旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2026年9月17日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

「ハレの日」需要狙った高級飲食店が続々、コト消費拡大で本物体験

△「極上海鮮ビュッフェダイニング 銀座四海(よつみ)」で本マグロを解体する様子(東京都中央区で大塚圭一郎撮影)zoom
△「極上海鮮ビュッフェダイニング 銀座四海(よつみ)」で本マグロを解体する様子(東京都中央区で大塚圭一郎撮影)

 きょう開業するこだわりのすし店、高級食材が食べ放題の飲食店、ステーキ専門店、鯛めしを目玉にした日本料理店、有名ホテルに約14年ぶりに復活するフレンチレストランと、首都圏に高級路線の飲食店が続々と誕生している。
 自動車や住宅といったモノ消費よりも、体験消費を重視するコト消費への移行が進む中で、一都三県で回転ずし店などを展開する銚子丸(千葉市)の石井憲社長は「特別な時間や、本物の体験には価値に見合った金額を支払うというメリハリのあるお客様が増えていると思う」と指摘する。
 外食産業は食材の仕入れ価格やエネルギー価格の高騰、人件費の上昇傾向などを背景に「コストが上がっており、デフレ経済下の価格競争とは決別しなければならない」(経営企画担当幹部)という事情も抱える。誕生日や記念日といった「ハレの日」需要を狙い、本物体験を味わえる飲食店がさらに広がりそうだ。

△「鮨 Yasuke 潮彩」ですしを提供する職人(東京都目黒区で大塚圭一郎撮影、プライバシー保護のため画像を一部加工しています)zoom
△「鮨 Yasuke 潮彩」ですしを提供する職人(東京都目黒区で大塚圭一郎撮影、プライバシー保護のため画像を一部加工しています)

 ▽かんぴょうも国内産を提供
 銚子丸は、本格ずしを提供する新業態「鮨 Yasuke 潮彩(すし やすけ しおさい)」を東急電鉄自由が丘駅前の商業施設「自由が丘ミューズスクエア」(東京都目黒区)の4階に2026年9月17日開業する。
 黒糖を飼料に取り入れて養殖した「黒糖真鯛(まだい)」や「黒糖ぶり」、空気や水質の汚染が少ないとされるオーストラリア・タスマニアの近海で養殖されたタスマニアサーモンなど、生産地や餌にもこだわった食材を積極的に採用。すし飯には千葉県多古町産のブランド米「多古米」、かんぴょうは国内生産量首位の栃木県産を使っている。
 石井社長は「店のコンセプトを『からだに、地球に、心地よい』をテーマに、サステナブル(持続可能性)を味わうちょっと贅沢なお寿司としている」と説明。具体的には「黒糖養殖といったこだわりの養殖業も積極的に取り入れることで、天然水産資源の過剰漁獲を防ぎ、計画的な生産によって流通過程のフードロスや、エネルギーの無駄遣いを抑えることができないかと考えている」とし、持続可能性などへの感度が高い自由が丘に出店を決めたと明らかにした。
 店内は海の中を想起させる空間にしており、中央のコの字になったカウンター席では職人が目の前で寿司を握ってくれる。広さは約198平方メートルで、計49席。
 メニューは黒糖真鯛やタスマニアサーモンなど計10貫の「おきまり膳『汐音(しおね)』」が2400円、本マグロ大とろや、タスマニアの天然塩で仕上げた「中とろシーソルト炙(あぶ)り」など「本まぐろづくし(5貫)」が2100円など。オープン記念キャンペーンとして、2026年10月末までは「本まぐろづくし(5貫)」を1750円の特別価格で提供する。

△「鮨 Yasuke 潮彩」の入り口でパネルを持つ銚子丸の石井憲社長(右、大塚圭一郎撮影)zoom
△「鮨 Yasuke 潮彩」の入り口でパネルを持つ銚子丸の石井憲社長(右、大塚圭一郎撮影)

 ▽銀座でタラバガニなどが食べ放題
 栄盛(横浜市)は、北海道直送のタラバガニやアワビ、A5ランク和牛のしゃぶしゃぶ、鉄板焼き、北京ダックなど200種類以上の料理を堪能できるビュッフェ形式の店舗「極上海鮮ビュッフェダイニング 銀座四海(よつみ)」を東京・銀座の商業ビル「銀座ベルビア館」の9階に8月22日グランドオープンした。
 ワンフロア全体に広がる約1048平方メートルの店内は開放的な雰囲気で、生けすを設けてタイやアジ、貝類といった旬の魚介類を新鮮な状態で提供。本マグロの解体を実演するなどライブ感も演出している。客席は370席ある。
 営業時間は午後5~11時で、ラストオーダーは10時となる。アルコールとソフトドリンクも飲み放題の食べ放題コースは11歳以上が1万3200円、4~10歳が6千円、0~3歳は無料。
 栄盛の張徐取締役は「銀座で高級食材を思う存分楽しんでほしい」と呼びかけている。

△ステーキ専門店「叙々苑 ステーキJJ」で提供されるコースzoom
△ステーキ専門店「叙々苑 ステーキJJ」で提供されるコース

 ▽ステーキ専門店を本格展開
 焼き肉レストランを展開する叙々苑(東京都港区)は、ステーキ専門店「叙々苑 ステーキJJ」の新店を横浜駅西口の複合商業施設「ハマボールビルディング」(横浜市西区)の2階に8月19日開業した。東京都内の両国、麻布十番に次ぐ3店舗目となり、創業50周年の節目を迎えてステーキ専門店の展開を本格化させる。
 叙々苑は「焼き肉を通じて培ってきた肉の目利きや仕入れ、調理の技術を生かし、上質なステーキをより気軽に楽しめる新たな食体験を提案する」と説明。和牛、国産牛のサーロインやヒレ、希少部位のシャトーブリアンといった肉質や部位ごとの個性を楽しめるステーキを提供する。
 昼食メニューには、ニュージーランド産リブロースステーキ(160グラム)、ライスまたはトースト、サラダ、スープ、飲み物を組み合わせた「JJステーキランチ」(4200円)などを用意。夕食の和牛サーロインステーキ(150グラム)のコースは8800円からで、オードブルと「叙々苑サラダ」、ホタテのソテー、トウモロコシのポタージュ、ライスまたはトースト、アイスクリーム、飲み物が付く。
 叙々苑の松崎彰取締役兼企画営業部長は「焼肉の叙々苑から、また別の新しいスタイルとして叙々苑のおいしさを皆様にお届けできればいい」と意気込んだ。

△日本料理店「料理屋 大三(だいぞう)」で「鯛めし御膳」の釜のふたを開ける女将の橋田和江さん(神奈川県鎌倉市で大塚圭一郎撮影)zoom
△日本料理店「料理屋 大三(だいぞう)」で「鯛めし御膳」の釜のふたを開ける女将の橋田和江さん(神奈川県鎌倉市で大塚圭一郎撮影)

 ▽愛媛の郷土料理を鎌倉で
 神奈川県鎌倉市で2014年から営業してきた日本料理店「料理屋 大三(だいぞう)」が小町通りに移転し、9月14日にグランドオープンした。パリの経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部全権大使公邸などの公邸料理人を務めた橋田大三氏が腕を振るい、出身地の愛媛県今治市の郷土料理である「鯛めし」を看板メニューとしている。
 昼食の鯛めしを釜飯のスタイルで味わえる「鯛めし御膳」(6千円、予約優先)は1日10食限定で、注文を受けると一人前(1合)の釜で約20分かけて炊きあげる。季節の彩り八寸、茶わん蒸し、メーンディッシュ(刺身、魚料理、肉料理のうち1品)、みそ汁、デザート、ドリンク1杯が付く。
 夕食は完全予約制で、「月替わり旬菜おまかせコース」(1万3200円)は旬の魚介類や前菜盛り合わせ、造り、炊き合わせ、強肴(しいざかな)、ご飯、デザートで構成する。
 移転後の店舗は古民家を再生しており、広さは約149平方メートル。カウンターが7席、テーブルが10席の計17席を設けている。
 日本料理店は敷居が高いイメージをもたれがちだが、ざっくばらんな雰囲気を演出しているのが橋田さんの妻で女将の和江さんだ。和江さんは「私はおしゃべりで、お客様に遠慮しないで過ごしてくださいというスタイルを取っており、気さくで気軽な、敷居の高くない日本料理店というコンセプトを続けていきたい」と笑顔で話した。定休日は月曜日。

△京王プラザホテルが本館44階に開業するフレンチレストラン「メイユール」のイメージ(京王プラザホテル提供)zoom
△京王プラザホテルが本館44階に開業するフレンチレストラン「メイユール」のイメージ(京王プラザホテル提供)

 ▽開業55周年の「一大プロジェクト」
 東京・西新宿の京王プラザホテルは、本館44階にフレンチレストラン「メイユール」を10月23日に開業する。メーンダイニングのフレンチレストランは旧「アンブローシア」の営業を2012年に終了してから約14年ぶりとなり、幹部は「2026年に開業55周年を迎えての一大プロジェクトになる」と明かす。
 店名の由来となったフランス語の「MEILLEUR」は「最高の」や「高所」などの意味があり、44階の高所からの眺望とともに、来店客にとっての「最高の時間」を提供したいとの思いが込められている。営業時間は午後5~10時(最終入店8時半)で、席数は22席。利用年齢は10歳以上となる。
 開業コースは全9品の「メイユール」(3万3000円)と、全7品の「リアン」(2万6千円)。これらのコースに含まれている自慢の料理が、「白甘鯛 生湯葉(なまゆば) コンソメ」だ。高知県・宿毛漁港から届く白アマダイをうろこの食感を残して香ばしく焼き上げ、生湯葉や季節の青菜、黒トリュフ、ユズなどと合わせるという。
 旧「アンブローシア」の営業終了後、京王プラザホテルのシェフは「じくじたる思いだ」と唇をかんでいた。堅調なインバウンド(訪日客)を追い風に宿泊部門が好調な中、晴れて再開する本格派フレンチレストランが「最高の」時を刻むことができるのか注目されそうだ。
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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