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  • 2026年3月26日更新
リスヴェル旅コラム
Editor:リスヴェル編集部

散居村の風と匠の技――富山・砺波平野紀行(寄稿コラム記事)

夕日に照らされる美しい散居村zoom
夕日に照らされる美しい散居村
観光庁が主催する第3回「サステナブルな旅アワード」の大賞に一般社団法人富山県西部観光社「水と匠」(みずとたくみ)の「カイニョお手入れツアー~次世代へ紡ぐ、散居村保全と循環型社会の再生~」が受賞した。大賞受賞を記念して、今回、ワールド航空サービス相談役の菊間潤吾氏が受賞地域の富山県高岡市の砺波(となみ)地域を訪ね、散居村(さんきょそん)の保全と環境の維持に努める「水と匠」の取り組みを視察した。訪日外国人旅行者も訪れる日本の原風景である散居村の魅力について寄稿していただいた。

① 独特な農村風景、散居村
散居村とは、農家が集落を作らず、田んぼの中に一軒ず点在している集落形態です。
これは日本でも非常に珍しく出雲平野や奥州でも見ることが出来ますが、ここ富山の砺波平野が日本最大規模で里山文化のなかでも独特な美しい景観をみせてくれます。
屋敷林(カイニョ)と呼ぶ防風林が各家を囲んでいるのが特徴です。冬の季節風や雪から家を守るための知恵で散居村を非常に美しい景観にしています。
春の水田に水を張ってある時の夕暮れの風景、秋の黄金色に輝く収穫風景、あるいは4月中旬にはこの地の名産チューリップの頃の風景など季節ごとに全く異なった美しさが広がります。
砺波の散居村は、それを見晴らす展望できる丘があるのも嬉しい限り。
アズマダチを改修した農家レストラン大門zoom
アズマダチを改修した農家レストラン大門
② 文化的景観・アズマダチ(東建ち)
富山県砺波平野の散居村に見られるアズマダチ(東建ち)は、単なる農家建築ではなく、北陸の厳しい風土、そして稲作文化が結晶した住まいの形です。
正面に切妻屋根を構える端正な姿は、雪深い冬と強い季節風に耐えるための知恵であると同時に、家の威厳を示す象徴でもありました。屋敷林(カイニョ)に守られた佇まいは、自然への畏敬と共生の思想を映し出し、家を守り土地を受け継ぐ責任と誇りを示しているかのようです。
人と自然が調和してきた北陸の里山文化を今に伝える貴重な文化的景観です
農家レストラン大門はアズマダチを改修したレストランで砺波の郷土料理を提供し、座席数も多く当地を知る意味でも貴重な存在です。
外国人旅行者にも対応する宿泊施設 楽土庵zoom
外国人旅行者にも対応する宿泊施設 楽土庵
➂ 散居村にあるスモールラグジュアリーな宿「楽土庵」
楽土庵は、一棟貸し中心のスモールラグジュアリーな宿です。木の温もりを活かした静謐な空間で、日常から解放される時間を過ごせます。
散居村という日本を代表する珍しい農村風景に佇み、築200年の伝統的な「アズマダチ」古民居を改修した3部屋限定の宿。
日本各地に古民家を改修した宿は、ここ数年でかなり増えてきましたが、楽土庵の佇まいは一線を画します。地域を代表する象徴的な建物であり、地域の文化を快適にモダンに体験できるものです。また、3室のみの宿とはいえ、アメリカやフランスからのスタッフもいて外国人にとても人気の宿です。
敷地内には、富山の豊富な食材を使って富山ならではの料理を提供するレストラン寧もあり、ここでの滞在は世界のハイエンドな旅行者にも多いに喜ばれるレベルでお薦めです。
「華厳松」をはじめ棟方志功の足跡が残る光徳寺zoom
「華厳松」をはじめ棟方志功の足跡が残る光徳寺
④ 棟方志功ゆかりの光徳寺
あいの風とやま鉄道の福光駅が近い真言大谷派の寺院、光徳寺は、棟方志功が戦時中に疎開して暮らし、多くの作品を手がけた寺です。
南砺市井波地区は木彫の町でもあり、棟方志功にとって宗教的主題を多く扱った精神的成熟の地でもありました。
光徳寺には棟方志功の迫力ある襖絵「華厳松」が公開されていますし、多くの棟方志功や河井寛次郎など民芸の巨匠達の作品なども数多く見ることができます。
福光美術館で棟方の富山滞在時の多くの作品を鑑賞したり、旧住居である愛染苑を訪ねたりと、棟方芸術が成熟した文化的背景を立体的に体感できる場所です。
瑞泉寺に代表される木彫文化を伝承する井波zoom
瑞泉寺に代表される木彫文化を伝承する井波
⑤ 木彫文化の町井波
南砺市井波は、浄土真宗の古刹、瑞泉寺の門前町として発展した歴史の町。
瑞泉寺は北陸最大級の大伽藍と見事な井波彫刻に圧倒される比類ない名刹です。
18世紀に大火で焼失した際に京都本願寺から高度な宮大工や彫刻師が派遣され再建されました。地元の職人たちが技を継承し、立山連峰はじめ周囲の良質な欅や杉は彫刻産業には適していたこともあり、井波彫刻として木彫文化が根付きました。現在も町の至る所で彫刻工房が軒を連ねています。
信仰と職人技が織りなす町並みは、日本の宗教建築文化を今に伝える貴重な存在で日本遺産にも認定されています。
この町には古民居をモダンに改修した宿泊施設が沢山点在しており、そのレベルも高く、おすすめの町でもあります。
菊間潤吾(きくま・じゅんご)氏のプロフィール
1952年生まれ、獨協大学外国語学部ドイツ語科卒。株式会社ワールド航空サービス代表取締役社長、会長を務め、現在相談役。2017年 フランス レジオンドヌール勲章シュバリエ受章。「南オーストラリアのユートピア アデレード」「マカオ歴史散歩」や「フランスの美しき村」「東欧の郷愁」「イスラムの誘惑」(いずれも新潮社)など著書多数。ツーリズム総合研究所会長も務める。

株式会社ワールド航空サービス https://www.wastours.jp/

寄稿者:ツーリズム総合研究所 代表 石原義郎
Editor:リスヴェル編集部
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