旅の扉
- 【連載コラム】【厳選旅情報】編集部がみつけた、旅をちょっぴり豊かにするヒント
- 2026年8月26日更新
- リスヴェル旅コラム
Editor:リスヴェル編集部
壱岐まで食べに行きたい!皮ごと味わう「壱岐王様バナナ」
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- おいしいものには、人を旅に向かわせる力がある。私はマンゴーがおいしい季節になるとタイへ行きたくなる。東南アジアへ行くならドリアンのシーズンを選ぶし、冬の台湾なら釈迦頭(シャカトウ)も楽しみのひとつ。では、バナナを食べるために旅をすることはあるだろうか? バナナは一年中スーパーに並び、産地も種類も選べる身近な果物だけに、それが旅の目的になるとは想像したこともなかった。しかし、この夏に壱岐島で出会った「壱岐王様バナナ」は、その考えを変えた。このバナナの存在を知ってしまったことで、壱岐島を再訪する理由がひとつ増えた。
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- 壱岐にバナナの楽園があった
- 8月のある真夏日、壱岐島で農薬を使わずに育てたバナナのジュースが飲めると知り、芦辺町にある「バナナファーム壱岐」を訪れた。農園の入り口には、バナナジュースやバナナソフトクリームなどを提供する「壱岐王様8710(バナジュー)」の店舗がある。地域の家族連れがひっきりなしに訪れて賑わう中、バナナジュースとバナナ饅頭が付いたバナナ園のガイド付き見学に参加した。バナナは病気に弱いデリケートな植物のため、ハウスへ入る前には靴底を消毒する。苗の根を傷めないよう黒いシートの上を歩き、植物には触れないのがルールだ。準備を整えて、いよいよバナナハウスへ。
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- バナナは木じゃない!驚きの連続
- バナナハウスに入った最初の印象は、「あれ、意外と暑くない!」だった。日差しを遮る黒いシェードで覆われ、サイドは網状になっているため風が通り抜ける。そしてバナナの背丈も思ったほど高くなく、手を伸ばせば届きそうなところに青々とした実がついている。
ところで、バナナは木なのか、草なのかご存じだろうか?
実はバナナは草本植物。茎を切っても木のような年輪はなく、タケノコのように葉が何重にも巻かれて筒状になっているという。見た目は立派な木のようなのに、その正体は巨大な草なのだ。一房には150〜250本もの実がつくこともあると聞き、「草なのに、よくこれだけのバナナを支えられるものだ」と感心してしまった。さらに驚いたのが、大きな葉を手で引っ張ると簡単に裂けてしまうこと。これは弱いからではなく、強い風を受け流すためだという。大きな葉をあえて裂けやすくすることで、風をまともに受けず、株ごと倒れるのを防いでいるのだそうだ。
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- この巨大な紫色のものがバナナの花
- ハウスの中でひときわ目を引くのが、青いバナナの房の先から垂れ下がる巨大な紫色の花苞だ。大きな花びらのような部分を一枚めくると、その内側には小さなバナナの実を作る花がずらりと並んでいる。さらに一枚めくると、また次の実が現れ、それがやがて大きな房へと成長していく。この日は、役目を終えた花を切り取る作業も間近で見せてもらった。
植え付けから10カ月ほどすると40枚ほどの葉が出て、やがて一回り小さな「止め葉」が現れる。すると、その中心から花苞が顔を出し、実をつけ始めるという。普段何気なく食べているバナナが、こんなふうに育っていくとは知らなかった。
ハウスには、頼もしい助っ人もいる。いつの間にか住み着いたアマガエルだ。小さな虫を食べてくれるそうで、スタッフは「バナオ」「バナミ」と呼んでいる。農薬を使わないから虫がやって来て、その虫を食べるカエルも暮らしている。ハウスの中では、そんな小さな生態系も生まれていた。
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- 一度実ったら、次の世代へ
- たくさんの実をつけるバナナだが、一つの株が実をつけるのは一生に一度だけ。収穫を終えると地上10センチほどのところで切り倒され、その役目を終える。しかし、それで終わりではない。地下茎から次の株が伸び、新しい世代が育っていく。
そのまま増やし続けると栄養を奪い合い、大きな実がならなくなるため、2メートル四方の区画に2〜3本だけを残す。増えすぎた株は間引いたり、株分けして別の区画へ植え直したりしながら育てている。6年前に150本から始まった苗は現在約540本まで増え、年間約2万本のバナナを収穫しているという。
ここで育てられているのは「グロスミッチェル」という品種。現在スーパーなどで一般的に見かけるキャベンディッシュとは異なり、かつて「台湾バナナ」として日本でも親しまれていた品種だ。糖度は22〜25度になることもあり、キャベンディッシュの18〜20度に比べて高いという。
一通りバナナ園を見て回った後は、お待ちかねの冷たいバナナジュース。食べ頃に収穫したバナナを冷凍しているため、いつ訪れても味わうことができる。ひと口飲んで驚いたのは、ただ甘いだけではないこと。ねっとりとした濃厚さの奥に、爽やかな酸味がある。牛乳だけで割っているというジュースは、しっかり甘いのに後味はすっきり。このひと口で、生の壱岐王様バナナも食べてみたくなる!
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- 食べられなかった。だから、もう一度壱岐へ
- そもそも、このバナナづくりが始まったきっかけは、バナナが大好きなお孫さんに安全でおいしい、新鮮なバナナを食べさせたいという祖父母の想いだった。その想いから始まった取り組みが、今では壱岐の新しい特産品づくりにもつながっている。
農薬を使わずに育てられた壱岐王様バナナは、完熟すると皮がキャベツほどの薄さになり、皮ごと食べられるという。おすすめは、まず一本を普通にむいて果肉だけで味わい、もう一本を皮ごと食べること。皮そのものが甘いわけではないが、シャキシャキとした歯ごたえがあり、ねっとりとした果肉と一緒に食べることで異なる食感を楽しめるそうだ。
そんな話を聞いたら、ますます食べたくなる。
ところが、この日は食べ頃の生バナナのバラ売りがなかった。念願の「皮ごと」はお預けとなった。聞けば、農園を訪れて実際に食べた人が「もう一度食べたい」と予約していくことも多く、来年の夏まで予約が入っているという。現在は月に2~3回程度収穫したバナナを発送している。
バナナを育てて販売するだけではなく、ハウスを観光農園として開放し、ジュースやお菓子などの商品も開発する。そこには、バナナをきっかけに壱岐へ足を運んでもらいたいという思いもある。バナナが旅の目的になるなんて、ここへ来るまでは考えたこともなかった。でも、食べられなかったとなれば、なおさら食べてみたい。次回はバナナの収穫時期を確認してから壱岐へ行こうと思う。今度こそ、完熟した壱岐王様バナナを皮ごとかじるために。気になる値段は公式サイトでご確認を。
バナナファーム壱岐
公式サイト:https://www.cosmo-farm.co.jp/