旅の扉

  • 【連載コラム】「“鉄分”サプリの旅」
  • 2024年10月26日更新
共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎

「絶対に繰り返してはいけない歴史」第2次大戦中の日系アメリカ人らの強制収容を知って 東京外大で財団理事長・弁護士のシャーリー・ヒグチさんが10月29日に講演

△シャーリー・ヒグチさん(2023年7月、アメリカ首都ワシントンDCで大塚圭一郎撮影)zoom
△シャーリー・ヒグチさん(2023年7月、アメリカ首都ワシントンDCで大塚圭一郎撮影)

 第2次大戦世界で日本が敵国だったという理由だけで、何の罪もない12万人を超える日系アメリカ人らが強制収容所に送られました。両親が元収容者である日系アメリカ人3世で、強制収容の歴史をまとめた書籍『セツコの秘密』(イーコンプレス)の著者である財団理事長、弁護士の日系アメリカ人3世、シャーリー・ヒグチさんが来日し、「絶対に繰り返してはいけない歴史」を伝えるために2024年10月29日火曜日の午後4時半から国立大学法人東京外国語大学(東京都府中市)で講演します。東京外大の同窓会「東京外語会」と東京外大の共催で、英語の日本語通訳を大学院生が務めます。どなたも参加でき、入場無料です。

△シャーリー・ヒグチさんの著書『セツコの秘密』の表紙zoom
△シャーリー・ヒグチさんの著書『セツコの秘密』の表紙

 【シャーリー・ヒグチ(Shirley HIGUCHI)さん】「ハートマウンテン・ワイオミング財団」理事長、弁護士。1959年生まれ。アメリカの首都ワシントンDCのジョージタウン大学法科大学院修了(法務博士)。元ワシントンDC弁護士会会長。西部ワイオミング州に第2次世界大戦中に建設された日系人らの強制収容所の歴史を伝えるハートマウンテン・ワイオミング財団の理事長として、2011年に跡地に博物館を開設した。
 敷地内には、ともにアメリカ政府による日系人らの強制収容を謝罪するために尽力した、日系人で初めてアメリカの閣僚となった元収容者の故ノーマン・ミネタ元運輸長官と、アラン・シンプソン元上院議員の友情と功績をたたえる施設「ミネタ・シンプソン・インスティテュート」も2024年7月に開館した。

△大塚圭一郎(2023年12月、アメリカ西部ワイオミング州のハートマウンテン強制収容所の跡地付近で鍋島明子氏撮影)zoom
△大塚圭一郎(2023年12月、アメリカ西部ワイオミング州のハートマウンテン強制収容所の跡地付近で鍋島明子氏撮影)

 ▽12万人超が強制収容所に送られる
 講演会は「第2次世界大戦中のアメリカで強制収容された日系人の母セツコが守った『秘密』~惨禍を繰り返さないために知ってほしい歴史」と題して開かれます。
 2025年で終戦から80年を迎える第2次世界大戦中に、1941年12月のアメリカ・ハワイ州のパールハーバー(真珠湾)への攻撃を受け、42年2月にアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領(当時)が署名した大統領令に基づいて12万人を超える日系アメリカ人らが自宅から追い出されて強制収容所に送られました。

△岸和田仁さん(本人提供)zoom
△岸和田仁さん(本人提供)

 ▽世界平和を希求してボランティアで講演
 1942年に米国西部に10カ所(一時収容所などを除く)の強制収容所が設けられ、その一つがシャーリーさんの両親が送られたワイオミング州のハートマウンテン強制収容所でした。人里離れた場所に設けられた強制収容所は有刺鉄線に囲まれ、収容者は粗末な造りの木造のバラック住宅での集団生活を余儀なくされました。
 ハートマウンテン強制収容所の跡地にある博物館の建設に尽力したシャーリーさんは世界平和を希求し、強制収容の歴史を伝えるボランティアを続けてきました。東京外大での講演を前に「悲しいことに今も地球上では戦火が絶えません。何も悪いことをしていない人たちが戦争で経験した恐ろしい歴史を知っていただくことで、平和な良い世界に変えていってほしいと願っています」と話しています。

△東京外国語大学の篠原琢副学長(東京外大提供)zoom
△東京外国語大学の篠原琢副学長(東京外大提供)

 ▽本連載執筆者も講演
 シャーリーさんに続き、本連載コラム「“鉄分”サプリの旅」執筆者で、共同通信社前ワシントン支局次長(現本社経済部次長)、東京外語会広報委員・元理事の大塚圭一郎も「アメリカの第2次世界大戦中の日系人強制収容を報じて伝えたかったこと―「またトラ」への不安―」と題して講演。
 2024年11月5日のアメリカ大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ前大統領が勝利した場合、トランプ氏の支持層である低所得・低学歴の白人至上支持者らが勢いづき、人種差別的な動きが顕在化しかねないリスクなどをお話しします。
 日本ブラジル中央協会常務理事、『ブラジル特報』編集人の岸和田仁さんは「大戦中の日本人迫害~ペルーとブラジルにおける歴史的事実」のタイトルでスピーチをします。

△東京外大の入り口(2018年5月、大塚圭一郎撮影)zoom
△東京外大の入り口(2018年5月、大塚圭一郎撮影)

 ▽篠原副学長がモデレーターに
 シャーリーさんと岸和田さん、大塚が参加するパネルディスカッションは、東京外大の篠原琢副学長がモデレーターを務めます。質疑応答もあり、挙手いただければ登壇者ができるだけご質問にお答えします。東京外語会副理事長・事業委員長の川上直久さんが閉会のごあいさつをいたします。終了後にはシャーリーさんによる『セツコの秘密』(4千円)の販売・サイン会も予定されています。
 会場は「東京外国語大学」(〒183-0003 東京都府中市朝日町3-11-1)の研究講義棟101教室。開場は午後4時で、講演会は午後4時半~6時。
 東京外大は、西武鉄道多摩川線の多磨(東京外大前)駅から徒歩5分。京王電鉄利用ならば飛田給駅で降り、北口から発車する京王バス「調33」「飛02」の多磨駅行きで「東京外国語大学前」停留所下車すぐです。
 事前登録がなくてもご来場いただくことは可能ですが、「参加申し込み」から事前にご登録をいただくとスムーズに入場いただけます。
 皆様のご来場をお待ちしております。
 【お問い合わせ先】東京外語会事務局、電話03(3815)5877、メールアドレス:jimukyoku@gaigokai.or.jp
(連載コラム「“鉄分”サプリの旅」の次の旅をどうぞお楽しみに!)

共同通信社 経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員:大塚圭一郎
1973年4月、東京都杉並区生まれ。国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒。1997年4月に社団法人(現一般社団法人)共同通信社に記者職で入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。2024年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を積極的に執筆しており、英語やフランス語で取材する機会も多い。

日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。東海道・山陽新幹線の100系と300系の引退、500系の東海道区間からの営業運転終了、旧日本国有鉄道の花形特急用車両485系の完全引退、JR東日本の中央線特急「富士回遊」運行開始とE351系退役、横須賀・総武線快速のE235系導入、JR九州のYC1系営業運転開始、九州新幹線長崎ルートのN700Sと列車名「かもめ」の採用、しなの鉄道(長野県)の初の新型車両導入など最初に報じた記事も多い。

共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載「鉄道なにコレ!?」と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。

本コラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)、カナダ・バンクーバーに拠点を置くニュースサイト「日加トゥデイ」で毎月第1木曜日掲載の「カナダ“乗り鉄”の旅」(https://www.japancanadatoday.ca/category/column/noritetsu/)も執筆している。

共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。
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