zoom 9月に入り、二十四節気では7日に「白露」を迎えました。暑さが少しずつ和らぎ、秋へ向かう頃ですが、不安定な空模様と残暑の蒸し暑さはまだ続くのでしょうか。一方、こんな時期だからこそ、涼しい展示室で、やきものをゆったり眺める時間は心地よく感じられます。
東京・港区の根津美術館で開催中の企画展「やきもの名品紀行―中国・日本・朝鮮半島―」は、約2,300件におよぶ館蔵品から選ばれた名品を通して、中国、朝鮮半島、日本のやきものを紹介しています。
何百年、何千年も前に土と火から生まれた器と向き合う。静かな時間の中で、遠い時代の暮らしや美意識に思いを馳せるひとときは特別です。
国別に観ていきましょう。
zoom 展示室1は中国のやきものです。
1万年の歴史を誇る中国陶磁。 今回54件が展示されています。 古いものは紀元前3世紀で、時代により、さまざまな表情があるのに驚きます。
11世紀、北宋時代の「青磁牡丹文水注・承盤」は、酒を温めるための水注と承盤で、新たな収蔵品だそう。 日々使う道具に美しさを求めた、当時の感性が静かな青磁の色合いに表れています。
16世紀の「五彩宝相華文瓶」のように、赤や緑、金彩で器面を華やかに彩った作品もありました。
また、学芸員さんが「美しい!」と紹介してくれたのは、18世紀、清の時代、景徳鎮窯の「青地白花木蓮文皿」。 近づいて目を凝らして見ると、瑠璃色の地に純白の木蓮の花が浮かび上がり、葉っぱの葉脈まで表現されています。 精緻な美しさにため息が出ました。
zoom 展示室2は日本のやきものです。
中国や朝鮮半島から伝わった技術や美意識を受け入れながら、独自の感性を重ねてきた歴史がある日本のやきものは、実に多彩です。
例えば、尾形乾山の「銹絵染付金彩絵替土器皿」は、その魅力を伝える一品。 手捏ねによる素朴な土器皿に、鉄絵具、呉須、金彩で四季の自然を描いた姿は、器でありながら一枚の琳派絵画のよう。 華やかな彩色の中に、季節を取り込む日本独自の美意識が感じられました。
zoom 展示室5は朝鮮半島のやきものです。
15世紀の「粉青象嵌牡丹文厨子」に目を引かれました。 器面を彫り、白土を埋め込んで文様を表す象嵌技法による作品です。 さらに興味深いのは、これが仏像や経典などを納める「厨子」であること。 他にあまり類を見ない形だそうですが、清らかで実用性が尊ばれたという朝鮮半島のやきものは食事や酒のための道具にとどまらず、祈りにも寄り添っていたのですね。
中国の華やかな色彩、朝鮮半島の土の質感や象嵌、日本の季節感や自然へのまなざしなど、それぞれの土地で育まれた美の違いが浮かび上がります。 青磁の淡い色、釉薬の艶、文様、器のかたち。 表面のわずかな揺らぎや手の跡まで感じられる細部に目を向けるうちに、器がつくられた土地の気候や暮らし、信仰、人々の美意識が見えてくる気がします。
zoom 展示室6では、茶の湯で珍重された「名物茶陶」も紹介されています。 朝鮮半島でつくられた茶碗が日本の茶人たちに愛され、「名物」として受け継がれてきたことからも、やきものが国境を越えて新たな価値を持ったことがわかります。
食卓の器、酒を楽しむ道具、祈りのための厨子、茶人が愛した茶碗。 数ある名品の中から自分の好みを探してみると、展覧会はさらに身近なものになるかもしれません。
鑑賞の後は、根津美術館の庭園へ。
都会の真ん中とは思えない緑豊かな庭を歩けば、池を渡る風に、虫の音に、そこまで近づいている秋の気配を感じられることでしょう。 庭園内のカフェ「NEZUCAFÉ」にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
また、ショップでは、進化した「そんちゃんトートバッグ」に注目を。 やきものを眺めた余韻とともに、小さな楽しみを持ち帰るのもおすすめです。
zoom企画展
やきもの名品紀行
中国・日本・朝鮮半島
2026年8月15日(土)~10月12日(月・祝)
概要
会期
2026年8月15日(土)~10月12日(月・祝)
休館日
毎週月曜日 ただし9月21日(月・祝)、10月12日(月・祝)は開館、9月24日(木)休館
開館時間
午前10時~午後5時(入館は閉館30分前まで)
入館料
※オンライン日時指定予約
一般 1400円
学生(大学生以上)600円
*障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、高校生以下は無料
*学生料金の適用ならびに高校生以下の無料入館の際は、学生証の提示が必要
*当日券は上記料金に一律200円プラス
※詳細は根津美術館のHPでご確認ください。
https://www.nezu-muse.or.jp/
