高校生のとき、世界史の授業の最初のほうで習うのがメソポタミア文明だった。どこから来たのかわからない謎の民族、シュメール人によって築かれた最古の文明。5千年前にはすでに楔形文字を発明していたといい、おかげでその時代のさまざまなことが明らかになっている。しかしホントはあの辺にはまだまだいろいろ埋まっているらしいと聞いて、南東アナトリアまで行ってきた。
メソポタミアとはティグリス川とユーフラテス川にはさまれたエリアで、現在はイラン、トルコ、シリアなどに国境で分かたれている。すでに有名な遺跡も数多いが、実はトルコ側には知られざる遺跡がまだまだ眠っているというのだ。「眠っている」。そう、まだ発掘途中なのである。歴女じゃないけど歴史好きとしてはそういう「未知の」とか「謎」とかいう言葉に弱い。こういうのがロマンなのよね、旅のロマン。追求するならまずはティグリス川に行かなくては。
イスタンブールから城塞都市ディヤルバクルまでは飛行機で2時間弱。南東アナトリアの主要都市のひとつで、ティグリス川に接する街として知られる。旧市街には5世紀に建設されたという城壁が今も残っており、これは万里の長城の次に長い城壁なのだそう。一部は朽ちているものの、保存状態が良く市民の憩いの場となっている。
ティグリス川へはディヤルバクルから日帰りツアーがあり、旧市街から車で30分ほどと気軽に訪れることができる。着いた場所は支流で、川はむき出しの岩に囲まれており荒涼とした雰囲気。しかし支流とはいえこれがティグリス川、文明の母たる川か、と得も言われぬ感動に包まれる。
ただ「ティグリス川に行きたい」と、なんの前情報もなく向かったところではあるが、実はここがスゴかった。そびえる岩と思われたものは実は紀元前1000年のアッシリア王の居城。風雨に削られ、言われないと気づかないほど薄くはなっているものの、王の紋が描かれたレリーフも見える。そして岩肌には無数の穴、その奥をよく見ると階段や回廊になっているのがわかり、中に入ってみたい! とうずうずする。
外側から登って近づくことはできるが、今回は川側からよく見るためにティグリス川の遊覧船を利用。すると、水面にせり出した見張り塔とおぼしき遺跡や、住居跡がいくつも見られ、たしかにここに人が住んでいたことがわかる。ガイドさんの話には世界史の授業で習った単語がポンポン出てくる。それもさることながら、これだけの遺跡が、この状態で3000年も放置なところに驚きだ。遺跡がごろごろしているトルコではこんなスゴいやつだって特別扱いではないのである。
ティグリス川。雄大な歴史ロマンを追う旅の始まりにふさわしい。