旅の扉

  • 【連載コラム】こだわり×オタク心
  • 2026年9月16日更新
arT'vel -annex-
コラムニスト:Tomoko Nishio

『モネと時間旅行』モネ没後100年に公開、19世紀と21世紀の交差を通して描く「未来への道」

© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roqueszoom
© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques
2026年、印象派の巨匠、クロード・モネの没後100年に、モネをテーマとした映画が公開されている。監督は『猫が行方不明』、『ダンサー イン Paris』、『パリのどこかで、あなたと』など、パリの市井の人々や、バレエドキュメンタリーなどを描くセドリック・クラピッシュだ。パリとノルマンディーを舞台に、「印象派」や写真、映画など、新たな表現が誕生した19世紀ベル・エポックと現代を行き来する物語は、未来に進むためにそっと背中を押してくれるような温かさが感じられる。19世紀パリの風俗やル・アーヴルやオンフルール、オランジュリーやオルセー美術館、ジヴェルニーなど、印象派ゆかりの地もめぐる時間旅行へ出かけてみては。
© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roqueszoom
© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques
過去を探りながら未来へ歩む、時の流れを辿る

【あらすじ】

ある日、デジタルクリエイターの青年セブを含む名前も顔も知らない一族30余人が集められ、彼らの祖先が所有していたノルマンディーの廃屋の相続問題が告げられる。一族を代表してセブら4人が家の状態調査を任されることになった。時が止まったような屋敷の中で、彼らは古い写真や日記、手紙の中から白いドレス姿の女性を描いた、印象派の作品らしき絵画を発見する。屋敷の持ち主である先祖たる女性「アデル」を追って、ルーツを辿る旅が始まる――。








© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roqueszoom
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映画はアデルの残した廃屋や品々の調査を通して、彼女が生きた19世紀末――ベル・エポックの時代のパリと、現代のセブ達の時代双方が描かれる。現代の主人公は2025年に生きるセブ、19世紀の主人公はセブ達の祖先にあたる、1895年にノルマンディーからパリへ上京した女性アデルだ。エトルタの断崖を望むノルマンディーから船でセーヌ川をさかのぼり、船上からできたばかりのエッフェル塔を望むアデルの姿が次第に現代のバトームーシュに変わる……といった具合に、セブ達がパリとノルマンディーを往復しながらアデルに関する調査を進めていくうちに、2つの時代が次第に近づき、いつしか双方が1つの流れに融合していく。その物語の流れが実に自然で絶妙なのだ。

フランス語の原題「La venne de l’avenir」は、直訳すれば「未来への道」。我々はセブ達とともに過去を探ることで現代を知り自身を知り、明日の未来へのささやかな一歩を踏み出しているのである。
MONEJIKAN_SUB4 © STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roqueszoom
MONEJIKAN_SUB4 © STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques
「時代を内側から理解したかった」。綿密に描かれた「印象派」と「ベル・エポック」

映像にはオランジュリー美術館やオルセー美術館、アンドレ・マルロー美術館、「印象派」の元となった『印象・日の出』が描かれたル・アーヴルの港、ジヴェルニーのモネの家など、印象派ゆかりの場所も数々登場する。

なにより19世紀のパリの風俗や衣装などは、この時代が好きな人たちにはとてつもなく響くほどに繊細でリアリティがあるし、モネばかりでなく、同時代に活躍した画家――ルノワール、ドガ、セザンヌ、モリゾ、写真家のナダールや当時一世を風靡した女優サラ・ベルナールなどが登場するのもワクワクする。そして各々があたかもそこにいるかのように自然に呼吸をしている感もたまらないのだ。

実際にクラピッシュ監督はこの映画を製作するにあたり、「時代を内側から理解したかった」とし、印象派やモネをはじめ彼らを取り巻く当時の画家たちや19世紀のパリの風俗等々を、約3年をかけて徹底的に調べ上げ、脚本家とともに美術館にも何度も足を運び、美術史の専門家の話も聞いたという。そのリサーチ期間は約3年とか。だからこその説得力だと、なるほど納得するのだ。
© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roqueszoom
© STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques
さらに19世紀の「質感」を出すために、デジタル映像に同時代の写真黎明期に使われた、世界最初のカラー写真の技法「オートクローム」を融合させた画像処理を施したことも、この映画の映像に深みを与えている。「時代物には手をかける価値がある」とクラピッシュ監督が語る通り、できあがった映像は人の手を通したぬくもりが感じられる仕上がり。技術面でも現代と過去が融合したアート作品になっているといえるだろう。

印象派好き、フランス好き、歴史好き、世紀末好き、旅好き、絵画好き、ドラマ好き、映画好き……あらゆる「好き」にきっと響く映画だ。
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『モネと時間旅行』

9月18日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開
c STUDIOCANAL - COLOURS OF TIME - CE QUI ME MEUT - Emmanuelle Jacobson-Roques


配給:セテラ・インターナショナル
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
原題:La Venue de l'avenir/2025 年/126分/フランス/フランス語/日本語字幕:古田由紀子/1:2.35/5.1ch/配給:セテラ・インターナショナル
公式HP:monetojikan.com
コラムニスト:Tomoko Nishio
旅行業界・旅&芸術文化ライター、動物好き。旅行業界誌記者・編集者を経てフリーの旅行ライターに。南仏中世と「三銃士」オタク。歴史とアートに軸を置きつつ、絵画、バレエ、音楽、物語、映画、漫画のロケ地・聖地巡り、海外旅行や小さなお散歩まで、様々な視点で旅を発信。「旅」は生活のなかにもあり。

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