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  • 2026年8月26日更新
リスヴェル旅コラム
Editor:リスヴェル編集部

麦焼酎発祥の地で“もったいない”を“美味しい”へ変える挑戦

暖簾の看板が趣のある壱岐の蔵酒造zoom
暖簾の看板が趣のある壱岐の蔵酒造
麦焼酎発祥の地と言われる壱岐島まで来たら、「壱岐の蔵酒造」を訪れたい。伝統的な壱岐焼酎の製法を守りながら、いまこの蔵では、島で捨てられていた農産物を新たな一杯へと生まれ変わらせる挑戦が始まっている。

壱岐焼酎は、朝鮮半島から伝わった蒸留技術を起源としている。当時、対馬では山が多く米の生産が限られていた一方、壱岐では大麦が豊富に収穫されていた。江戸時代、重い年貢によって米が貴重だった壱岐では、島で採れた大麦を主原料とし、米麹と組み合わせる製法が生まれた。その後、先人たちが試行錯誤を重ね、米麹1に対して大麦2という割合にたどり着き、この伝統的な製法が現在まで受け継がれている。

1899年の酒税法施行以降、壱岐には55軒もの焼酎蔵があったが統廃合の後、1984年に12蔵のうち6蔵が集まって壱岐焼酎協業組合を設立。「壱岐焼酎を全国へ広めたい」という思いから2010年に「壱岐の蔵酒造」へ社名を変更し、新しい挑戦を続けている。現在、壱岐には7つの酒蔵があり、伝統的な「米麹1:大麦2」の製法を守り続けている。
シェリー酒の古樽で熟成している焼酎zoom
シェリー酒の古樽で熟成している焼酎
焼酎の蒸留方法には、昔ながらの常圧蒸留と、気圧を下げて低温で蒸留する減圧蒸留がある。常圧蒸留は通常の気圧下で蒸留する。モロミを約95℃で沸騰しアルコールを蒸発させるため、原料由来の香りや旨味がしっかり残る。減圧蒸留では気圧を下げて蒸留するため、約45℃程度で蒸留でき、すっきりとした飲み口で軽やかな酒質になる。同じもろみを使っていても、蒸留方法が違うだけで味や香りは大きく変わる。さらに樽熟成を行うことで、焼酎は琥珀色になり、ウイスキーのような風味が生まれる。また、麹菌には白麹や黒麹などがあり、その種類や酵母を変えるだけでも香りや味わいは大きく変化する。
入り口に並ぶ甕zoom
入り口に並ぶ甕
壱岐の蔵酒造の代表取締役・石橋福太郎さんによると、同社ではレギュラーの樽熟成商品では3~5年熟成させて、長期熟成焼酎として商品化している。甕熟成の焼酎では20年近く熟成させているものもあり、毎年、熟成年数を記した商品を数量限定で販売している。焼酎造りは、秋から春にかけて行われる。仕込み量によっては秋から始める年もあれば、年明けの1月から始める年もあるが、私が訪れた夏場は空気中の雑菌が多くなるため、麹菌や酵母を扱う焼酎造りには適していないということで、製品管理や設備の清掃、点検、メンテナンスが中心に行われていた。
壱岐焼酎の発酵タンクzoom
壱岐焼酎の発酵タンク
小型、大型の発酵タンクも見せてもらった。今回は中を見ることはできなかった仕込み期間中はモロミを見ることもできるそうだ。タンクには冷却用のジャケットが巻かれ、温度が細かく管理されている。中には昭和45年製と記されたタンクもあり、仕込みを行わない期間も定期的なメンテナンスが欠かせないという。

コロナ禍で見つけた新しいチャレンジ
また、ジン造りに使用するボタニカル保管庫も見せてもらった。アスパラバス、イチゴ、柚子などさまざまな野菜や果物が冷凍されている。収穫時期が異なる原料を一年通して使用できるようマイナス20°で凍らせて保管していた。この時は「焼酎蔵でジン?」と不思議に思っていた。最後に瓶詰め工程も見学した。一升瓶、720ml瓶、900ml瓶などの瓶詰めは外部から虫などが入り込まないよう陽圧された充填室というところで行われ衛生管理が徹底されていた。
隣接の売店「IKINOKU・LABO」zoom
隣接の売店「IKINOKU・LABO」
蔵見学の締めくくりには、隣接の売店「IKINOKU・LABO」で壱岐焼酎の試飲ができる。原料は同じだが、常圧蒸留と減圧蒸留によってどう味が変わるのかを比べられる。スペインから取り寄せたシェリー酒の古樽の中で熟成させた「IKIKKO DELUXE」、中国で「不老長寿の仙草」と珍重された植物由来の生薬「霊芝」を壱岐焼酎に1年漬け込んだ「霊芝リキュール」、壱岐焼酎「壱岐っ娘」をベースに天然のゆず果汁で作った「ゆずりきゅーる」など、香り豊かな壱岐焼酎ベースのドリンクを飲み比べることができる。

ここでは、クラフトジン開発のきっかけについても話を聞いた。
ジンを造るきっかけの一つは、2020年のコロナ禍に、島内の高級旅館から「壱岐の経済を元気にするために何か面白いことを一緒にやろう」と声をかけられたことだ。そこで、さまざまなアイデアを話し合った。壱岐焼酎を普段飲まない若い人にも、その魅力や蔵の技術を伝えたいと考えてたどり着いたのが、壱岐焼酎をベースにしたジンだった。約20種類のハーブや果実を使って試作を重ねる中で、柚子やダイダイなどの島の素材に加え、規格外というだけで廃棄されていたアスパラガスやイチゴにも目を向けた。さらに、柚子胡椒づくりで残る果肉や、果汁を搾った後の柚子の皮など、これまで十分に活用されてこなかった素材も取り入れている。これらの壱岐の素材がしっかり味わえるよう、ジュニパーベリーよりも、柑橘類などのボタニカルを多めに配合した。アスパラガスは特有の香りが強く出すぎないよう、使う部位や量を工夫し、蒸留の工程でも焼酎の風味とボタニカルの香りのバランスを整えている。ストレートのジンを一口試飲するとフルーティーで爽やかな香りと風味がふわりと広がった。壱岐島の海の色のように美しいブルーボトルに入っている。
世界に1本だけのオリジナルジンづくり体験zoom
世界に1本だけのオリジナルジンづくり体験
オリジナルジンづくり体験
酒蔵では蔵見学に加えて、数種類のスピリッツを好みの割合でブレンドし、自分だけのラベルを貼って持ち帰る「オリジナルGINブレンド体験」も実施している。壱岐産の農産物などを使った数種類のボタニカルの香りを確かめながら、理想の味・香りをイメージする。ブレンドした後は自分でボトリングして打栓し、好みのラベルを貼れば、世界に1本だけのオリジナルジンが完成する。所要時間は約45分。完成した300mlのジンは持ち帰ることができるので、旅の思い出にも、お土産にもなりそうだ。

壱岐の蔵酒造株式会社
公式サイト:https://ikinokura.co.jp/
Editor:リスヴェル編集部
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