旅の扉

  • 【連載コラム】空旅のススメ
  • 2026年7月24日更新
あびあんうぃんぐ
航空ライター:Koji Kitajima

シアトルでしか体感できない航空機内オプション装備の現場と水上飛行機旅

ケンモアエアではワシントン湖上にビーバー機が並んでいますzoom
ケンモアエアではワシントン湖上にビーバー機が並んでいます

成田から毎日アラスカ航空便名で就航するハワイアン航空機で行く、日本から一番近いアメリカのシアトルは「航空の街」として世界中の航空ファンから親しまれています。

航空機メーカー、ボーイングの本拠地があり、航空会社や航空産業に関わる人々が数多く訪れる場所です。ここで、航空機の内装を決める場所と水上遊覧飛行を提供するケンモアエアを訪問しました。

ボーイング737コンフォギュレーションスタジオのシートを選ぶ場所ですzoom
ボーイング737コンフォギュレーションスタジオのシートを選ぶ場所です

航空会社ごとの「理想の機内」を形にする737コンフィギュレーションスタジオ
特別に訪れたのは、レントンにあるボーイングの737コンフィギュレーションスタジオです。ここは、航空会社が新しく導入する737シリーズの客室仕様を最終決定するための施設になります。

自家用車でいうオプション装備を選ぶ作業と似た内容です。一般公開されているショールームではなく、航空会社の担当者が実際にシアトルを訪れ、自社仕様を細部まで確認するための重要な拠点です。

施設内ではシート、ギャレー、トイレ、収納スペース、照明、内装材など、多数の内装品メーカーの選択肢を実際に見て比較できます。レカロ、サフランやタレスなどの有名メーカーから、GEVEN、elevateなどの企業まで、ボーイングに採用された製品見本を出しています。ここでは、パナソニックもインフライトエンターテインメント機器の分野で進出しています。

航空会社ごとに機内の雰囲気は大きく異なりますが、その違いはこの施設で一つひとつ決められていきます。実際に座席へ座り、通路を歩き、客室全体の印象を確認しながら仕様を決定していく様子は、「航空機製造」の舞台裏そのものでした。

737機内モックアップで機内備品を決めていきます オーバーヘッドビンも種類がありますzoom
737機内モックアップで機内備品を決めていきます オーバーヘッドビンも種類があります

「乗り心地」まで提案するカスタマー・エクスペリエンス・センター
続いて見学したのはカスタマーエクスペリエンスセンター(CEC)です。こちらは、ボーイングが航空会社に向けて最新の客室デザインやサービスを提案する施設で、「乗客がどのように機内で過ごすか」という視点を重視しています。

実際に見ることのできるのはボーイング737、777、787が中心であり、製造は終わったものの、モックアップが残されるのは747-8Iジャンボジェットのメインデッキ前部とアッパーデッキでした。

LED照明による時間帯の演出、最新の客室インテリア、収納スペースの工夫、デジタルサービスなど、単に機体を販売するだけではなく、「快適な空の旅」をどのように実現するかを体験できる空間になっていました。

世界中から航空会社の担当者が訪れ、自社ブランドに合った客室づくりを検討しているとのことで、ボーイングが航空会社のパートナーとして、機体だけでなく旅の価値そのものを提案していることがよく理解できました。

新型機777Xのモックアップ内で説明するボーイングのアリソンさんzoom
新型機777Xのモックアップ内で説明するボーイングのアリソンさん

シアトルの街は、水上飛行機でさらに身近になる
最先端の航空機づくりを見学した後は、シアトルならではの空の楽しみ方を体験しました。それが、ケンモアエアによる水上飛行機の遊覧飛行です。搭乗したのは、デ・ハビランド・カナダ製DHC-2ビーバー。1940年代後半から世界中で活躍し続ける名機で、現在でもワシントン州やアラスカ、カナダなどで現役として飛び続けています。

6人乗りの機体に乗り込むと、ヘッドセットを装着して出発を待ちます。出発地点はワシントン湖。滑走路ではなく湖面をゆっくりすべるように走り始め、エンジン音が高まると、まるで水鳥が羽ばたくように機体はふわりと空へ浮かび上がりました。水上の離陸は想像以上に滑らかで、離陸した瞬間を意識しないほど自然です。

シアトルダウンタウンの街並みも美しく見えていますzoom
シアトルダウンタウンの街並みも美しく見えています

エメラルドシティを空から眺める贅沢
この日は雲ひとつない快晴でした。眼下には深い青色のワシントン湖と、街全体を包み込む豊かな森林が広がります。シアトルが「エメラルドシティ」と呼ばれる理由が、一目で理解できる景色です。

湖にはヨットやボートが浮かび、入り組んだ海岸線の向こうにはダウンタウンの高層ビル群やスペースニードルが姿を現します。湖面は太陽の光を受け、上空からはまぶしいほどの輝きを放っています。その美しい光景は強く心に残りました。

ダウンタウンの観光時には見上げる存在のスペースニードルを見下ろす感覚は新鮮です。遠くの山々まで見渡すことができ、まるで一枚の風景画の中を飛んでいるような気分になります。

機体は景色が見やすいようゆっくり旋回してくれるため、左右どちらの席からも存分に絶景を楽しめました。着水も同じく穏やかで、水面が衝撃を吸収してくれるため、一般的な空港への着陸とは異なるごつごつ感の無い、優しい感覚が印象的でした。

水上飛行機の旅も新鮮ですzoom
水上飛行機の旅も新鮮です

「航空の街」だからこそ味わえる一日
今回のシアトル滞在では、ボーイングの施設で未来の航空機づくりに触れ、水上飛行機ではあらためて空を飛ぶ楽しさを体感しました。航空機は、多くの技術者や航空会社の知恵によって快適な機内空間がつくられています。そして完成した航空機は、人々に新しい景色や感動を届けてくれます。

シアトルは、航空産業の最前線と豊かな自然が共存する世界でも珍しい都市です。航空ファンはもちろん、普段は飛行機に詳しくない方でも、この街を訪れれば、空の魅力をより身近に感じられるはずです。

取材協力:アラスカ航空 ⇒ https://www.alaskaair.com/ja-jp/
AS824 成田18:00発 ⇒ シアトル11:15着(所要9時間15分)
AS823 シアトル13:30 ⇒ 成田16:00着+1(所要10時間30分)

ケンモアエア ⇒ https://kenmoreair.com/
ワシントン湖の遊覧飛行 25分112ドル(約18,000円/人)

航空ライター:Koji Kitajima
大阪府出身。幼少期より空への憧憬の念を持ったまま大人になった、今や中年の航空少年。
本業のかたわら情報を発信しています。週末は航空ライター兼ブロガーとして活動中。
旅のモットーは、「航空旅行を楽しまないと旅の魅力は半減です。旅の楽しみは空港から始まる」です。

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