旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年4月6日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

リラックス&美肌効果がさらにアップする! 「界 ポロト」の湯治体験

アイヌ文化の建築特徴である「ケトゥンニ」を基本構造とした、「△湯」の内湯。zoom
アイヌ文化の建築特徴である「ケトゥンニ」を基本構造とした、「△湯」の内湯。
今回、滞在した北海道・白老温泉「界 ポロト」のお湯は、太古の植物由来の有機物を含んだ「モール温泉」。「モール」とは泥炭を意味するドイツ語に由来します。世界的にも珍しく、葦など水辺の植物が長い年月をかけて堆積し、地中深くに眠る植物の層を通って湧き出してきたもので、ドイツと日本以外ではあまり見られない泉質なのだそうです。

意外に知らなかった温泉入浴の基本を知る「温泉いろは体験」
弱アルカリ性で、湯上りの肌がるつっるつるになることから、「美肌の湯」とも呼ばれているモール温泉。せっかく訪れたからには、その効果を存分に味わって帰りたいもの。そこで体験したのが、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」オリジナルの湯治プログラム「うるはし現代湯治」。その地の温泉の泉質や自然環境などに習熟した「界の湯守り」がガイドとなり、効果的で楽しい温泉入浴法をアドバイスしてくれるプログラムです。
湯上り処の窓や天井、入り口にも、古代の人が神聖視したかたちといわれている三角形が取り入れられている。zoom
湯上り処の窓や天井、入り口にも、古代の人が神聖視したかたちといわれている三角形が取り入れられている。
まず、1日目の夕刻に参加したのが、「温泉いろは体験」。温泉と湯治の基礎知識とともに、世界的にも珍しい「界 ポロト」のモール温泉について、詳しく解説してくれるプログラムです。

「界の湯守り」さんによると、夕方から夜の入浴はぬるめのお湯にゆったり浸かってリラックスし、翌朝は少し熱めのお湯に入ると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできるのだとか。入浴前後の水分補給のタイミングと、どんな種類の水分を摂るかも大切。「界 ポロト」には、温度が高めの「あつ湯」と低めの「ぬる湯」、露天風呂を備えた「△湯(さんかくのゆ)」と、洞窟のような造りの「〇湯(まるのゆ)」の2カ所の大浴場があり、これを使い分けることで、温泉入浴の効果がより高まるのだそうです。
ただ回数をたくさん入ればいいと思っていた私には、目からウロコの内容が盛りだくさんでした。

気分は北の大地から飛びたつタンチョウヅル!?
翌朝、早起きして参加した「現代湯治体操」では、まずストレッチ中心の体操で体をほぐし、さらに体を大きく使って頭と体を目覚めさせます。
タンチョウヅルになった気分で体を動かす「現代湯治体操」。zoom
タンチョウヅルになった気分で体を動かす「現代湯治体操」。
後半の体操のテーマは、“タンチョウヅルの羽ばたき”。よちよち歩きのタンチョウのヒナが、ぎこちない羽ばたきから、やがて大きく翼を広げて大地から飛び立つイメージで、腕と肩回りを中心に動かします。この体操の後で温泉に浸かれば、肩こり解消に絶大な効果を期待できそう。参加のしるしに御朱印帳らぬ、「お湯印帳」もいただきました。
「界めぐり」に持ち歩きたい「お湯印帳」300円。「温泉いろは体験」参加者は無料でもらえる。zoom
「界めぐり」に持ち歩きたい「お湯印帳」300円。「温泉いろは体験」参加者は無料でもらえる。
タンチョウヅルになった気分で羽ばたいた後の朝食は、自家製豆腐、白みそ仕立てのジャガイモすり流し鍋、北海道では「あぶらこ」と呼ぶアイナメの味噌漬けの焼き物、いくらの醤油漬けなど多彩な内容。普段、朝食はあまり食べない私も、がっつり&しっかりいただきました。
白みそ仕立ての「鮭とじゃがいものすり流し鍋」をはじめ、北海道の食材をふんだんに使った朝食メニュー。zoom
白みそ仕立ての「鮭とじゃがいものすり流し鍋」をはじめ、北海道の食材をふんだんに使った朝食メニュー。
アイヌ民族の自然観にふれる「ご当地楽」
「界」ブランドのおもてなしのひとつに、その土地の文化を体験する「ご当地楽」があります。「界 ポロト」のご当地楽は、アイヌ民族が魔除けとしていつも着けていた「イケマ」という植物を使ったお守りづくり。自然界すべてのものに魂が宿ると考え、自然と共生する暮らしを営んできたアイヌ民族にとって、「イケマ」は悪いものを遠ざける植物と信じられていたのだそうです。「イケマと花香(かこう)の魔除けづくり」では、このイケマと数種類のハーブをアイヌ模様が記された紙で包みます。仕上げに付けるオリジナルのストラップは、モール温泉に浸して茶褐色に色づいたもの。アイヌ民族が大切にしてきた植物と、太古の植物由来のモール温泉、この二つのパワーを組み合わせたお守りには、不思議な力が宿っていそうな気がしませんか。
「イケマと花香の魔除けづくり」でアイヌ民族の自然観にふれる。zoom
「イケマと花香の魔除けづくり」でアイヌ民族の自然観にふれる。
滞在中は、隣接する「民族共生象徴空間 ウポポイ」にも、ぜひ足を運んでみてください。「国立アイヌ民族博物館」を中心に、伝統家屋「チセ」を再現したエリアや、生活空間を体験できる施設、さらに伝統芸能の上演もあり、アイヌ民族の歴史や文化をより深く知ることができます。「ウポポイ」を訪れ、再び「界 ポロト」に帰ってくると、この施設のコンセプトや建物のつくりの意味、そこに込められたアイヌ民族への想いがよくわかります。

◆「界 ポロト」の施設と温泉の魅力は、こちらから。

名残り雪と太古の湯に癒される、とんがり湯小屋の宿「界 ポロト」

■界 ポロト
北海道白老郡白老町若草町1-1018-94
TEL 0570-073-011(界予約センター)
1泊2万8,000円~(2名1室使用時の1名あたり、税・サ込み、夕朝食付き)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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