眠らない街ラスベガスの見どころは多く、特別に華やかな夜の街のイメージがある一方、車で街を少し離れると大自然を味わえるなどメリハリのある観光が楽しめます。グランドキャニオンの拠点にもなるラスベガスですが、数百キロ離れずとも30分のドライブで目を見張る赤い山肌に囲まれる大自然の体験は日本に存在しないだけに興味がそそられます。
エリア15とモブミュージアムでアートと歴史に触れる
まず訪れたのは15号フリーウェイのすぐ脇にある話題のエンターテインメント施設「エリア15」です。エリア15では、没入型のアート体験ができるインスタレーションや、サイバーな雰囲気の空間が広がり、まるで別世界に入り込んだような感覚を味わいました。
グランプリレーシングシムというフォーミュラカーの没入型シミュレーターではラスベガスストリップのドライビング体験が新鮮です。駐車スペースにも様々なアートが飾られ、飛行機好きにはダグラスDC-3の胴体が残されており、思いがけない発見をすることになります。
入場だけであれば無料で、8つのアクティビティが体験できるレベル1のチケットで32USドルからフリーパス160USドルまで4種のチケット購入できます。
「モブミュージアム」ではアメリカのギャングの歴史など、資料や映像を通してラスベガスがいかにして発展してきたのかを学ぶことができます。賭博や麻薬などの記録が残され、死刑執行の電気椅子が展示されるなど刺激的で知的な時間を過ごしました。(一般入場料34.95USドル)
Diner Rossと和久田で満たされた夜のひととき
夕食には、リンクホテル内にあるスタイリッシュな空間で人気の「Diner Ross」を訪れました。店内は1970年代のニューヨークのノスタルジックな世界に足を踏み入れたような気分になります。きらびやかな銀色のタイル張りの通路を抜けると、レトロな雰囲気が漂います。
オレンジ色のブース席、ヴィンテージのアルバムカバーが飾られたくすんだグリーンの壁、そしてペイズリー柄とジャンプスーツを着たスタッフ。遊び心がありながらも洗練された、テーマダイニングです。
フィレミニオンステーキ(36USドル)はミディアムレアで注文しました。付け合わせやソースなどを頼まずとも、肉本来の味わいが引き出された焼き加減に満足の食事となりました。料理はどれも美しく盛り付けられ、味も申し分ありませんでした。食後にはチョコレートモルトケーキを頼んだのですが、これはボリュームが大きくて一部持ち帰りにするほどのものでした。オレンジピールの入った濃厚なチョコレートで極上のディナーになりました。
食事が後半になると、ローラースケートを履いた男女ダンサーが店内を周回しディスコショーへ誘います。
華やかなディスコショー
夕食後には、Diner Lossの隣で開催されていたディスコショーにも足を運びました。2階の壁面にはテラスのようにダンスフロアが4面に作られ、ダンサーが駆け回ります。時に1階の来場者のダンススペースにも降りてきて、移動式ステージの上で踊ります。まさに出演者と来場者が一体感を持つことの出来る仕掛けが沢山あります。
キラキラとした照明と、70年代〜80年代の懐かしい音楽が流れる空間で、まるでタイムスリップしたかのようなひとときを楽しむことができました。アースウィンドアンドファイアーやマイケルジャクソンなど誰でも知るダンスソングに思わず体が動いてしまうような、エネルギッシュなショーでした。
和久田のおまかせ料理
別の日はベネチアンリゾート内の和食専門店「和久田」へ。シェフの和久田哲也氏がシンガポールに続けてラスベガスに2022年6月にオープンさせました。メインダイニンングの中央には白い力士の像が向かい合わせに鎮座しており、桜の樹々とともに独特の日本感を作り出しています。別におまかせルームという個室も完備しています。
メニューの中からお任せ6品(155USドル)を頼むと、最初にヒラメのカルパッチョが出てきます。柚子ソースが魚を引き立てます。2品目はロブスターのセビーチェ(ペルー生まれのマリネ)、3品目はシーバス揚げ、4品目は4オンス(113g)のグリステンダーロインが来ました。ソースはかなり甘めでしたが、ここラスベガスでは人気の味付けなのだとか。
5品目は握り寿司です。海老天ワサビマヨロールが3カン、サーモンとタイがそれぞれ1カン、ネギトロ軍艦が載ります。特にサーモンはニュージーランドで有名なビッググローリーベイのキングサーモンを取り寄せており、舌の上でとろけて貼り付くような食感は忘れられません。新たな日本食を発見した気分でデザートを待ちますと、最後は味噌を混ぜこんだソフトクリームが出てきました。
シェフのタカギさんに聞くと、「フレンチと日本料理のフュージョン(創作)として調理しています。アメリカ人やアジア人が多く、彼らが好む味付けにしています。最近ではお寿司以外の火を通す料理もレパートリーを増やしています」とのこと。日本の繊細な味を堪能し、ラスベガスにいながら本格的な和食を楽しめたことに驚きました。
レッドロックキャニオンで味わう、ラスベガスのもうひとつの顔
ラスベガスと聞くと、きらびやかなネオン、華やかなショー、そして眠らないカジノの街という印象を持つ方が多いかもしれません。しかし、そんな都市の喧騒から西へわずか30分ほど車を走らせるだけで、まったく別の表情を見せてくれる場所があります。それが、ネバダ州が誇る自然保護区「レッドロックキャニオン」です。
事前にレクリエーション.govというアプリで入場料20USドルを支払い、入場時間を予約してQRコードを用意しておきます。写真を撮るのであれば、山肌に光の当たる午前がお勧めです。園内のドライブは反時計回りの一方通行です。
この日歩いたのは、人気のハイキングルート「キャリコタンクストレイル(Calico Tanks Trail)」。片道約1.6kmのトレイルは、初心者でも歩ける距離ながら、途中にはダイナミックな岩場や、奇岩が続く変化に富んだ道が広がっています。名前の通り、雨水が溜まるタンク(水たまり)もあり、季節によっては水が残っていることもあります。
赤やオレンジ、ピンク色に染まった砂岩の岩肌は、太陽の角度によって刻々と表情を変え、まるで自然がつくったアート作品のようです。トレイルの最終地点で足を止めて遠望すると、ラスベガスの街並みがうっすらと見え、自然と都会の対比に思わず息をのみました。
野生動物と出会えるチャンスがあるのも、この地ならではの魅力です。運が良ければ、バーミュリオンフライキャッチャーといった美しい鳥や、砂漠に生きる小さなトカゲ、時にはビッグホーンシープの姿を目にすることもあります。
時間があれば、多くの駐車場に停車して景観を楽しむと満足度があがることでしょう。
都会の喧騒を離れ、大地の鼓動を感じながら歩く時間は、心と体をリセットしてくれる貴重なひとときでした。ラスベガスに来た際には、ぜひカジノやショーとあわせて、この豊かな自然にも触れてみてはいかがでしょうか。きっと、ラスベガスの新たな一面に出会えることでしょう。
時代の先端を感じつつ、過去から変わらぬ大自然に身を任せる旅ができるラスベガスへの旅行をお勧めします。
取材協力:ラスベガス観光局 ⇒ https://www.visitlasvegas.com/ja/