旅の扉

  • 【連載コラム】舞台とハワイと時々ニューヨーク
  • 2023年4月21日更新
アート&トラベルライター:青山ルビー

ブロードウェイ演目ガイド2023春 オペラ座は終演、SIXが人気

zoom

ミュージカルの本場といえばニューヨークのブロードウェイとロンドンのウエストエンド。今回はコロナ禍が開けて完全に活気が戻ったブロードウェイのガイドをお届け。

ブロードウェイではオン・ブロードウェイの主要劇場だけでも
40程あり、コロナ前は例年40前後の新作が公開されていました。演目の入れ替えが頻繁に行われているため、ガイドブックなどではロングランを続ける代表的な作品を紹介することになり、新しい作品はまだ載せられていないという場合もあります。そこで、リスヴェルの当コラムでは、いまブロードウェイで観られるおすすめの演目を紹介しています。前回お届けしたのがコロナ前の2020年初頭でしたので、3年数か月ぶりのアップデートとなります。

ほぼ全世界の人々の生活を一変させてしまった新型コロナウイルスの蔓延。わたくしもですが、読者の皆様の中にも、公私ともに影響を受け、大変な時期を過ごした方もいらっしゃると思います。ブロードウェイの劇場や舞台関係者も、多大な影響を受けたと聞きます。コロナ禍の初期の
2020年春には、ニューヨーク州知事の指示でブロードウェイの全劇場が閉鎖になる期間があるなど、トニー賞のノミネートや開催にも大きな影響が出ました。その後、昨年には活気が戻りはじめ、20234月現在、観光客目線の限りでは、通常時期に戻ったような活気を感じることができます。

現在人気なのは、
SIX the Musical、ムーラン・ルージュ、MJ the musical、ヘイディズ・タウン、Kimberly Akimboなどです。さっそく、いくつかご紹介したいと思います。

zoom

設定が凄すぎる、ド派手な衣装と大迫力の歌声が魅力の、SIX the Musical

SIX
はブロードウェイでいまヒットしている演目の一つで、休憩なしの90分一本勝負、歌が主役の迫力のミュージカル。

英国のヘンリー8世の6人の妻たちが現代設定の中で蘇り、ライブショーの形で観客に向けて語りかけながら、誰がリードボーカルにふさわしいかのコンテストを始める、というストーリー。とにかく音楽が力強くてクール。アルバム「SIX: LIVE ON OPENING NIGHT Broadway album」は、ビルボードキャストアルバムチャートで1位を獲得したほか、発売から1か月以内に600万ストリームを達成したそう。

また、2021/2022年のブロードウェイ・シーズンにおいて、トニー賞の最優秀オリジナルスコア(楽曲・歌詞)賞、アウター・クリティックス・サークル賞の最優秀ミュージカル賞を含む23の賞を受賞。(公式サイトからの情報)

6
人6様に濃い、壮絶な人生を送っているため、内容が凄いです。映画「ブーリン家の姉妹(2008年)」でも描かれたアン・ブーリンは、「私なんて最後は打首〜」と歌います。すごい世界観ですが、意外と史実にも沿っているらしく、歴史の勉強にもなる可能性アリ。ド派手な衣装で勢いよく歌い上げるクイーン達の姿は圧巻で、観客は大盛り上がりという演目。

https://youtu.be/Eod4hJxfISU



SIX the Musical
https://sixonbroadway.com/
The BrooksAtkinson Theatre
256 W 47TH St 

zoom

マイケル・ジャクソンの半生 その栄光と苦悩を描く、MJ the musical

マイケル・ジャクソンの成功と苦悩を
1992年のデンジャラスツアーのリハーサルを主要舞台に、回想シーンをふんだんに入れて展開されるミュージカル。

子供時代とティーンエイジャー時代のマイケル役もいるので、
3人のマイケルが出て来て、往年の名曲を歌って踊る、さすがブロードウェイという見応え満点の演目。Bad, Beat It, Billie Jean, Black or White, Earth Song, Human Nature,Jam, Keep the Faith, Man in the Mirror, Smooth Criminal, Thrillerなどなど、全40曲ほどをフィーチャー。

2022
年のトニー賞でミュージカル主演男優賞、照明デザイン賞、音響デザイン賞、振付賞の4賞を獲得。なお、20234月現在、主役は主演男優賞を獲得したMyles Frostではなく、ELIJAH RHEA JOHNSONが演じており、彼も素晴らしい演技、歌、ダンスを披露しています。

MJ themusical
https://newyork.mjthemusical.com/
NEIL SIMONTHEATRE
250 West52nd St

zoom

豪華絢爛な夢空間、Moulin Rouge! The Musical(ムーラン・ルージュ)

2019
年夏にブロードウェイでオープンを迎えた「ムーラン・ルージュ!(Moulin Rouge! The Musical!)」、2001年公開の同名映画の舞台版。映画はニコール・キッドマンとユアン・マクレガー主演で大きな話題になったので、記憶に残っているかたも多いのではないでしょうか。

パリのモンマルトル近くにある有名なキャバレーを舞台に、不遇のスターダンサー兼女優のサティーンと、ロンドンから来た若手脚本家クリスチャンが展開するラブ・ストーリーです。会話スタイルでのストーリー展開もありますが、一番の特徴はオリジナルソングと往年のヒット曲を切り貼りで上手に使って、主人公たちの気持ちを伝えていく手法(ジュークボックス・ミュージカルの変化形という感じ)です。

使われるのはビートルズやエルトン・ジョンの楽曲や、映画版にはなくミュージカル版で登場したレディ・ガガの楽曲などです。名曲を一曲丸ごと使うのではなく、切り貼り系ですので、「あれ?なんの曲だっけ」と考えているうちにシーンが移り変わっていく感覚もありますが、その場ではストーリーを楽しんで、あとで曲の解明をするというのも面白い見かたかもしれません。

特に音楽ファンに楽しんでいただける作品だと思いますが、舞台セットが豪華で、キャストも魅力的ですので、ビジュアル要素を求めるミュージカルファンのかたにもお勧め。映画の中でも出てきたムーラン・ルージュを象徴する風車のオブジェや、外観が像の形をしているサティーンの部屋も再現されており、「ムーラン・ルージュの輝けるダイヤモンド!」と紹介されて華やかに登場するサティーン役はこの舞台の華といえる存在。

わたくしが訪れた4月上旬はクリスチャン役にアーロン・トヴェイトが期間限定で主役に復帰している時期。アーロンはミュージカルファンの間では有名な存在で、レ・ミゼラブルの映画でアンジョルラスを演じていた2枚目俳優。1列前のアーロンファンの男子がずっと「アーロン!」と叫び、後ろの若手女子はずっと奇声を上げていて、斜め後ろ男子は、アーロンのことが好きすぎるのか、ずっと一緒に歌っているという、かなりのカオスでしたが、最高に派手でかっこいい舞台でした。4月中旬からは主役の歌姫役含め、主要キャストが一新され、フレッシュな新チームも早くも絶賛されているよう。今後も人気が継続しそうです。

https://youtu.be/B5JMQ1D5qHY


MoulinRouge! The Musical
https://moulinrougemusical.com/new-york/home/
AlHirschfeld Theatre
302 W 45 St

zoom

相変わらずの人気 冥界の王ハデスの世界を垣間見る、Hadestown

2019
年のトニー賞で最優秀ミュージカル賞を含む8つの賞を受賞したヒット作。初演から4年ほど経った今でも大人気です。

公式サイトのうたい文句「オルフェウスとエウリュディケ、そしてハデス王とその妻ペルセポネの
2つの神話が絡み合い、冥界への忘れられない旅に誘います」の通り、舞台開始の導入から最後まで、全体的に不思議な“魅惑の”空気間が魅力の、クセになるミュージカル。

Hadestown
https://www.hadestown.com/
Walter KerrTheatre
219 W 48thSt

上記以外にも、&ジュリエット(&
Juliet)など、英語のセリフに多少ついていけなくても楽しめる、ライトタッチで魅力的な演目が人気となっています。

zoom

これから人気になるのは?

そして、これから人気が出るか否か、注目を集めるのが、ブロードウェイデビューをしたばかりの
Life of PIです。

ロンドンのウエストエンドで大ヒットし、オリヴィエ賞を受賞したミュージカル「ライフ・オブ・パイ」は、2012/2013年公開の海上での冒険・サバイバル物語「イフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」を舞台化したもの。太平洋の真ん中で難破した16歳の少年パイは、ハイエナ、シマウマ、オランウータン、ベンガルトラという動物たちとともに救命ボートで生き延びます。あの世界観をどうやって舞台上で魅せるのか。舞台芸術・エフェクトが見どころ。

Life of PI 
https://lifeofpibway.com/
Gerald Schoenfeld Theatre
236 W. 45thSt.

このようにブロードウェイに活気が戻る中で、惜しまれつつも終演を迎えたのが、
19881月のNY初演(ロンドンでの初演は1986年)以来、35年にわたり愛されてきたオペラ座の怪人(The Phantom of the Opera)。

わたくしも大好きな演目のひとつなので哀しい限りですが、プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュなど関係者がアメリカの複数メディアに語ったとされる理由は、多くの俳優、豪華なセット、オーケストラ等、維持費も高い演目ゆえ、コロナ前から赤字の時期もあったとのこと。本当のところはわかりませんが、舞台装置も大がかりで、確かに維持費はかかりそうです。一方、マッキントッシュは再演に意欲的とも報じられていますので、ファントムがブロードウェイに戻ってきてくれる日がくるかもしれません。それを期待して待ちつつ、どうしても観たくなったら、今のところはロンドン、ウエストエンドへ
Go!ですね。

次回はロンドンのウエストエンドの現在をご報告したいと思います。
 

アート&トラベルライター:青山ルビー
ミュージカルやバレエなど、舞台に魅せられて約20年。ロンドン、ニューヨーク、東京で足しげく劇場に通う。「オペラ座の怪人」は25回以上、「レ・ミゼラブル」は15回以上、「RENT」は10回以上鑑賞。新作巡りやキャストにもこだわりが。また、ハワイの大自然と文化をこよなく愛し、ハワイ渡航歴25回以上。ハワイ州観光局公式ハワイスペシャリスト上級(ハープウ)。温泉ソムリエ協会認定温泉マスターソムリエ。
risvel facebook