旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2024年12月8日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

#パリ・ノートルダム大聖堂 祝再開! 特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」

美しい内陣zoom
美しい内陣

 12月8日、5年以上の歳月をかけて修復されたパリ・ノートルダム大聖堂がいよいよ再開 します。

 フランス国民のみならす、世界中がショックを受けた2019年4月15日に発生した大火災。  
 火は何時間も収まらず、基礎構造や正面壁は焼失を免れたものの、建物は大きな被害を受けました。
 

 

ショッキングな火災zoom
ショッキングな火災

 ユネスコ世界遺産のノートルダム大聖堂は、年間1400万人から1500万人の入場者を迎えるゴシック建築の代表作であり、パリの歴史的なシンボルでもあります。パリに行った人なら、一度は訪れたことがあるでしょう。
 
 約850年前にパリのシテ島に建築されて以来、フランス史の証人として、数々の時代を生きながら、シテ島を見守ってきました。
 多くの人に愛されてきたこの大聖堂のこと、火災の後、すぐさま復興プロジェクトが開始されました。
 修復にあたっては、当初の姿や構造を守りながら、ノートルダム大聖堂を未来に残し続けるために、当時の技術と現代技術を融合。各界の専門家が集結して最新技術を駆使した一方、鍛治職人、石工、大工、ステンドグラス職人、屋根職人、パイプオルガンの修復士など建築や美術品を扱う熟練工も懸命な修復作業を続けました。
 原型通りの屋根組みに使用した2000本の樫の樹は、全てフランス国内の国有林、私有林から調達したと言います。
 パリ在住の知人によれは、修復中、ノートルダム大聖堂は、カテドラルを囲う壁に修復の状態や説明が詳細に写真付きで展示され、シテ島の「Espace Notre-Dame」では、修復作業に関する詳細や職人たちの技術を学ぶことができ、火災で損傷した建材や尖塔の彫刻なども展示されました。
 フランスの威信をかけて、そして人々の篤い思いにより、ノートルダム大聖堂は復活。12月8日、一般公開の日を迎えました。

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David「ナポレオンの戴冠式」

 ところで、東京・日本科学未来館では、文化財保護の大切さを伝えることを目的として、現在、特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」が開催中です。 
 世界各国で巡回され、日本に初上陸した新しいスタイルの「体験型展覧会」で、1160年の創建時から、2019年の火災、その後の復興過程まで、ノートルダム大聖堂をタイムトラベルできます。

 入場者は専用タブレット端末「HistoPad((ヒストパッド)」を持って会場を歩き回りながら、20をこえるタイムポータル(「時空の扉」と呼ばれる時間旅行の入口となる画像)を通って、さまざまな時代の大聖堂を覗くという趣向。まるで大聖堂の中にいるような没入感を味わいながら行く歴史の旅です。

 会場の各所に設置された過去へとつながるタイムポータルにHistoPadをかざすと、ディスプレイに当時の様子が再現されます。各画面に表示されるポイントをタッチして、解説を表示したり、音声で聴くこともでき、インタラクティブに大聖堂の歴史から修復技術までを知ることができます。

 ノートルダム大聖堂にある巨大なステンドグラスの壁面映写や立像模型、大きな写真なども展示され、パリの大聖堂にいる気分です。

 

「ノートルダムのせむし男」も大聖堂を助けたzoom
「ノートルダムのせむし男」も大聖堂を助けた

 見どころのいくつかをのぞいてみましょう。
 
 ルイ12世治世下の1160年、パリのモーリス・ド・シュリー司教が、シテ島のサン・テティエンヌ大聖堂の代わりに、聖母マリアを祀る壮大な大聖堂を建てることを定め、国王、国民、教会の賛成を得て3年後、1163年に工事が着工され、大聖堂の歴史は始まります。
 大聖堂の形の時代による変遷、建築に携わった鍛治職人や石工の話、「森」の愛称で知られる木造構造の屋根の建築などのエピソードも知ることができます。

 1804年、ナポレオンの戴冠式は、この大聖堂で行われました。
 画家ジャック=ルイ・ダヴィッドによって描かれ、ルーブル美術館に収蔵されている「ナポレオンの戴冠式」の画像は、360度を見回せる視点を採用したことにより、教皇ピウス7世より「フランス人民の皇帝」としてナポレオンが冠を授かる式の様子がよりリアルに迫ってきます。

 ノートルダム大聖堂が荒廃していた時代もありました。フランス革命や政教分離の苦難の時代、パリの住民による無関心により、19世紀、何と倉庫に使われていたという大聖堂ですが、大聖堂を愛して止まなかった文豪ヴィクトル・ユーゴーが、小説「ノートルダム・ド・パリ(ノートルダムのせむし男)」を1831年に発表したことにより、ふたたび注目され、世論によって必要な修復が施されたのだそうです。

美しいステンドグラスも魅力のひとつzoom
美しいステンドグラスも魅力のひとつ

 そして、火災の後では、「修復現場におけるイノベーション」をテーマに、科学の視点から大聖堂修復にフォーカスした「タイムポータル(時空の扉)」もあります。
 最適な方法での修復を行うために、最新シミュレーションや専用に開発されたロボットなど、あらゆる最新技術を駆使した様子を動画や図解で解説。火災で焼失した尖塔や「森」の愛称で知られる木造構造の屋根など、ノートルダムを代表する特徴的な建築要素の修復・強化を可能にした技術を説明します。

 興味の赴くままタブレットを片手に時空を旅し、気がついたらずいぶん時間が経っていました。数時間見学しているお子さんもいるそうです。
 ノートル=ダム(Notre-Dame)は、イエス・キリストの母である聖母マリア様を意味します。 
 ノートルダム大聖堂は、長い歴史の中で、母のように人々を見守り、また人々に愛されてきた存在であることが感じられる展覧会。

 いつかまた私もパリに行き、復活した大聖堂の姿を見てみたいと願っています。

ノートルダム大聖堂のアイドルzoom
ノートルダム大聖堂のアイドル

特別展「パリ・ノートルダム大聖堂展 タブレットを手に巡る時空の旅」開催概要

会期
2025年2月24日(月・休)まで

休館日
火曜日(ただし、2/11は開館)、
年末年始(12/28~1/1)

会場
日本科学未来館 1 階 企画展示ゾーンa
(東京都江東区青海2-3-6)

アクセス
https://www.miraikan.jst.go.jp/visit/location-directions/

料金
大人〔19歳以上〕 1,800円(1,600円)
18歳以下〔中学生以上〕 800円(600円)
小学生500円(400円)
60歳以上1,600円
※( )内は8名以上の団体料金。価格はすべて税込み
※未就学児は無料(ただし、ヒストパッドの利用を希望する場合はレンタル料金400円が必要)

詳細は公式ウェブサイトで要確認
 https://notredame-ar.jp/

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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