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  • 2026年9月8日更新
リスヴェル旅コラム
Editor:リスヴェル編集部

イルカの吐息が聞こえる!? 壱岐の一日一組限定キャンプ

イルカのいる入り江で一晩を過ごすzoom
イルカのいる入り江で一晩を過ごす
壱岐島北部の静かな入り江にある「壱岐イルカパーク&リゾート」。ここには、閉園後のパークに一日一組だけが宿泊できる「Dolphin Park Camp」がある。今回は昼間のパークを訪れ、イルカたちとの接し方について話を聞いた。宿泊はしていないが、テントのすぐそばはイルカたちが暮らす海。夜には、イルカが水面に浮上して呼吸する音が聞こえるほど近く、その存在を身近に感じられるという。イルカを見て帰るのではなく、同じ入り江で一夜を過ごす。そんな壱岐ならではのキャンプと、イルカたちとの向き合い方を紹介したい。
昼間は家族連れが集うイルカパークzoom
昼間は家族連れが集うイルカパーク
壱岐イルカパーク&リゾートは、天然の入り江を仕切って造られた海浜公園である。取材に訪れた夏の日、パークには子ども連れの家族が次々と訪れ、カフェやウッドデッキで思い思いの時間を過ごしていた。イルカとのふれあいを楽しみに順番を待つ子どもたち、海を眺めながら会話を楽しむ人々。園内には、一般的な水族館とは異なる自由で開放的な空気が流れていた。

楽しみ方はイルカとのふれあいだけではない。自然豊かな海と山に囲まれた園内では、カフェで休憩したり、釣りやバーベキュー、SUP、カヤックなどを楽しんだりすることもできる。大海原に漂いながら風や波を感じるSUPは、「海の瞑想」とも呼ばれているそうだ。愛犬と一緒に海へ出られる「Dog SUP」も用意されている。犬用のライフジャケットを持参すれば、壱岐の海をワンコと一緒に楽しめるのもうれしい。短時間でイルカを見て次の観光地へ向かうのではなく、海辺でのんびりと一日を過ごせる場所なのである。

さらに、閉園後のパークに宿泊できる「Dolphin Park Camp」は一日一組限定。テントやタープなどの機材には、アウトドアブランド「Snow Peak」の製品がそろう。料金は1人33,000円から。壱岐牛や地元食材を使った夕食、キャンプ用品のレンタル、宿泊者限定のイルカとのふれあいなどが含まれている。設営や撤去、夕食の準備はスタッフが行うため、キャンプに慣れていない人でも参加しやすい。内容や料金、予約条件は変更される場合があるため、予約時に確認してほしい。
性格が一頭ずつ違うイルカたちzoom
性格が一頭ずつ違うイルカたち
取材時、壱岐イルカパークには4頭のイルカが暮らしていた。水面から顔を出すイルカを眺めていると、どのイルカも同じように見えるかもしれない。しかし、日々そばで接しているスタッフによれば、顔の色や形、体格、性格は一頭ずつまったく異なるという。好奇心旺盛なイルカもいれば、慎重なイルカもいる。遊び好き、食いしん坊、マイペースなど、それぞれに個性があり、人との距離の取り方も違う。

もちろん、日によって気分や体調も変わる。昨日は喜んで参加した遊びに、今日は気が向かないこともある。途中で遊ぶのをやめ、別の場所へ泳いでいってしまう場合もあるそうだ。それを「言うことを聞かない」と捉えるのではなく、イルカがいま何を感じ、何をしたいのかを考えることが、ここでの接し方の基本である。

イルカとのプログラムを見学するときも、ジャンプの高さや動きの巧みさだけに注目するのではなく、それぞれの表情や反応を見てみたい。スタッフをじっと見つめるイルカ、水面近くで様子をうかがうイルカ、勢いよく泳ぎ寄ってくるイルカ。一頭の生き物として注意深く見ていると、少しずつ違いが分かってくる。その個性に気づくことが、イルカとの距離を縮める第一歩なのかもしれない。
トレーニングタイムは遊びと筋トレの時間zoom
トレーニングタイムは遊びと筋トレの時間
一日5回行われる「トレーニングタイム」では、イルカが水面から高く跳び上がる姿に歓声が上がる。しかし、ここで行われているジャンプには、観客に見せる「芸」とは異なる意味もある。広い入り江で暮らしていても、野生のイルカと比べれば泳ぐ距離や運動量は限られる。そのため、ジャンプを取り入れ、楽しみながら体を動かすことは、筋力と健康を保つためにも大切なのである。

人間も、運動不足になれば筋力が低下する。イルカも同じであり、体を動かす時間はいわば遊びを兼ねた筋力トレーニングである。ただし、決められた動きを一方的に繰り返させるのではない。その日の体調や気分、反応を見ながら、イルカが自ら参加したくなるように働きかけているという。

ジャンプをしなかったり、途中で泳ぎ去ったりすることも、イルカが自分の意思を示している証しである。いつも同じ内容を確実に披露することより、一頭ずつの様子を見ながら進めることが優先される。華やかなジャンプの背景に、日々の健康を支える運動と、イルカの意思を尊重するスタッフのまなざしがあることを知ると、その光景も少し違って見えてくる。
大切なのはコミュニケーションと信頼関係zoom
大切なのはコミュニケーションと信頼関係
壱岐イルカパーク&リゾートの運営責任者、高田さんは、イルカとの間で大切なのは、相手を思い通りに動かすためのトレーニングではなく、日々のコミュニケーションだと話す。言葉を交わせないからこそ、泳ぎ方や表情、視線、近づいてくる距離など、小さな変化を注意深く観察する必要がある。

コミュニケーションが特に重要になるのが健康管理である。例えば採血や身体の確認を行う際、力ずくで押さえつければ、イルカに恐怖や不信感を与えてしまう。普段から触れられることに少しずつ慣れてもらい、自ら身体を預けて協力できる関係を築いておくことで、イルカとスタッフ双方の負担を減らすことができる。

もちろん、信頼関係は一朝一夕に生まれるものではない。毎日顔を合わせ、その日の反応を受け止めながら接する積み重ねが必要である。思い通りの反応が返ってこないときも、その理由をイルカの側から考えてみる。ここでは、イルカを人間に従わせるのではなく、一頭ずつ異なる意思を持つ相手として向き合う姿勢が大切にされている。ふれあいの楽しさだけでなく、その背景にある関係にも目を向けたい。
イルカと時間を過ごす場所へzoom
イルカと時間を過ごす場所へ
夕方になり、昼間の来園者が帰った後のパークは静けさに包まれる。「Dolphin Park Camp」の宿泊者は、閉園後の入り江でイルカたちと同じ時間を過ごすことができる。テントのそばに広がるのは、彼らが暮らす海。夜には、イルカが水面に浮上して呼吸する音によって、姿が見えなくても、すぐ近くにいることを感じられるという。イルカとの特別な時間は、触れたり、一緒に泳いだりすることだけではない。海から聞こえる水音に耳を傾け、彼らの気配を感じながら静かに過ごすことも、一つの関わり方である。人の姿が少なくなった入り江で、イルカたちはどのように過ごしているのだろう。そんなことを想像しながら迎える夜と朝は、昼間の短い見学では得られない記憶を残してくれるに違いない。

なぜここにイルカパークがあるのか?
壱岐ではかつて、漁業被害を背景にイルカの駆除が行われ、1980年には漁業者と動物保護活動家の主張が激しく衝突した「壱岐イルカ事件」が起きた。その歴史を持つ島に、1995年、市営のイルカパークが開園した。壱岐とイルカの関係は、決して単純な物語ではない。施設の再生を引き受けた高田さんも、もともとはイルカの飼育に抵抗があったという。それでも、今ここにいるイルカの命に向き合い、人間が一方的に指示するのではなく、互いの意思を読み取りながら、尊重と信頼に基づく関係を築こうとしている。2020年からは米国フロリダ州のドルフィン・リサーチ・センターと連携し、「リレーションシップ・ベース・トレーニング」を導入した。イルカについて分かったつもりにならず、その行動や感情、健康について学び続ける試みである。ここでイルカと過ごすことは、異なる存在とどのように向き合い、コミュニケーションを育むのかを、人間が学ぶ時間でもある。

壱岐イルカパーク&リゾート公式サイト
https://irukapark.com/activity/camp/

神社や古代の歴史、島の味、海辺で過ごす時間、アクセス情報まで。壱岐の旅に役立つさまざまな情報を、旅特集「まだ知らない壱岐へ」で紹介しています。
Editor:リスヴェル編集部
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