クリスマス前の4週間、このアドベントには、ドイツの各地でクリスマスマーケットが開催されています。
今年は、パリでのテロの影響で、海外からの旅行客は減少していると聞きます。しかし妙に萎縮して素晴らしい冬の風物詩を見逃すのは勿体無いという気持ちから、思い切って行ってみることにしました。
本場ドイツのクリスマスマーケットの中で、今回は最大であり最も古く美しいもののひとつと言われているフランクフルトのクリスマスマーケットを楽しんできました。
フランクフルト・アム・マイン空港は、たったの3駅10分でフランクフルト中央駅に到着することのできる、気軽で気持ちの良い、先進国の模範になるロケーションです。
フランクフルト中央駅に到着すると、すでにクリスマスのムードがいっぱいでした。正面ホールにはクリスマスツリーが飾られ、屋台の雑貨屋さんが明るい光りを灯して営業しています。ツリーの台座の部分には、列車の模型が走っており、駅らしい演出が楽しいです。
駅の屋根が高く照明が暗いので、屋台の放つ温かみのある光りが、華やかなクリスマスの飾りの中で安らぎも与えてくれています。
クリスマスマーケットの開催されるレーマー広場は、ここから歩いて行くことも可能ですが、今回は電車に乗ってみたかったこともあり、この中央駅からUバーンで2駅のドム・レーマー駅で降りてみました。
華やかなクリスマスマーケットを想像して駅を出ると、出口を間違えたようで大聖堂の真下に出ました。聖バルトロメウス大聖堂(通称フランクフルト大聖堂)です。神聖ローマ帝国時代には、歴代皇帝の戴冠式が執り行われた大聖堂だそうで、真っ暗な中、ライトアップされそびえ立つ姿は荘厳で、圧倒されるような存在感を放っていました。
せっかくなので中に入ってみると、天井は高いですが、外観とは違いどことなく質素な感じがし、質実剛健なドイツらしい聖堂だという印象を受けました。木の椅子が聖堂らしく、東西南北の記載とともに番号がふられた手書きの席番が学校のようで微笑ましい様子です。赤く丸いガラス容器に入った多くのローソクの光りが優しげに見え、ホッと落ち着くような穏やかな気持ちになれました。
時間に余裕があれば出口を間違えて夜の大聖堂に訪れてみるのも一興かもしれません。
大聖堂に出会えるという思わぬクリスマスプレゼントを頂いた気分で駅に戻り、反対側の出口からマーケット会場を目指します。
クリスマスマーケットのメイン会場であるレーマー広場は、圧倒的なオレンジの光りの洪水の中で美しく輝いていました。
まず目に飛び込んで来たのは、もともとその場所にあったのか、30mもあるかと思われるような高さのクリスマスツリーです。キラキラと光を放つそのツリーの前には、たくさんの可愛い屋台が並んでいました。広場の周りには、ぐるりと取り囲むように木組みの家々が建ち並び、まるで童話の世界の中に入り込んでしまったかのような気分になります。
ノスタルジー溢れる二階建てのメリーゴーランドもあります。子供も大人も楽しそうに乗っていましたが、日本では考えられないようなスピードで回転していました。
会場内にところ狭しと建ち並ぶ食べ物の屋台では、ワッフルやプレッツェルなどのドイツの代表的なお菓子に加え、人気の白いソーセージ、レバーケーゼ、フラムクーヘン、マッシュルームを煮込んだものなど、日本ではあまり見かけないような物がたくさん売られています。その中でマッシュルームの物を食べてみましたが、白いクリームが濃厚で想像以上に美味しく大満足でした。
大勢の人達が同じマグカップに入った温かそうなドリンクを飲んでいます。これが、ドイツのクリスマスマーケットには欠かせないグリューワインなのですね。デポジットシステムで、マグカップの代金3ユーロほどを上乗せして支払います。マグカップは記念にお土産として持ち帰ってもいいですし、返却すれば飲み物代だけで済みます。
仲間同士でワイワイと談笑しながらグリューワインを飲む姿は、皆本当に楽しそうで、見ているほうも幸せな気分になってきます。
お土産に喜ばれそうなシュトーレン、レープクーヘンなどのドイツの代表的なクリスマスの焼き菓子の屋台とともに、多くの雑貨のお土産物屋さんも軒を連ねています。
温もりの感じられるドイツの伝統的な木のおもちゃ、木彫りのジオラマのような家と人形や、日本では見かけないような華やかなクリスマスのオーナメント、スノードームや陶器、グラスやキャンドルなど雑多で、見ているだけでワクワクしてきます。
会場中に漂う食べ物の美味しそうな匂い、華やかなイルミネーションの輝き、クリスマスの音楽。その場にいるだけで気分が高揚するような活気のあるマーケットです。
会場はレーマー広場だけではありません。
付近一帯がクリスマスマーケットの様相です。
いったいどこまで続くのかと思うようなキラキラした楽しい雰囲気のフランクフルトのクリスマスマーケットでした。
幸せなこの風景の中で、ふと周りを見ると、街中の至るところにPORIZEIのマークを付けた多数の警察官がショットガンを持って警戒している姿が目につきます。
普段とは違うこの風景に、今の欧州が抱える難民問題やテロ問題を思い出さずにはいられません。
安心してクリスマスマーケットを楽しむ為にも、やはり世界中が平和でなくてはならないことを改めて感じました。