旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2023年2月26日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

地獄ウォーキングとデコボコ印刷、どちらも楽しみたい! 「界 雲仙」のアクティビティ「ご当地楽」

雲仙と長崎ならではの体験が楽しいアクティビティ「ご当地楽」。無料で体験できるメニューが充実しています。zoom
雲仙と長崎ならではの体験が楽しいアクティビティ「ご当地楽」。無料で体験できるメニューが充実しています。
2022年11月22日、長崎・雲仙温泉にオープンしたばかりの「界 雲仙」。星野リゾートの温泉旅館「界」ブランドのおもてなしといえば、施設があるご当地の文化を体験する「ご当地楽(ごとうちがく)」がおなじみです。伝統工芸や芸能など、その土地の歴史や自然、文化にふれることができるアクティビティを体験せずに帰ってしまうのは、もったいない! ここ雲仙でも、地獄パワーと長崎の文化にふれるメニューを楽しんできました。

雲仙の由来を知る「温泉いろは」と、入浴効果がアップする「現代湯治体操」
江戸時代に唯一、西欧諸国に開かれていた出島がある長崎。標高約700mの温泉地・雲仙を訪れる外国人は、ここを避暑地として好んだといいます。その雲仙の成り立ちや歴史を楽しく学べるのが、夕刻に催される「温泉いろは」。キリシタン殉教の舞台になったことでも知られる雲仙ですが、もともと「温泉」と書いて「うんぜん」と呼ばれていました。それを風流人たちが「雲仙」と表すようになり1934年、一帯が雲仙天草国立公園に指定されたのを機に、正式に「雲仙」と表記するようになったのだそうです。ちなみに雲仙は、日本の国立公園の第1号。そんなエピソードを知ると、温泉地としての歴史の深さがいっそう感じられますね。
上/イラストで雲仙の成り立ちを知る「温泉いろは」。下/「現代湯治体操」では、雲仙地獄の鬼になったつもりで「エイヤッ!」という掛け声とともに体を動かすと、爽快な気分に。zoom
上/イラストで雲仙の成り立ちを知る「温泉いろは」。下/「現代湯治体操」では、雲仙地獄の鬼になったつもりで「エイヤッ!」という掛け声とともに体を動かすと、爽快な気分に。
いっぽう、毎日早朝に催されれるのが「現代湯治体操」。目覚めのストレッチのような内容なのですが、「界」の施設それぞれに特徴があります。例えば、ちょうど1年前に訪れた北海道・白老温泉の「界 ポロト」の体操は、タンチョウヅルの羽ばたきをイメージしたもの。ここ雲仙では“地獄”をキーワードに、棍棒をもった“鬼”になったつもりで掛け声とともに体を動かします。これがなかなか楽しくて、体がシャキッと目覚めます。この二つは、ぜひともセットで体験してみてください。

大地のエネルギーを全身で感じる「雲仙地獄パワーウォーク」
続いて朝食前に体験したいのが、朝の澄んだ空気のなか雲仙地獄を一周する「雲仙地獄パワーウォーク」。地下足袋をはき、足裏から地熱を感じながら、全身を使ってウォーキングを行います。
約1時間で雲仙地獄を一周する「雲仙地獄パワーウォーク」では、大地のエネルギーを全身にチャージ。zoom
約1時間で雲仙地獄を一周する「雲仙地獄パワーウォーク」では、大地のエネルギーを全身にチャージ。
目の前に迫る雲仙地獄の光景に圧倒されるとともに、地熱で温まった場所に集まってくるニャンコたちや、四季折々に異なる自然の光景、野鳥の声にも癒されます。ウォーキングの最後には地熱を感じる広場に寝転がって、体を整えるストレッチを。大地のエネルギーを全身で感じられるだけでなく、朝ごはんも数倍美味しくなること間違いなしのアクティビティです。
ウォーキングの後は、島原地方の郷土料理「貝雑煮」をメインにした和朝食を。zoom
ウォーキングの後は、島原地方の郷土料理「貝雑煮」をメインにした和朝食を。
「活版印刷体験」で、文字を選ぶ楽しさと凹凸の魅力にハマる! 
今回の滞在で最も楽しみにしていたのが、活版印刷のルーツを学んだあと、自分で文字を選んで版を作り、カードに印刷する「活版印刷体験」。近ごろではハンドメイドの温かみが感じられるデコボコの手ざわりに人気が復活している活版印刷ですが、「なぜ雲仙で活版印刷?」と思われるでしょう。
壁に埋め込まれた活字と古い活版印刷機に囲まれていると、活版印刷が主流だった昭和の時代にタイムスリップした錯覚に陥ります。zoom
壁に埋め込まれた活字と古い活版印刷機に囲まれていると、活版印刷が主流だった昭和の時代にタイムスリップした錯覚に陥ります。
活版印刷機は1445年、ドイツのグーテンベルクにより発明されたといわれているのは、歴史の時間に学んだとおり。その印刷機を日本に持ち帰ったのが1582年、ローマを目指して長崎から出港した「天正遣欧少年使節」。13~14歳の4人の使節団のなかには、印刷技術を習得するために派遣された少年もいたのだそうです。長崎からマカオ、マラッカを経てようやくイタリアに足を踏み入れたのは、出港から3年後。印刷機を携え再び日本に帰ってきたのは1590年のこと。活版印刷機とその技術は、8年もの年月をかけて島原半島を経由し日本に持ち込まれたのです。

国内旅行だって大変だった江戸時代、見知らぬ土地へ出掛けて行った少年たちのに旅に想いを巡らせながら活字を選んでいると、大海原とその光景が目に浮かぶようです。選んだ活字を配置したら、最後に活版印刷機を使ってカードに文字を転写して完成。この時のインクの匂いにも、郷愁を誘われます。今回の体験時間は20分ほどでしたが、もっとたくさんの文字を選んで長い文章を作れる有料アクティビティがあれば、次回リピートしたいと思いました。
文字のかすれ具合に味わいがある活版印刷。『湯道(YUDO)』が『YUDOU』になってしまったのは、痛恨のミス!zoom
文字のかすれ具合に味わいがある活版印刷。『湯道(YUDO)』が『YUDOU』になってしまったのは、痛恨のミス!
今回、ご紹介したアクティビティはすべて無料。短い時間で手軽に体験できるうえ、雲仙滞在の楽しさが確実にアップする内容なので、ぜひ参加してみてください。チェックアウト前後には、2カ所ある共同浴場や足湯を楽しむのもおすすめです。どの施設も「界 雲仙」から徒歩数分。地元の人とコミュニケーションできる入浴タイムも、雲仙のさらに奥深い魅力を知るきっかけになります。

◆界 雲仙
長崎県雲仙市小浜町雲仙321
TEL 050-3134-8092(界予約センター)
1泊25,000円~(2名1室利用時の1名料金、税・サービス料込み、夕朝食付き)全51室
※「温泉いろは」「現代湯治体験」「活版印刷体験」は予約不要、「雲仙地獄パワーウォーク」は要予約(12歳以上)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiunzen/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook