旅の扉

  • 【連載コラム】coffee x
  • 2015年10月26日更新
アムステルダムカフェより
カフェエッセイスト:安齋 千尋

Coffee x Back to the future day

20151021
What are we supposed to have?

and....
Evidence of water found on Mars
STAR WARS - The force awakens-
LOVE 3D
iPhone

未来のはずの現在に、
科学も私の心を躍らせることもそして逆もまた然り結局、人によって動かされています。
神無月とはよくいったもので、神様が留守にしている10月。
Back to the future dayの夜に出てきてしまった空間に、感情を置いてきてしまったようです。貸してくれたTシャツはうれしくてこのまま着ていたかったけど、つながれた手にキスをされるパラダイスと離した瞬間の温度差に耐えられなくてエデンを一人で出てきてしまった虚しい気分です。
うまくいかないことは仕事でも続き、こんなときはAmsterdamにいたくなくてTokyoにはまして帰れずカフェに来ました。

私のことを誰も知らないところで、センスのいい音楽か映画だけがんがん流してください。
ーBlack Gold へ

Black Gold
vinyl&coffeeの専門店という看板がかかった小さなカフェです。
vinyl=レコードのターンテーブルとエスプレッソマシーンが一緒に並ぶCoolなカウンター。お客さんもオーナーも次々好きな音楽を流していきます。売っているのか遊びにきているのかわからないこの人たちが私の知らない世界を次々あけていくセンスの刺激と大好きなCoffeeのいい香り。
15年間オフィスでマズいCoffeeを飲み続けてきたというオーナーが立ち上げた心地のいい空間は、“You drink coffee because it’s just a moment away from your horrible job,”(Sprunge記事より) やってらんないわと思う私に心地のいい、ちょっぴり悪そうなチューン。
パサっとしたクロワッサン、でも美味しいラテ。丁寧なエスプレッソと牛乳で入れてくれているとわかる大きめのカップに入ったラテが頼もしいカフェです。温かくて美味しいペイストリーでないところは私の笑顔を作ってくれるのいつものカフェとは違うけど、漫画の中のような灰色の日に灯がともるような安心感があります。

このカフェがあるNieuwmarktはあまり治安の良い場所ではないのですが、飾り窓や中華街、マリファナのはびこるAmsterdamの興味深い文化が見られるエリアです。この角にOudekerk(旧教会)があり、石畳に女性の乳房のブロンズ像が隠されているのですが、私はこよなく気に入っている作品のひとつです。作者の名前は公表されておらず職業が医者だということだけ知られているそうです。もしAmsterdamに来たら小さな秘密の石畳を見つけてみてください。
カフェの帰り、土曜日の市場でマルメロを2つ買いました。西洋かりんと日本では呼ばれるそうで、黄色くていい香りだったのでつい、ひとつはTokyoから来ているイラストレーターさんのYard Saleに寄るおみやげに。さらっとわたしのデッサンをしてくれてまた宝物がふえました。

A long time ago in a galaxy far far away,

さて、火星に水の存在の痕跡が確認されたというニュースとSTARWARS。
自分の存在を小さく感じさせてくれて、ミラクルってあるかもって思わせてくれるのでした。広いようで小さな地球で一生会わない人もいるのに、私はAmsterdamで再会した人がいた10月でした。レコード盤が回るように、同じ軌道を回る人たちっているのかもしれなくて、ベストフレンドのひとりが少し長くこの都市に住むことになり、彼女と一緒に朝ごはんにPorridgeを煮て、モカエクスプレスでCoffeeをいれる温かい朝も、喧嘩ばかりしていた弟がかわいすぎるお嫁さんと遊びにきてくれてAmsterdamの運河を足こぎボートで渡りながら動画をとって笑い転げることも、テクノロジーとフォースをおいていってくださった縁のある方との再会も奇跡のような人生の1日。”虚しい”気分になった瞬間もあったけど、大丈夫この好きな世界にいましょう私は安齋千尋だから、と思わせてくれるのでした。

Black Goldというカフェができたように、
世界には私のを必要としているビジネスがあるかしら。
紛争の絶えない中東や、難民が流入して混乱するヨーロッパに、旅館を作りましょうか。
音楽を流しましょう。茶道やアロマセラピストとして経験した植物や体温が触れることのもつ力を使いましょう。私には生活をふんわり幸せにする力がついていると信じています。
帰りたくないので今日は映画を見ましょうかと、Gaspar NoéのLOVE。
実は3回も映画館で見ています。2015年に3回見たのはこのLOVEとSpike JonzeのHER. 完璧に対照的なのですがブラックホール吸い込まれたようにしんと心に記憶される映画です。
体の触れ合う感覚、激しく求め合った若い男女の熱が伝わるLOVE.
コンピューターにプログラムされた女性と疑似恋愛をするHER.
コンピューターは彼の過去のデータや思い出、音楽などの趣向を正確に記憶しているので自分を理解してくれていつも側にいるパートナーと錯覚する一方で、肉体の温かさや過ちを悔いる葛藤は得られません。未来の惑星で恋をする生物はどちらを選択するのでしょうか。
体じゅうが熱くなるようなLOVEを見たあと真夜中2時、今日は夏時間から冬時間に変わる日の夜。時計の針が戻ってこの一時間てどこにいくんだろうと不思議な気持ちでちょっと長く寝られるなぁと思いながら、Come to meの温度を懐かしく思うback to the future day。

Illustrator: Luis Mendozoom
Illustrator: Luis Mendo

Black Gold
Address: Korte Koningsstraat 13, 1011 EX Amsterdam
Website: www.blackgoldamsterdam.com/

映画:
LOVE 2D/3D https://en.wikipedia.org/wiki/Love_(2015_film)
HER https://en.wikipedia.org/wiki/Her_(film)

カフェエッセイスト:安齋 千尋
Amsterdamに住んでいます。外国で暮らすため、京都で仲居をしながら学んだ日本、Londonでの宝物の出会いがありヨーロッパにきて10年以上が経ちました。世界中どこにいてもいいカフェに出会うことがとても楽しみです。入った瞬間の香り、音、新聞、いつものバリスタと目が合うこと、私の日々の幸せな瞬間はカフェにあります。
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