- トップ
- トラベルコラム
- 音楽とともに都市巡りの旅へ。LFJ2025のテーマは「Memoires(メモワール) ――音楽の時空旅行」
旅の扉
- 【連載コラム】こだわり×オタク心
- 2025年3月14日更新
- arT'vel -annex-
コラムニスト:Tomoko Nishio
音楽とともに都市巡りの旅へ。LFJ2025のテーマは「Memoires(メモワール) ――音楽の時空旅行」
zoom
- 「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」は毎年ゴールデンウィーク(GW)に東京・国際フォーラムで開催されるクラシック音楽の祭典。2025年のテーマは「Memoires(メモワール) ――音楽の時空旅行」。17世紀から現代まで、歴史上音楽の中心地となったヴェネチア、ロンドン、パリ、ウィーン、ニューヨークにスポットを当て、音楽を通してその都市の魅力を探り、あるいはその時代の空気を呼吸して生まれた音楽を楽しもうというものだ。
さらに5都市に加え、チェコのプラハ、ハンガリーのブダペスト、ロシアのサンクトペテルブルク、ドイツのライプツィヒなども「旅」のラインナップに加わっている。開催日は5月3日から5日。東京国際フォーラムの有料公演のほか、丸の内エリア各地で無料公演も開催される。お気に入りの街、気になる街を音楽からアプローチしてみてみることで、新しい魅力が発見できるかもしれない。
zoom
- ナントのシンボルのひとつ、レ・マシーン・ド・リルの巨大な象 ⒸFranck Tomps LVAN
- ■ナント生まれのラ・フォル・ジュルネ(LFJ)は30周年、日本開催は20周年
LFJは1995年、「音楽をより身近に」というコンセプトのもと、フランス南西部の都市・ナントで生まれたクラシックの祭典。有料公演は1公演45分、手ごろなチケット価格で、そのほか無料公演などが手軽に楽しめることから、新たな音楽の楽しみ方を提供するイベントとして、世界中に広まっている。毎年「ベートーヴェン」「モーツァルト」あるいは「Nature(自然)」「Origin(オリジン)」など、多様なテーマを設け、そのテーマに基づいた曲を中心に、若手からベテランまで、多様な音楽家が演奏を披露する。
LFJが東京に上陸したのは2005年。GWのビジネス街丸の内に賑わいを創出するイベントとしてすっかり定着し、2018年からは名称を「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」に。2024年までに延べ904万人の来場者数を数える、世界最大級の音楽祭となっている。
「誰でも気軽に音楽を楽しむ」ことがコンセプトであるからこそ、「0歳からのコンサート」「3歳以上入場可」など、普段コンサート会場に入ることのできない子どもたちも客席で音楽を楽しめるコンサートも設けられている。子ども料金も設定されているので、家族でも楽しめるというのもこのイベントの特徴だ。
zoom
- 最大のホールは約5000人を収容。集まった観客が一丸となって音楽に酔いしれる Photo by Shun Itaba
- ■押さえておきたい、音楽都市の旅どころ
音楽は作曲家が当時の世情や個人の感性など、様々な思いを乗せて生みだすものだが、そこには古来より名もなき人々が歌い、奏でてきた民謡や大衆歌など、その地の風土とともに受け継がれてきた伝統などが織り込まれている。ここからざっと、簡単に、今回テーマとなっている音楽都市としての5つの街をざっと紹介しよう。演奏される音楽についてはぜひ、公式サイトのプログラムを参照してほしい
zoom
- ヴィヴァルディ時代のサン・マルコ広場と大聖堂(カナレット(1697-1768)作の絵画
- ●17世紀ヴェネチア:バロック音楽やオペラが発展。ヴェネチアを代表するフェニーチェ劇場で最初にオペラが上演されたのは1630年であった。「四季」で知られるヴィヴァルディもヴェネチアで活躍した音楽家で、市内の通りにはヴィヴァルディゆかりのプレートも数多く見られる。「四季」はもちろん、当時宮廷や貴族の館などで演奏されたであろう、古楽器による音楽なども注目だ。
●18世紀前半ロンドン:大航海時代による大英帝国の拡大で経済が発展したロンドンは、それにともないバロック音楽の一大中心地に。大陸ヨーロッパから音楽家たちが活躍の場を求めてロンドンへ渡ったなか、最も成功を収めたのはドイツ出身のヘンデルであった。代表作「メサイア」「ハレルヤコーラス」が演奏される予定。
●18世紀後半から19世紀ウィーン:「音楽の都」を世に押し出したのは交響曲の父ハイドン。ザルツブルク生まれの天才モーツァルトは時には権力者と対立しながらも数々の名作を世に送り出し、ドイツ語のオペラ「魔笛」を生みだした。さらにベートーヴェン、シューベルト、ブラームスらが続く。市民社会の成長とともに音楽は宮廷から市井へと広まり、ベートーヴェンは絶大な人気を博す。LFJではこれら音楽家の作品はもちろん、生誕200年を迎えるワルツ王ヨハン・シュトラウス2世の音楽を集めたプログラムなども組まれている。
zoom
- 1889年のパリ万国博覧会。エッフェル塔が描かれている
- ●19~20世紀パリ:芸術の都にして花の都パリではショパンやリストなど、ロマン派の音楽家が活躍。さらに1851年のパリ大改造により、パリ・オペラ座やエッフェル塔などが次々と誕生。19世紀末に複数回開催されたパリ万国博覧会も文化の融合による新たな芸術誕生のきっかけとなった。ドビュッシー、サン=サーンス、ラヴェルらフランスの作曲家はもとより、プッチーニ、マーラー、リムスキー=コルサコフ等々、世界各国から大勢の芸術家がこの街を目指した。LFJでは生誕150年を迎えるラヴェル「ボレロ」のほか、日本ではあまり聞く機会のない、ダンディ「フランスの山人の歌による交響曲」も演奏される。こうしたレアな曲が楽しめるのもLFJの魅力の一つだ。
●20世紀ニューヨーク:新大陸の文化の中心地ニューヨークでは多様な民族のルーツを取り入れたジャズやミュージカルが誕生。ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」、バーンスタイン「ウエストサイド・ストーリー」はその代表作で、もちろんLFJにもラインナップされている。
このほかサンクトペテルブルクではチャイコフスキーをはじめとするロシアの音楽、ライプツィヒではバッハやシューマン、メンデルスゾーンを、プラハではスメタナやドボルザーク、ブダペストではリストなどを取り上げる。ぜひ、音楽を通した街の魅力を楽しんでいただきたい。
zoom
- 子どもを対象とした公演、イベントも開催 Photo by Taichi Nishimaki 提供:LFJ TOKYO 2024
- ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2025
Memoires(メモワール) ――音楽の時空旅行
日程:2025年5月3日(土・祝)・4日(日・祝)・5日(月・祝)
会場:東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町、東京駅、京橋、銀座、八重洲、日比谷、みなとみらい など
有料公演:90公演 その他、無料公演を開催
公式サイト:
https://www.lfj.jp/lfj_2025/
写真提供:LFJ TOKYO 2024