旅の扉

  • 【連載コラム】オススメ情報を編集部がピックアップ!
  • 2015年5月20日更新
リスヴェル編集部トピックス
Editor:リスヴェル編集部

種まく旅人 人生の恵みについての物語

© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会zoom
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会

この映画を見終えた時、忘れていた大切なものがあることになんとなく気づいたきがする。映画の中の台詞「きれいな海は、やせている海・・・」は、海を取り巻く環境によって異なる観点ではあるが、とても衝撃的な言葉だった。ダム開発と森林破壊で沿岸の海の荒廃が急速に進んだ1980年代、牡蛎を育てるためにひとりの漁民が山に木を植え始め、漁師だからこそ見出し得た森と海の真のつながりを描いた「森は海の恋人」(畠山重篤 著)を思い出した。
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会zoom
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会

「真夏のオリオン」や「小川の辺」など、繊細な人物描写に定評のあるヒューマンドラマの名手・篠原哲雄監督が贈る『種まく旅人 くにうみの郷』が5月30日より全国でロードショーする。

山が海を育て、海が山を育む くにうみの郷 淡路島を舞台に描かれる人と自然の再生の物語。くにうみ神話において伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)が最初に創った日本のはじまりの島が舞台。
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会zoom
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会

《ものがたり》

「神野恵子(栗山千明)は仕事ができるが、少々頭でっかちなアメリカ帰りの農林水産省官僚の31歳。日本の第一次産業の現状を調べるために淡路島に赴任する。そこでタマネギ農家の豊島岳志(桐谷健太)と、海苔の養殖を行う弟の豊島渉(三浦貴大)の兄弟に出会う。家業を継ぎながら新しい農業ビジネスモデルを模索する頑固な兄と、家を出て漁協組合長に弟子入りした一途な弟。対照的な二人は父の死をきっかけに仲違いしており、それぞれ人手不足、環境の変化などの問題と向き合いながら自分の道を切り開こうとしていた。
二人の姿に胸を打たれた恵子は兄弟を和解させるため、そして島の農水産業を盛り上げるため一大プロジェクトを起ち上げる。それは山の栄養を含んだ溜め池の泥を海に流すことで豊かな水質を取り戻す伝統手法“かいぼり”の復活。兄弟とともに土や水に触れ、作物の生長を見守り食べるうちに恵子の気持ちも忘れていた大切なものを見つけていく。」
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会zoom
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会

かいぼりとは?

溜め池の水を抜き、堆積した腐葉土を流し出す維持管理作業のこと。兵庫県は溜め池の数が日本一多く、その半分以上が淡路島にある。溜め池は放置すると山から土砂などが貯まって貯水量が低下するだけでなく、台風や大雨の際に決壊する恐れもあるため、農家は定期的にかいぼりを行い、溜め池を維持管理してきた。しかし、近年は農業者の高齢化などにより、かいぼりが行われない溜め池が増加している。

一方、海ではこの十数年間、リンや窒素などの栄養不足が原因と見られる海苔の色落ちが深刻な問題になっている。かいぼりの際に川から海に流される腐葉土はこれらの栄養を豊富に含んでいることから、かいぼりの重要性が改めてクローズアップされるようになった。かつては海苔の網にかいぼりの泥がつくことで海苔の胞子が網に付着しないという問題もあったが、養殖技術が進んだ現在は、時期さえ考慮すれば問題ないという見方が強い。このような風潮の中、淡路島では地域の農業者と漁業者が連携し、溜め池の適正な管理と豊かな里海の再生を促進するかいぼり行事が復活しつつある。
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会zoom
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会

『種まく旅人 くにうみの郷』 上映時間111分
公開日:2015年5月30日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監 督:篠原哲雄
脚 本:江良至/山室有紀子
出 演:栗山千明、桐谷健太、三浦貴大、豊原功補、谷村美月、音月桂、根岸季衣、永島敏行
制作・配給:松竹
公式サイト:http://tanemaku.jp/
© 2015映画「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会
Editor:リスヴェル編集部
リスヴェル編集部では、各国観光局や旅行関連企業のニュースリリースやプレスルームからの情報を中心に、旅先で見つけたちょっとした面白いモノ、意外と知らないホテルの中の興味深い事、ビジネスで特定の国に行く人の話など、ちょっと変わった切り口で情報を提供して参ります。
risvel facebook