旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2025年4月29日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

富士山の手前に広がる50万株の「花のじゅうたん」、今年は“ゴールデンコンビ”も シリーズ「ゴールデンウイークはゴールデンルートへ」【上】

△「富士芝桜まつり」の会場に咲くシバザクラと富士山。サクラとレンギョウの花も彩りを添える(大塚圭一郎撮影)zoom
△「富士芝桜まつり」の会場に咲くシバザクラと富士山。サクラとレンギョウの花も彩りを添える(大塚圭一郎撮影)

 ゴールデンウイーク(大型連休)を迎え、首都圏在住の皆様には「安近短でも思い出に残る行き先はないだろうか」と思案しているかもしれない。お薦めなのが、公共交通機関でも気軽に訪問できる世界遺産・富士山(3776メートル)の周辺だ。富士山周辺はインバウンド(訪日客)の「ゴールデンルート」と呼ばれる主要訪問先に含まれており、ゴールデンウイークを過ごすのにはうってつけだ。本シリーズ「ゴールデンウイークはゴールデンルートへ」の【上】では、ちょうど見頃を迎えている春の風物詩の“ゴールデンコンビ”を紹介する―。

△ハートの形に植えられたシバザクラも(大塚圭一郎撮影)zoom
△ハートの形に植えられたシバザクラも(大塚圭一郎撮影)

 【シバザクラ】ハナシノブ科の植物で、北アメリカ原産の多年草。花の形がサクラに似ており、まるでシバ(芝)のように地面をはって広がるため「シバザクラ(芝桜)」と呼ばれる。寒さに強いのが特色で、日当たりと水はけが良い場所に咲きやすい。ハナシバ、ハナツメクサとも呼ばれる。

△色鮮やかな「ミニ芝桜富士」(大塚圭一郎撮影)zoom
△色鮮やかな「ミニ芝桜富士」(大塚圭一郎撮影)

 ▽首都圏地区で最大級
 富士五湖の一つの本栖湖(もとすこ)の近くにある富士急行傘下の施設「富士本栖湖リゾート」(山梨県富士河口湖町)では、首都圏地区で最大級の約50万株のシバザクラが見頃となっている。
 2025年で18回目となった恒例行事「富士芝桜まつり」が5月25日まで開催されており、富士山を仰ぎ見る約1万5千平方メートルの敷地にピンク色の「マックダニエルクッション」や白色の「モンブラン」、紫色の「オーキントンブルーアイ」といった色とりどりの「花のじゅうたん」が敷き詰められている。
 晴れていれば青空と富士山の冠雪の白、山麓に広がる緑、そしてフジザクラのピンクという色のコントラストを1枚の写真に収められる。しかし、植えられているシバザクラは7品種あり、それぞれの色調が異なるためさらに豊富な色のバリュエーションを楽しむことも可能だ。

△展望塔の屋上から見た富士芝桜まつりの会場。手前は「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」(大塚圭一郎撮影)zoom
△展望塔の屋上から見た富士芝桜まつりの会場。手前は「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」(大塚圭一郎撮影)

 ▽記念撮影スポットが拡大
 一面のシバザクラの奥にそびえる富士山という絶景写真を狙い、スマートフォンなどでしきりと撮影している観光客には外国人の姿も目立つ。富士本栖湖リゾートの中村州宏総支配人は「富士芝桜まつりの期間中(4月12日~5月25日)は34万人程度の来場を目標としており、うち約半分は外国人になりそうだ」と話す。
 交流サイト(SNS)「インスタグラム」などでの発信を促そうと、記念撮影用のスポットを拡大。まるでピンク色の花の海を漕いでいるような小舟、ハートの形をしたベンチ、「Mt.FUJI」の文字のオブジェを追加し、「Ready?(準備はいいか)」などと声をかけながらシャッターを押す人たちが見られた。
 インスタグラムでは撮影した写真や動画を応募できるコンテストも実施中で、期間は6月15日まで。入賞作品は応募者の了承を得た上で2026年のPR動画に採用される可能性もある。

△「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」には登場キャラクターも隠れている(大塚圭一郎撮影)zoom
△「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」には登場キャラクターも隠れている(大塚圭一郎撮影)

 ▽今年ならではの春の風物詩とは…
 大地を染め上げたシバザクラは圧巻だが、春の到来を告げる自然の彩りはまだある。「今年は涼しかったためサクラの開花が例年より遅かった」(関係者)そうで、今年はシバザクラとサクラの“ゴールデンコンビ”の共演を楽しめるのだ。
 また、富士山の形をした小さな丘にシバザクラを敷き詰めた「ミニ芝桜富士」もあり、曇っていなければ本物の富士山との「ダブル富士」を観賞することもできる。
 「他にもダブル富士があるんですよ」と中村総支配人が指摘した。敷地内には竜神池があり、「富士山が見えていると、池に反射した富士山を含めた『ダブル富士』の写真がきれいに撮れます」という。

△河口湖駅と結ぶシャトルバス「富士芝桜ライナー」(大塚圭一郎撮影)zoom
△河口湖駅と結ぶシャトルバス「富士芝桜ライナー」(大塚圭一郎撮影)

 ▽そこら中に潜んだ「映え」
 敷地内にはウサギのキャラクター「ピーターラビット™」の世界観を堪能できる「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」もあり、レンギョウの黄色い花が咲き誇っていた。草花の傍らに潜んでいる登場キャラクターを探すのも面白い。
 森の中にはピーターラビット™の絵本の場面を再現した「ピーターラビット™ストーリートレイル」もある。一方、敷地内にある看板の一部に記されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、拡張現実(AR)技術でピーターラビット™が画面に現れる。
 さらに、高さ8メートルの展望塔の屋上からはシバザクラとサクラ、レンギョウ、ヤマブキなどが咲き誇る様子を俯瞰することもできる。そこら中に潜んでいるいろいろな、そして色々に富んだ「映え」に気づき、シェアできるのかが腕の見せ所になりそうだ。
 富士芝桜まつりが開催中の富士本栖湖リゾートの営業時間は原則として午前8時~午後4時。入園料は時期によって変動し、大人(中学生以上)が1000~1300円、子ども(3歳以上)が500~700円。
 期間中は新宿駅直結の「バスタ新宿」から直通の高速バスが運行中で、所要時間は約2時間25分。富士山麓電気鉄道富士急行線の河口湖駅と結ぶシャトルバス「富士芝桜ライナー」ならば約40分だ。

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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