旅の扉
- 【連載コラム】地球に優しい旅しよう!
- 2014年2月7日更新
- 自然と動物好きなトラベルジャーナリストの旅コラム
travel journalist:平野 美紀
ペンギンの島・フィリップ島で、環境と野生動物保護を考える旅
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- ペンギン・パレードで有名なフィリップ島の隠れた努力とは?
- 世界一小さなリトル・ペンギンが、砂浜をヨチヨチと列を成して歩くキュートな「ペンギン・パレード」が人気のフィリップ島。実は、ペンギンたちを守るレンジャー活動のお手伝いをするボランティア体験ができます。先日、私自身も参加してきました!その様子をご紹介します。
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- 雨上がりのサマーランド半島。ここは島内最大のペンギン営巣地。
- ■環境と野生動物保護を体験できるボランティア・プログラム
フィリップ島で行われている様々な保護・保全活動については、エコナビの「オーストラリアの野生動物保護・現場編(3)」でもご紹介しましたが、あの華やかな観光事業の裏で、小さなことからコツコツと継続している地道な活動があることを知り、本当に目からウロコの思いでした。その活動内容の詳細は、そちらでお読みいただくとして…
ここでは、レンジャー活動のお手伝いをするボランティア・プログラムがどんなものだったか、私の体験をご紹介したいと思います。ちなみに、これは有料のボランティア体験プログラムで、誰でも参加可能です。
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- 雑草といえども元々あった固有種のみの自生を目指すフィリップ島。
- ■1日からできるボランティア体験
今回私が体験したボランティア・プログラムは、1泊2日。期間は、参加者の都合に応じてフレキシブルに設定できます。
まず、島に到着して最初にやったのは、野生動物保護の要ともいえる、動物病院の見学です。ここで、数年前にあったタンカーからの油流出事故の際などに、どのようにペンギンたちを救助したか、また、島内の野生動物たちが傷ついて運ばれた際にどのように対処するのかを学びました。そして、ボランティアたちが参加して制作し、設置されたペンギンの巣箱や島内各所の見学へ。
見学した場所は、かつて住宅地だったところ。その場所を元通りの姿に戻すまでの苦労話は、本当に印象的でした。住民たちが持ち込んだ外来種の植物をひとつひとつ取り除き、新たに元々その地にあった植物を植える作業は、気が遠くなるような時間と労力が必要です。現在では、すべての建物が撤去され、自然環境はかなり回復してきましたが、レンジャーたちのたゆまぬ努力は、これからもまだまだ続くのです。
この日は生憎の天候で、ペンギン巣箱の制作&設置作業はできませんでしたが、代わりに私がやったのは、ペンギンを救助するのに使う誘導ネットの制作。これは、油流出事故の際に大いに役立つものです。
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- 一本一本手作業で外来種の雑草を取り除くレンジャーのアンディ。
- そして、島内に自生する固有種の雑草の摘み取りと植え付け作業も行いました。摘み取った雑草は、島内の種苗場で増やし、来種の植物を取り除いた後に植えるのだそうです。パッと見ただけでは、単なる雑草なのですが、外来種の雑草ではなく、本来その土地に生えていた固有の雑草を植えることで、本来の生態系を取り戻すために行っているのです。
一夜明けた翌日は、海岸へと足を運び、外来種の雑草取り。できる限り、化学的な除草剤を使わない方針のため、見える部分はひとつずつ丁寧に、手作業で根っこごと抜き取ります。こうしたひとつひとつの地道な作業の積み重ねが、フィリップ島の自然を本来あるべき姿へと回復させ、一度は危機的状況にあったペンギンの個体数も、驚くほど増加したのだそうです。
「ペンギン・パレード」という華やかな観光の一面を見ただけでは決してわからない、地道な環境と野生動物保護の活動を自ら体験し、その大変な作業を知れば知るほど、毎日続けているレンジャーのみなさんには、本当に頭が下がる思いでいっぱいでした。
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- 林に入って木の上をくまなく見渡す、野生のコアラ探しは楽しい!
- ■コアラ探しやバードウォッチング、ペンギン・パレードのお楽しみも!
このボランティア体験で、私が個人的に一番楽しかったのが、野生のコアラの生息数カウント。フィリップ島では、コアラの個体数を維持するため、保護センターを作っていますが、それ以外の場所に、野生のコアラがいったいどのくらい生息しているのかを調査する仕事です。これがワクワクするほど楽しい!
それぞれ担当区域を決め、林の中に入って木の上を確認しながら、コアラを探します。私は、林に入って間もなく、一頭見つけることができました!見つけたコアラは、保護センターから逃げ出した個体かどうか確認し、ラベリングされます。(ちなみに、私が見つけたコアラは、新たに発見した個体だったようです)
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- 数多くの鳥たちが生息するフィリップ島の湿地帯。野生の黒鳥も間近で見られる。
- また、到着日の夕方と翌日の早朝には、新しく始まったバードウォッチング・ツアーにも参加しました。今、フィリップ島は、欧米のバードウォッチャーから注目の的。ラムサール条約にも登録された湿地帯には、数多くの鳥たちが集っています。このバードウォッチング・ツアーは、島内の鳥類調査にも貢献しているそうで、なにより、フィリップ島の知られざる美しい場所へ案内してもらえるのが魅力!ツアーの詳細については、こちらの記事でご紹介しています。
そして、夜はフィリップ島最大の見どころでもある、ペンギンパレードへ。これは、ボランティア・プログラムには入っていなかったのかもしれませんが(要確認)、この島へ来て、ペンギンパレードを見ずには帰れません(笑)。
日没と共に、波に乗って沖から戻ってくるペンギンの群れ…見た目には黒い点々の塊…を見つけた時は、本当に感動!私たち見学者が待つ砂浜へ降り立つまでには、結構時間がかかるのですが、ようやく岸へ到着しても、波からうまく上がれずに立ち損ねて、ずっこけて転ぶペンギンもいたりして、いつまで見ていても飽きません(笑)。
暗くなるにつれ、たくさんのペンギンたちが海から戻ってきて、大勢の人間が見ているのもお構いなく、ヨチヨチと巣へと戻っていく姿は、本当にキュート!辺りが真っ暗になっても、全てのペンギンが戻ってくるまで、いつまでもいつまでも行進を見ていたいと思うほどでした。
※フィリップ島のレンジャー活動の詳細と、そのお手伝いをするボランティア体験プログラムについては以下のコラムでどうぞ♪
▼エコナビ「現場編(3)野生動物と共存するために-ペンギンの島、フィリップ島の挑戦-」
Special Thanks to: Tourism Victoria. and Phillip Island Nature Parks.