人が言う一目惚れのカフェでした。お花屋さんでは売っていない、小さな可愛い野花がそれぞれのテーブルに生けられていて、木のテーブルと大きな窓から入る光が雫型のガラスの花瓶にあたっている透明感のあるスペース。キッシュとタルト型のケーキ、エスプレッソマシーン、窓の外は樹々と庭しか見えず、スピーカーからの音のないことさえここなら美しく感じます。カフェの前にはハーブやバラが無造作に植えられていて初夏のこの時期らしくカラフルに色んな小さい不思議な形の花が咲いていました。
この美術館はもともとNATOのロケット基地跡に建てられミサイルなどの倉庫群として使われていたそうです。1993年に武装解除され、Karl-Heinrich Müllerがアートプロジェクト、Museum Insel Hombroichとして土地を購入しました。Insel=島。ロケット発射基地は現在、倉庫や防空壕がアートや研究所として使われる芸術のの孤島となっています。8メートルもある高い天井とコンクリートの上の方から自然の光がさすLangen Foundationの仏像の展示室、来てよかったな。歩々蓮華ーいつか茶道の先生が使った言葉は仏様の歩いた道の後には花が咲くこと、の意味で戦争や武装というネガティブな土埃から、仏様が通った後の様に静かにとても美しく自然と融合した美術館が並ぶこの場所。紛争介入でも何かボランティア活動やどんな仕事でも、振り返ってみる道が泥まみれの足跡だらけにならないように、後に花が咲くようにということから私がこの禅語を心に留めています。
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マクロにもミクロにもHistoryを考える6月のカフェです。
NATOが武装解除をした跡地に美しいものがポツンと転がっているMuseum Insel Hombroich. 昨日もアメリカでテロがあり、Gay Clubだったことがテロよりも話題のように感じるニュース。ある朝、彼の家でフラットメイトとコーヒーを飲みながら各国の歴史の授業の話になりました。オランダに住んでいると、奴隷貿易の過去はを国を豊かにした反面で負い目と感じることに出くわしますが、日本ではさらっと世界史の授業で香辛料貿易で栄えましたーと3分でて終わる歴史です。また、オランダ人の彼でさえ知っている日本人が中国人に行った人体実験棟731部隊の話。歴史には無数の側面があります。知ろうとすることから自分で考えること、小学生のようなテーマですがこれもまた旅をして自分で出会ってみる理由だと思っています。
太陽も風も涼やかさもちょうど良くとても幸せなのに、昨日まで私は人と比べている自分を静かに沈めていたのでした。それはよくあるmoto-girlfriendのはなし。こんな想いも国や人種を問わず源氏物語くらいから同じなのですね。うちカフェガールズトークで、友人の中でもこれぞという美しく才女のオランダ人Mに打ち明けると、美しい人は自分に自信のある人よね、ときらめく彼女の説得力あるアドバイスにシャンと背筋が伸びるのでした。昨日までというのは6月のカフェブログの記録ですが、まいっかと思えてきたのでした。何にもすることがない休日の午後スイミングプールの帰り道、笑また小学生みたいですが、彼は自転車の鍵を新調してくれたのでした。Amsterdamらしく彼らしい計らいが嬉しくて、今この幸せな時間ももhis-storyだなと思うのです。読んでいた本のタイトルは、世界は「使われなかった人生」であふれいてる。映画には多くのWhat ifがありロマンチックですが、だから映画は魅力的なのかもしれなくて、お互いが選んだ決断によって奇跡的に今があるのだなと思っています。The world is your Oyster, 友人のシェフが教えてくれた美味しいアドバイス。ありがとう。数え切れないキスを受けながら、Bialettiで入れた濃いめのコーヒーから湯気が上がる音と香りのを共有する大切な大切な私の時間です。
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Scandinavian embassy
Adress: Sarphatipark 34 Amsterdam 1072PB The Netherlands
facebook: https://www.facebook.com/ScandinavianEmbassy/?fref=ts
Museum Insel Hombroich
website: http://www.inselhombroich.de/museum-insel-hombroich/museum/
Langen Foundation
website: http://www.langenfoundation.de/home/
本:世界は「使われなかった人生」であふれてる (沢木耕太郎著 暮しの手帖社)
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カフェエッセイスト:安齋 千尋
Amsterdamに住んでいます。外国で暮らすため、京都で仲居をしながら学んだ日本、Londonでの宝物の出会いがありヨーロッパにきて10年以上が経ちました。世界中どこにいてもいいカフェに出会うことがとても楽しみです。入った瞬間の香り、音、新聞、いつものバリスタと目が合うこと、私の日々の幸せな瞬間はカフェにあります。
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