旅の扉
- 【連載コラム】【厳選旅情報】編集部がみつけた、旅をちょっぴり豊かにするヒント
- 2026年8月29日更新
- リスヴェル旅コラム
Editor:リスヴェル編集部
オリーブ畑の向こうに壱岐の海。「もったいない」から生まれた島のものづくり
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- 瓦屋根の門とオリーブの木が迎える、壱岐オリーブ園の入口
- オリーブ畑の向こうに壱岐の海を望む素敵な場所があると聞き、「壱岐オリーブ園」を訪れた。勝手に地中海のような雰囲気の農園を想像していたため、瓦屋根と純和風な門構えは意外だった。門をくぐり、庭の先へ進むと、斜面いっぱいにオリーブ畑が広がり、その向こうに壱岐の海が見えた。なるほど!この景色は美しい。そして、ここでは国産にこだわったオリーブオイルだけでなく、オリーブの葉まで商品にしているという。そのものづくりについて話を伺った。
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- オリーブ畑の向こうに望む壱岐の海
- 壱岐オリーブ園でオリーブ栽培が始まったのは2010年。きっかけの一つは、島で増えていた遊休農地だった。もともと不動産業などを手がける会社だが、高齢化により農業を続けられなくなった人たちから、家だけでなく田畑も一緒に引き取ってほしいという相談が増えていたという。そんな農地の活用方法を模索するなか、約300本のオリーブを植えたところから始まった。現在では、栽培面積は約15ヘクタール。7,000本を超えるオリーブが育ち、イタリア系を中心に約12品種を栽培している。展望デッキに上がると眼下にはオリーブ畑が広がり、その先には海が見えた。取材した日は真夏の強い日差しが照りつけていたが、屋根のある展望デッキには潮風が通り抜けて心地よく、しばらくここで景色を眺めていたくなる。
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- オリーブ茶やリーフパウダー、スキンケア用品など、葉を生かした商品が並ぶ
- 壱岐オリーブ園が最初に商品化したのは、オリーブオイルではなく「葉」だった。オリーブは植えてすぐにたくさんの実をつけるわけではない。成木になるまで10年ほどかかるが、それでも毎年剪定が必要。当初は捨てていた大量の葉や枝がもったいなく、何かに使えないだろうかと考えたことが商品開発の始まりだった。調べていくうちに、オリーブの葉にはポリフェノールの一種である「オレウロペイン」が豊富に含まれていることを知り、試行錯誤を重ねながら商品化に取り組んだ。現在ではオリーブ茶やスキンケア用品など、さまざまな商品に活用されている。剪定した枝も、コースターや犬用の噛むおもちゃなどに生まれ変わる。
剪定した葉をそのまますべて商品化できるわけではない。農薬を使わずに栽培しているため、虫食いやカビ、変色などを一枚ずつ確認し、使える葉を選別する。商品に使えるのは全体の2~3割ほど。効率だけを考えれば、もっと簡単な方法もあるのかもしれない。それでも品質のよいものだけを選び、手をかけて商品にする。説明を聞いているうちに、併設ショップに並んでいた商品を見る目が少し変わってきた。見学の途中では、冷たいオリーブ茶もいただいた。抹茶とも青汁とも日本茶とも違う、ほんのり青みを感じるさっぱりとした味わい。想像していたような強い苦みはなく、暑い日に冷たくして飲むとおいしい。カフェインも含まれていない。オリーブの葉がこんなに身近な飲み物になることも、新しい発見だった。
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- 壱岐産エキストラバージンオリーブオイル
- もちろん、オリーブオイルもテイスティングさせてもらった。口に含むと、爽やかな香りがパッと広がる。それでいて味わいはマイルドでやさしく、強い辛みは感じない。個人的にとても好きな味だった。価格を見ると、100ミリリットルで3,850円。普段使いのオリーブオイルとして考えれば、決して気軽に買える値段ではない。それでも、私は一本買って帰ることにした。その理由は、味だけではなかったのだと思う。壱岐オリーブ園では、実を手で摘み、人の目で熟度や状態を確かめながら収穫している。品種によって実が熟す時期も違うため、一斉に収穫するのではなく、それぞれの状態を見ながら順番に摘んでいく。
オリーブは収穫後、時間が経つほど酸化が進む。そのため、収穫した実は24時間以内に搾油する。たくさんつくることよりも、品質を優先する。その姿勢が、試飲したオイルの香りと味につながっているのだろう。そして、オリーブオイルは農産物。同じ品種でも、その年の気候や天候によって風味が変わる。「ワインのように、その年ごとの個性として楽しんでほしい」と教えてくれた。土地で育ったものを、その土地で味わい、つくり手から背景を聞いて選ぶ。そうすると、値札に書かれた数字だけでは分からなかった価値が見えてくる。旅先での買い物には、そんな楽しさもある。
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- 日本庭園の先に広がるオリーブ畑
- 葉を捨てずに商品にする。その考え方は、オリーブオイルを搾った後にも続いている。国産オリーブの場合、果実から採れるオイルは重量の1割ほど。残りの大部分は、水分や果肉などの残渣になるという。これを捨てるのも「もったいない」と考え、農園で鶏を飼い始めた。オリーブの残渣や葉の粉末を飼料に加え、鶏から出たふんは堆肥にしてオリーブ畑へ戻す。さらに農園の周囲にある竹も伐採してチップにし、鶏舎の敷材やオリーブ畑の雑草対策、土壌改良などに利用している。オリーブの葉、搾りかす、鶏、鶏ふん、竹。それまで捨てられていたものや、使い道のなかったものが、別の何かの資源になっていく。興味深かったのは、最初から「SDGs」や「循環型農業」を掲げて、この仕組みをつくったわけではなかったことだ。捨てるのはもったいない。何かに使えないだろうか。そのつど考え、試してきたことが少しずつつながり、結果として資源が循環するようになった。「無駄にしないこと」と「良いものをつくること」。どちらか一方ではなく、その両方を追いかけているところに、壱岐オリーブ園のものづくりの面白さがあるように感じた。
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- オリーブ葉パウダーを使ったオリーブアイス
- 次に来たら、忘れずに食べたいもの
そして、ひとつ心残りがある。ショップには、オリーブリーフパウダーを使った「オリーブアイス」があったのだ。オリーブの葉のほろ苦さに、だけど後味サッパリの健康アイス、と書かれている。なぜ食べなかったのだろう。コロナ禍以前には、園内でオリーブオイルを使った料理を提供するカフェも運営していたそうだ。現在は別の場所で新たなカフェを開く計画もあるという。実現すれば、壱岐で育ったオリーブを、今度は料理として味わう楽しみも増えそうだ。オリーブオイルを買うだけなら、旅に出なくてもできる。でも、オリーブが育つ畑を歩き、つくり手の話を聞き、味わってみると、その一本の背景まで見えてくる。次に壱岐を訪れたら、オリーブアイスは忘れずに食べよう。
壱岐オリーブ園株式会社
公式サイト:https://ikiolive.jp/