往路はエコノミークラスを利用し、帰路はビジネスクラス。
この選択には意味があります。欧州昼間便の往路は疲れていても、到着後は現地の夕刻なのでホテルで休めます。それに対し、日本への帰国が午前中の到着便では、機内で充分に休めたほうが断然効率がいい。そのまま仕事に入ることもできるまさにビジネス向きの選択です。
ヘルシンキ空港に到着した時は雨でした。外に出ることを諦めてターミナルビル1の端から2の先までを散策しながらラウンジに向かいます。長距離便のゲートは、ターミナル2の奥に集中させています。ムーミンショップやワインのショップを眺めながら歩きます。
フィンエアーラウンジは、2014年7月に新たなプレミアムラウンジとしてオープンしました。 ゲートとゲートの間にあり白で統一した落ち着いた空間です。フィンランドテイストの北欧デザインと言うだけあって、とてもお洒落でした。窓際のカウチソファーに座りました。小一時間程でしたが、朝日新聞衛星版を読みながら、マリメッコのカップでカプチーノを飲んでリフレッシュできました。窓の外には、搭乗するエアバス機がその出発準備をする様子が垣間見えます。
ボーディングブリッジから機内へ入る瞬間が好きです。外と遮断された空間ですので、見えている機体とドアの一部の塗装が、大きなロゴデザインのどの部分だろうなどと考えるのが楽しい。客室乗務員さんに迎え入れられる瞬間にこれからのサービスの期待度が高まります。
「お帰りなさい。」と挨拶がありました。気持ちのいい笑顔に、和みます。
機内はエコノミー席の前方となるBコンパートメントの右舷9L席でした。スタッガード配列です。2-2-1と1-2-1席が交互に配列されています。前部Aコンパートメントでは全7列に対して、後部でエコノミークラス前3列の配置は少人数でこじんまりして落ち着く空間になっていました。
窓際の席に座ると、通路側は後方客が足を伸ばす位置で棚のような構造で、これが書斎に座っているような奥まった感覚を演出する落ち着いた一人席です。
すぐ通路になるよりも落ち着きます。逆に窓側に棚が来る席や、A席側は両側に棚のある贅沢な一人席があります。
日本人客室乗務員さんは二名。ビジネスとエコノミーに各一名の配置です。特に女性に人気のあるマリメッコのアメニティが配られます。スリッパ、枕と大きなブランケットも同じデザインです。
背の高いカートに新聞と雑誌が山のように積まれて機内を廻っています。
短期間の旅行でも、活字に飢えていましたので、日経新聞と週刊文春・新潮を受け取り、おじさんサラリーマン定番コースの読書タイムが始まりました。
天井からのスポットライトに加えて、頭の横にも可動するLEDライトが装備されており、三段階の明るさが調節できるので使い勝手がいいです。
ノイズキャンセリングの大型ヘッドセットがあり、エンジンノイズを気にせず映画を楽しむ事ができました。世界的に多くのエアラインで親しまれている、ニュージーランドのPHITEK社のものです。
夕食は、ゆったりとした雰囲気の中で始まりました。
食事メニューとワインリストが配られます。ワインに力を入れているのか、食事メニューよりも厚い立派なものでした。食前にはシャンパンを頂きます。
フランス・シャンパーニュ地方のニコラ・フィアットです。
メニューには、「シャルドネの繊細さとエレガントさ、ピノ・ノワールのしっかりとした作り、ピノ・ムニエのフルーティーなアロマの、バランスのとれたコンビネーションをお楽しみいただけます。」と書かれています。その内容が決して大げさではない美味しさです。
北欧の有名なグラスの「iittala」に注がれて来ますので、とてもエレガントに感じます。
シャンパンを味わっていると、食事のオーダーを聞きに客室乗務員さんが来てくれました。
アミューズブッシュから始まり、前菜二種、メイン三種から選びます。
前菜はバルト海のニシンの燻製とザリガニのスープのうちザリガニを、メインは北極岩魚の燻製、トナカイ肉と鶏肉とさつま芋・椎茸・蓮の炒め物のうちから、今が旬とお勧めのあったトナカイの肉料理にしました。
ザリガニのスープはなじみが薄いですが、ロブスターと変わらないコクと味の深みがあります。
トナカイの肉料理は珍しさが先行しますが、フィンランドでは結構オーソドックスだそうです。トナカイの肉を食べるのは初めてでしたので、とても楽しみにしていました。食べてみると想像よりもずっと柔らかく、まろやかで印象に残る味です。客室乗務員さんは、「レバーのような」と表現されていましたが、全く臭みがなく上質に感じました。
デザートは、ハーゲンダッツアイスクリーム、チーズにマカロンがあります。マカロンは数種類から選べて、甘すぎず溶けていく食感を空の上で味わえるのはいいですね。大満足の食事でコーヒーを飲んでいると、睡魔に襲われます。
手元の電動スイッチでフルフラットにしました。
背中にマッサージ機能のあるシートは、その部位を上下・前後に調整でき、快適に過ごせます。大きなブランケットに包まれると、熟睡するのに時間は掛かりませんでした。足をボックスに収める感じになりますが、先が狭くなっていたりはしませんので、ゆったりしています。
目が覚めると、ギャレーに軽食があるとのアナウンスを思い出し、果物、チョコレートやカップヌードルなどの中からフィンランド名物のブルーベリーケーキを食べてみました。サクサクとした食感のケーキの真ん中にジャムがたっぷり載り美味しかったです。
到着前の朝食は、和・洋食のチョイスです。
塩鮭、焼豆腐、漬物、味噌汁の和食と、オムレツ、スモークサーモン、クリームチーズとほうれん草入りレティッシュ風ポテトの洋食があります。眠っていたい人には、一時間前の簡単な朝食サービスもありますので、気が利いています。
航空機は、モスクワやイルクーツクの北、ハバロフスクの上空を通過し、ウラジオストクの東を日本海に抜け、秋田近辺を太平洋に抜けて房総半島へ南下するルートを取りました。
色々な欧州旅行の思い出を運んで、定刻少し前に成田空港へ到着しました。
滑走路16Lへの着陸ですので、ターミナル2へは素早い移動です。欧州最速便の名に恥じないその所要時間は9時間20分。ビジネスクラスを堪能するにはとても短い時間でした。
もう少し、あの落ち着く空間に腰を落ち着けていたいと言うのが正直な感想です。
今回のフィンエアーのフライトはビジネスクラスの条件を高いレベルで満たしていました。
快適なシート、上質な食事、自然で気持ちのいい乗務員さんの接客と三拍子揃い、最速の所要時間が加わっています。
最後の日本語アナウンスが印象に残ります。
「この便は、定刻より早く到着致しました。お客様の定時運航へのご協力ありがとうございました。」気分良く、機内を後にすることができました。
協力:フィンエアー
⇒ https://www.finnair.com/jp/jp/