トラベルコラム

  • 【連載コラム】イッツ・ア・スモール・ワールド/行ってみたいなヨソの国
  • 2015年1月23日更新
夢想の旅人=マックロマンスが想い募らず、知らない国、まだ見ぬ土地。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス

チュニジアの夜

アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズ 1961年の録音zoom
アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズ 1961年の録音
今日(1月22日)はジャズの日なんだそうです。ジャズのレコードで墓場まで持ってく1枚を選べとなったらコレ(写真参照)かなあ。B面の「NO PROBLEM」には小さな思い出があります。その昔〜僕がまだジャズなんかに全く興味がなかった頃〜当時のガールフレンドがカセットテープに好きな音楽をダビングしてプレゼントしてくれたんだ。テープの頭に入っていたのがこの曲でした。 ちょっとシケたムードの夜もコレを聴くととたんに踊り出したくなってしまう魔法のような曲です。

それからずーっと後のある日、今度はこのレコードを別の人(男性です。)からプレゼントされました。よほど「アートブレイキーが好きそう」な男に見えるのでしょうかね。人生で2回も同じ音楽を贈られるって、何か運命じみたものを感じてしまいます。

ジャケットを見ると邦題が「危険な関係のブルース」となっていて、なるほど、映画「危険な関係」ために作られた曲であるようです。ライナーノートから引用すると、18世紀に書かれた異色の姦通小説を1959年にフランス人監督が映画にしたものなんだそうな。姦通小説だって。そう言えば80年代にも、同じ「危険な関係」というタイトルのアメリカ映画がロードに出てて、もしかしたらリメイク版なのかも知れませんね。グレンクローズ、ジョンマルコビッチ、ミシェルファイファー、まだ幼い顔したユマサーマンも出ていて。あの時のミシェルファイファーは本当に美しかったです。
さておき、アートブレイキーの「NO PROBLEM」は映画のテーマ曲だったらしく、パーティーのシーンなんかのバックに繰り返し使われていたとのこと。僕は作品は観たことないですけれど、音を聴いているだけで、華麗なパーティーのシーンを頭の中に思い描くことができます。高々と掲げられるシャンパングラス、タキシードに蝶ネクタイで正装した男たちと華々しい衣装に身を包んだご婦人だち。奇声をあげる酔っ払い。熱いキスを交わす恋人たち。

しかしそうするとだな。この曲を女の子に贈られたこともいろいろ考えてしまいますね。けっこうミステリアスで意味の深い贈り物であったのかも知れません。ま、結局、その恋は本当に短く終わってしまったのですけど、そういう僕の鈍感さがまずかったのかもね。いずれにしても、いろいろと趣味や好みが合いすぎる女の子との恋愛は長続きしない。というのが僕が長年ロマンスしてきて得たひとつの教訓です。だから、あなたが好きになった人が、例えば昆虫採集が趣味だったりしても嘆くことはありません。お互いの趣味嗜好を尊重しながらきっとうまくやっていけますよ。


さて、このレコードのB面に収録されているもうひとつの曲が「チュニジアの夜」。有名なジャズのスタンダードナンバーなので、みなさんも耳にしたことがあるかと思います。アートブレイキーバージョンのこの曲がまた素晴らしいんだ。ブレイキー得意の軽快なドラムワークから入って、他の打楽器としばらく掛け合った後にピアノとサックスが入り込んでくるんだけど、これがまさにチュニスの夜って雰囲気なんですよ。

レコードに針を落とすと、真夜中の薄暗い灯りの中で、赤や金の派手な衣装をまとった女たちが妖しいダンスを踊ってる。みたいな絵が浮かんで頭の中をぐるぐると回りはじめます。香水が汗と混ざりあったエキゾチックな香りまで漂ってくる気がします。チュニジアなんて行ったこと一度もないのにね。いやいや、音楽ってのは、うん、旅ですね。
クスクス料理 Cooked by Yoko Iwabuchi(撮影も)zoom
クスクス料理 Cooked by Yoko Iwabuchi(撮影も)
チュニジアに行ったことはありませんが、チュニジア人の友達がいたことはあります。よく彼女が住んでいたロンドンの部屋に遊びに行って、彼女の作る北アフリカ料理をごちそうになったり、地元チュネジアの話をいろいろ聞かせてもらったりしていました。あ、ただの友達ですよ。念のため。どこか母国の生活様式が感じられる部屋でね。椅子もそうだし、何か全体的にモノの位置が低い部屋だなあ。と感じたのを憶えています。料理をする道具も国から持参したらしく、2段になっている鍋は、下段で魚や肉を蒸し焼きにして、その蒸気で上段のクスクスを蒸すというシステムでした。料理がまた美味しくてね。東京でもアフリカ料理を食べさせる店はいくつかありますけど、手作りの家庭料理というのは、やはりお店では味わえません。
白と青の街並み。行ってみたいでしょ?zoom
白と青の街並み。行ってみたいでしょ?
あらあら、ジャズについて思いをめぐらしていたら、いつの間にかまた地中海に行き着いてしまいました。僕が行ってみたい土地についてあれこれお話するこのコラム。気がつくといつも地中海あたりの話ばっかりしてる気がします。これだけ気になってるんだから「行ってみたい」だけじゃなくて実際に行かなきゃね。

え?一緒に行きたい?ノーノー。趣味や好みが合いすぎる女の子とは距離を置くようにしてるんです。
プースカフェオーナー/DJ:マックロマンス
マックロマンス:プースカフェ自由が丘(東京目黒区)オーナー。1965年東京生まれ。19歳で単身ロンドンに渡りプロミュージシャンとして活動。帰国後バーテンダーに転身し「酒と酒場と音楽」を軸に幅広いフィールドで多様なワークに携わる。現在はバービジネスの一線から退き、DJとして活動するほか、東京近郊で農園作りに着手するなど変幻自在に生活を謳歌している。近況はマックロマンスオフィシャルサイトで。
マックロマンスオフィシャルサイト http://macromance.com
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