旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2024年11月9日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

選択肢を3倍に増量!「夢の鉄道旅行プラン」を募集 「鉄旅オブザイヤー」一般部門、12月20日まで

△2026年度のデスティネーションキャンペーン(DC)開催地となる福島県と、新潟県を結ぶJR東日本の蒸気機関車(SL)列車「SLばんえつ物語」(大塚圭一郎撮影)zoom
△2026年度のデスティネーションキャンペーン(DC)開催地となる福島県と、新潟県を結ぶJR東日本の蒸気機関車(SL)列車「SLばんえつ物語」(大塚圭一郎撮影)

 「夢の鉄道旅行プラン」で提案できる選択肢を3倍に増量!優れた鉄道旅行を表彰する賞「鉄旅オブザイヤー」の2024年度(第14回)で、一般の方や団体から企画を募る一般部門の募集が始まった。締め切りは24年12月20日金曜日となり、最高賞「ベストアマチュア賞」(1点)の受賞者に賞金5万円とJR協賛による記念品が贈られる。今回は提案できる旅行先の対象地域が例年の3倍になるため、バラエティーに富んだ鉄道旅行を提案できそうだ。

△24年度DC開催地の大分県と、熊本県を結ぶJR九州の特急「あそぼーい!」(大塚圭一郎撮影)zoom
△24年度DC開催地の大分県と、熊本県を結ぶJR九州の特急「あそぼーい!」(大塚圭一郎撮影)

 【鉄旅オブザイヤー】国内の鉄道旅行に贈られる代表的な賞で、テレビ番組で「鉄道旅行のアカデミー賞」と紹介された。旅行業界でつくる鉄旅オブザイヤー実行委員会が主催して2011年度から毎年実施しており、24年度で14回目。後援にはJR旅客6社全て、日本民営鉄道協会、日本観光振興協会、日本旅行業協会、全国旅行業協会が入っている。
 一般部門の最終審査員は、いずれも熱心な鉄道愛好家として知られるフリーアナウンサーの久野知美さん、ホリプロの南田裕介マネージャー、お笑い芸人「ダーリンハニー」の吉川正洋さんが務める。
 旅行会社のツアーを対象にした旅行会社部門も12月20日まで募集している。外部審査員は委員長の山口昌彦・月刊「旅の手帖」編集長、本連載コラム「“鉄分”サプリの旅」執筆者の大塚圭一郎・共同通信社経済部次長ら計9人が務める。

△毎年1~3月のDC開催地、京都市にある京都鉄道博物館(大塚圭一郎撮影)zoom
△毎年1~3月のDC開催地、京都市にある京都鉄道博物館(大塚圭一郎撮影)

 ▽3年分のDC開催地が対象に
 鉄旅オブザイヤーの一般部門は2016年度に始まり、JR旅客6社と地元自治体が開催する大型観光企画「デスティネーションキャンペーン」(DC)が翌年度に開催される地域への旅行プランを募集してきた。
 ところが24年度の募集対象地域は、25年度のDC開催地だけにとどまらず24、26両年度の開催地も含んだ3年分となるため、例年(1年分)の3倍だ。
 具体的な対象地域は次の通り。
<2024年度DC開催地>
・福岡県・大分県(開催期間24年4~6月)
・北陸3県(富山県・石川県・福井県、24年10~12月)
・京都市(25年1~3月)
<25年度DC開催地>
・大阪府(25年4~6月)
・京都市(26年1~3月)
<26年度DC開催地>
・福島県(4~6月)
・山口県(10~12月)
・京都市(27年1~3月)
 1泊2日以上のプランを応募する場合には、宿泊する地域も記載する。企画内容については、DCの開催時期に限定しない。

△25年度DC開催地となる兵庫県の明石海峡大橋(大塚圭一郎撮影)zoom
△25年度DC開催地となる兵庫県の明石海峡大橋(大塚圭一郎撮影)

 ▽なぜ3年分に拡大?
 募集対象となるDC開催地を3年分に広げる理由を鉄旅オブザイヤー運営事務局に尋ねたところ、「2025年度だけを対象にすると大阪府・京都市の2エリアのみとなり、作品の応募幅として狭まってしまうという点を考慮したため」という説明だった。
 25年度は大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)で25年大阪・関西万博(25年4月13日~10月13日)が開催されるのに合わせ、大阪府で25年4~6月にDCが開かれる。だが、他の開催地は毎年1~3月に実施されている京都市だけだ。
 そこで、DCには前年度開催地で「アフターDC」、翌年度開催地で「プレDC」がそれぞれ催されているのを踏まえて「25年度のDC開催地だけではなく、アフターDCとプレDCのエリアも含めて募集することにした」(鉄旅オブザイヤー運営事務局)という。
 鉄旅オブザイヤー運営事務局は対象地域拡大で応募件数が増えるといった効果が期待できそうな場合は「次年度以降も3年分の募集エリアを継続することも考えられる」と話しており、一般部門への積極的な応募を呼びかけている。

△鉄旅オブザイヤーの授賞式会場となる鉄道博物館(さいたま市)の「てっぱくホール」(鉄旅オブザイヤー運営事務局提供)zoom
△鉄旅オブザイヤーの授賞式会場となる鉄道博物館(さいたま市)の「てっぱくホール」(鉄旅オブザイヤー運営事務局提供)

 ▽インバウンド企画も対象に
 また、2024年度は一般部門、旅行会社部門ともに募集要項で「訪日外国人を対象とした企画も対象となります」と明記している。24年のインバウンド(訪日客)が過去最高だった19年(約3188万人)を超え、最高記録を更新する公算が大きいのを背景に訪日旅行についても重視する姿勢を鮮明にしている。
 応募者は、「鉄旅オブザイヤーホームページ」鉄旅オブザイヤーのホームページでダウンロードできる応募用紙に必要事項を記入し、資料を添えて電子メールで事務局へ提出する。
 応募できるのは未発表作品に限り、他のコンテストなどの入賞作品や出版した作品は応募不可。また、応募したプランが実際に旅行商品化される場合には著作権を放棄し、利益還元を受けないことへの同意が必要となる。

△24年度DC開催地の福岡、大分両県を結んでいるJR九州の「或る列車」と大塚圭一郎(長崎県佐世保市で)zoom
△24年度DC開催地の福岡、大分両県を結んでいるJR九州の「或る列車」と大塚圭一郎(長崎県佐世保市で)

 ▽審査員が「自ら応募しないのか」の質問には…
 鉄旅オブザイヤーの24年度の授賞式は、25年4月16日水曜日に鉄道博物館(さいたま市)の「てっぱくホール」で開催される。ベストアマチュア賞の受賞者も出席してプランの狙いや概要を説明し、賞状を受け取る。
 旅行会社部門の審査員を務める大塚圭一郎は「今までに『自分で応募する気はないのか』と何度も質問されたことがある」と打ち明け、「私はかつて一般部門の審査員も務めていたため当時は事実上不可能だったが、今は一般部門の審査員には入っていないため『絶対無理』だとは言えないかもしれないものの応募したことは皆無だ」と説明した。
 中学時代は旅行計画を立て、行った気になることが活動内容の「ペーパートラベリング部」の部長を務めていたとし、仮にプランを立てるように要請を受ければ「47都道府県全てを訪れ、通算10年住んだアメリカで40州、カナダも10州全てとユーコン準州を訪れるなど海外旅行も多く経験したので、鉄道趣味も生かして独自の視点の鉄道旅行を提案できるかもしれない」と意欲ものぞかせる。
 ただ、「同じコンテストの審査員が応募し、まずあり得ないものの、万が一受賞するようなことがあれば出来レースのような疑念を持たれかねない。よって瓜田に履を納れず、李下に冠を正さずで、今後も応募する考えは全くなく、審査に徹したい」と断言し、「勤務先の福岡支社とワシントン支局に在籍していた過去6年間の授賞式は出られなかったため、24年度の授賞式には是非とも出席して受賞者を含めた皆様とお目にかかるのを楽しみにしている」と話した。
 一般部門は23年度に42件の応募があり、ベストアマチュア賞は東海大学遠藤ゼミ鉄旅FCプロジェクトチーム、矢部航平さんの企画「あなたはきっと、福井が好きになる。~雪月花(せつげっか)で行く福井横断の旅~」が受賞した。
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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