ふたたびヴェールの中に
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前にここで中東のお話をしたのおぼえてるかしら?今回はその続編になるかな。最近、ドバイに住んでたって女性と知り合いましてね。いろいろお話を聞かせてもらうことができました。ドバイ。中東屈指の金融都市。夢のメトロポリス。
中東の代表的な都市でありながらドバイの住民のほとんどは外国人なんだそうです。なので日常生活の中で中東を強く意識することはあまりないと。とはいえ、そこはやはりイスラムの教えを国教とするアラブの国の都市。常識やマナー、ルールはウエストサイドとは異なります。例えば結婚している相手以外とセックスしたら外国人でも逮捕されますし、ビールを飲みながらストリートを散歩するようなことも許されていない。ラマダンもあります。これは外国人にはけっこうキツいらしい。
それから当然、イスラム教徒の女性はあの全身を黒ベールで覆った衣装(アバヤ)を着用しています。マックロマンスが大好きなやつです。
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女性たち、ずっとアバヤを着て生活しているのかと思っていたら、そんなことはなくて、あれはいわゆる外出着。男性に肌を見せてはいけないってだけの話で、屋内で女性同士でいる時は誰も着てないんだそうな。ヴェールの中の彼女たち、ファッションには貪欲です。ハイラグジュアリーブランドのジュエリーにセクシーランジェリー、メークも入念、最近では整形も流行っているんだとか。
つまりだな。女性の「着飾る」という行為は男性の方を向いているわけではないんですね。わかる気がします。僕もおしゃれは好きですが、モテるための手段としてファッションをとらえたことはありません。それは人間にとってもっと根源的なものだと思うのです。何を着るかはどう生きるか。服なんかどうでもいい。という考え方は人生なんかどうでもいい。と言っているのと同じではないでしょうか。
さておき、「女性が肌を見せてはいけない。」というルールはつまり「男性は女性の肌を見てはいけない。」と同意です。女性がアバヤを着ていない時間がある以上、当然、男性が足を踏み入れてはいけないスペースが存在します。それは何も建物の中に限ったことではありません。例えばビーチ。
ビーチ!女性専用のビーチがあるの?
そう。女の人だって水浴びしたいわよね。
水浴び?まさかア、アバヤを脱いで、、
当たり前じゃない。あんなもの着たまま水に入ったら溺れちゃうわ。
それで彼女たちはアバヤの下に何か着てるの?水着とか?
もちろん。やっぱりビキニが多いわよね。すっごいセクシーな豹柄のビキニとか。
ひょっ豹柄のビキニ!
あら、あなた、アニマル柄とか好きなんだ。
いや、そ、そういうわけでもないんだけど、ほら、ヴェールの中にアニマルって。そのギャップがさ、。
そっか、アバヤが好きなのね。私、持ってるわよ。おみやげに買ったんだ。こんど着てあげようか?
ぜひ豹柄のアンダーとセットでお願いします。あ、ゼブラもいいな。うん。セクシーな女性のアニマル柄は大好きです。
えーとね。こういうのはどうかな。哲学書を持って死海に行くところまでは前回と同じ。青い空の下、読書しながら水面にぷかぷか浮いてるわけだ。ビールはダメだからソーダか何か、うん、オランジーナで我慢するとしましょう。やわらかな太陽の光。湖面をそっと撫でる風。どこかから聴こえてくるマーティン・デニー。口の中に残ったオレンジの香り。やがてサングラスの向こう側で哲学の文字がとろけはじめ、僕は水に浮いたまま淡い眠りに引き込まれていきます。そして、いたずらな風が眠った僕を静かに沖へといざなうのです。目醒めるとそこは禁断の入り江。女たちのはしゃぎ声。色とりどりのビキニ、足首に揺れる金色のアクセサリー、波打ち際に脱ぎ捨てられたアバヤが潮風にパタパタとなびいている。
おーい、マックさーん。あのですね、マックさん。また間違いだらけですよ。ちゃんと地図を見て下さい。ドバイはペルシャ湾に面してるでしょ。死海があるのは地中海側、それに死海は湖ですからね。何百年浮かんでいても絶対にドバイには着きません。
何だ、また君か。いいところだったのに。
さて、ドバイのお話をきかせてくれた彼女、実はドバイそのものはあまり気に召さなかった様子でした。けれども滞在中はずいぶん旅行に出かけたそうです。どこに行くのにもアクセスがいい。ドバイを中心にして地図を見るとよくわかります。アジアとヨーロッパとアフリカのちょうど真ん中あたり。ビジネス都市とあって各国と直行便でコネクトされているのもよい。旅行の拠点を構えるのにこれ以上条件が整っている土地はそうありません。ちょっと羽をのばしてヨーロッパ。モルディブのワンリゾートアイランド。ケニアのサファリホテル。夢のような旅もドバイに住んでいれば「週末旅行気分で気軽に計画できる。」そうです。死海なら日帰りでも行けるかも知れませんね。ま、ドバイの住人になること自体が夢のような話ではありますけれど。