ゴールデンウイーク(大型連休)を迎え、首都圏在住の皆様には「安近短でも思い出に残る行き先はないだろうか」と思案しているかもしれない。お薦めなのが、公共交通機関でも気軽に訪問できる世界遺産・富士山(3776メートル)の周辺だ。富士山周辺はインバウンド(訪日客)の「ゴールデンルート」と呼ばれる主要訪問先に含まれており、ゴールデンウイークを過ごすのにはうってつけだ。本シリーズ「ゴールデンウイークはゴールデンルートへ」の【上】では、ちょうど見頃を迎えている春の風物詩の“ゴールデンコンビ”を紹介する―。
【シバザクラ】ハナシノブ科の植物で、北アメリカ原産の多年草。花の形がサクラに似ており、まるでシバ(芝)のように地面をはって広がるため「シバザクラ(芝桜)」と呼ばれる。寒さに強いのが特色で、日当たりと水はけが良い場所に咲きやすい。ハナシバ、ハナツメクサとも呼ばれる。
▽首都圏地区で最大級
富士五湖の一つの本栖湖(もとすこ)の近くにある富士急行傘下の施設「富士本栖湖リゾート」(山梨県富士河口湖町)では、首都圏地区で最大級の約50万株のシバザクラが見頃となっている。
2025年で18回目となった恒例行事「富士芝桜まつり」が5月25日まで開催されており、富士山を仰ぎ見る約1万5千平方メートルの敷地にピンク色の「マックダニエルクッション」や白色の「モンブラン」、紫色の「オーキントンブルーアイ」といった色とりどりの「花のじゅうたん」が敷き詰められている。
晴れていれば青空と富士山の冠雪の白、山麓に広がる緑、そしてフジザクラのピンクという色のコントラストを1枚の写真に収められる。しかし、植えられているシバザクラは7品種あり、それぞれの色調が異なるためさらに豊富な色のバリュエーションを楽しむことも可能だ。
▽記念撮影スポットが拡大
一面のシバザクラの奥にそびえる富士山という絶景写真を狙い、スマートフォンなどでしきりと撮影している観光客には外国人の姿も目立つ。富士本栖湖リゾートの中村州宏総支配人は「富士芝桜まつりの期間中(4月12日~5月25日)は34万人程度の来場を目標としており、うち約半分は外国人になりそうだ」と話す。
交流サイト(SNS)「インスタグラム」などでの発信を促そうと、記念撮影用のスポットを拡大。まるでピンク色の花の海を漕いでいるような小舟、ハートの形をしたベンチ、「Mt.FUJI」の文字のオブジェを追加し、「Ready?(準備はいいか)」などと声をかけながらシャッターを押す人たちが見られた。
インスタグラムでは撮影した写真や動画を応募できるコンテストも実施中で、期間は6月15日まで。入賞作品は応募者の了承を得た上で2026年のPR動画に採用される可能性もある。
▽今年ならではの春の風物詩とは…
大地を染め上げたシバザクラは圧巻だが、春の到来を告げる自然の彩りはまだある。「今年は涼しかったためサクラの開花が例年より遅かった」(関係者)そうで、今年はシバザクラとサクラの“ゴールデンコンビ”の共演を楽しめるのだ。
また、富士山の形をした小さな丘にシバザクラを敷き詰めた「ミニ芝桜富士」もあり、曇っていなければ本物の富士山との「ダブル富士」を観賞することもできる。
「他にもダブル富士があるんですよ」と中村総支配人が指摘した。敷地内には竜神池があり、「富士山が見えていると、池に反射した富士山を含めた『ダブル富士』の写真がきれいに撮れます」という。
▽そこら中に潜んだ「映え」
敷地内にはウサギのキャラクター「ピーターラビット™」の世界観を堪能できる「ピーターラビット™イングリッシュガーデン」もあり、レンギョウの黄色い花が咲き誇っていた。草花の傍らに潜んでいる登場キャラクターを探すのも面白い。
森の中にはピーターラビット™の絵本の場面を再現した「ピーターラビット™ストーリートレイル」もある。一方、敷地内にある看板の一部に記されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、拡張現実(AR)技術でピーターラビット™が画面に現れる。
さらに、高さ8メートルの展望塔の屋上からはシバザクラとサクラ、レンギョウ、ヤマブキなどが咲き誇る様子を俯瞰することもできる。そこら中に潜んでいるいろいろな、そして色々に富んだ「映え」に気づき、シェアできるのかが腕の見せ所になりそうだ。
富士芝桜まつりが開催中の富士本栖湖リゾートの営業時間は原則として午前8時~午後4時。入園料は時期によって変動し、大人(中学生以上)が1000~1300円、子ども(3歳以上)が500~700円。
期間中は新宿駅直結の「バスタ新宿」から直通の高速バスが運行中で、所要時間は約2時間25分。富士山麓電気鉄道富士急行線の河口湖駅と結ぶシャトルバス「富士芝桜ライナー」ならば約40分だ。