旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2023年2月17日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

映画『湯道』の世界にどっぷり浸かる! 「界 雲仙」の宿泊プランはいかが?

映画『湯道』の追体験宿泊プランの特典。ガイドブックと水呑み、手拭いはお持ち帰りできます。zoom
映画『湯道』の追体験宿泊プランの特典。ガイドブックと水呑み、手拭いはお持ち帰りできます。
『湯道』って、聞いたことがありますか?
お茶には茶道が、生け花には華道が、書には書道があるように、世界一お風呂好きといわれている日本人に、湯道があっても不思議ではありません。これを提唱しているのが放送作家・脚本家として活躍する小山薫堂さん。湯道の初代お家元、小山さん自身が企画・脚本を手掛けた完全オリジナルストーリーの映画『湯道』が2月23日(木・祝)より公開されます。
星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」で、この映画の世界を追体験できる宿泊プランがあると聞き、さっそく出かけてきました。

映画『湯道』は、日本人の心に沁みる「お風呂エンタメ」の傑作
2015年より小山さんが提唱している『湯道』とは、入浴の精神と様式を突き詰めることで完成する新たな道。京都・大徳寺真珠庵の第27世住職である山田宗正さんから「湯道温心」という言葉を賜り拓かれました。さらに2020年には「一般社団法人 湯道文化振興会」を設立し、日本の入浴文化の保存と普及、国内外への啓もうをする活動をしているというのですから、その本気度が伝わってきます。
2月23日から公開される映画『湯道』は、心も体もしっとり潤い幸せな気分に整う、お風呂エンタメ映画。zoom
2月23日から公開される映画『湯道』は、心も体もしっとり潤い幸せな気分に整う、お風呂エンタメ映画。
小山さんといえば、第81回米アカデミー賞外国語映画賞をはじめ、国内外の数々の賞を総なめにした『おくりびと』(2008年)の脚本を手掛け、大人気のご当地キャラクター「くまモン」の生みの親。今回の映画は、日本の文化「お風呂」について精神や様式を突き詰める新たな道を世に知らしめるべく、構想約7年の歳月を経て完全オリジナルの脚本で制作されました。メガホンをとったのは、『ショムニ』『HERO』などの大人気ドラマをはじめ、映画『マスカレード』シリーズなどで知られる鈴木雅之さん、キャストに生田斗真さん、濱田 岳さん、橋本環奈さんといった今をときめく面々のほか、戸田恵子さん、吉田鋼太郎さん、小日向文世さんなど、ひと癖もふた癖もあるベテラン俳優陣が脇を固めます。
この顔ぶれだけでも、期待値が高まるというもの。詳しいストーリーについては「観てのお楽しみ」ということで省略しますが、本物の銭湯さながらの巨大セットに加え、役者さんたちの健康的でクスっと笑える入浴シーン、目頭がじんわり熱くなる場面もあり、鑑賞後は温かく幸せな気持ちになります。昭和の人気ドラマ『時間ですよ』を思わせる番台は、40~50代以上の人には懐かしく、スーパー銭湯を見慣れた世代には新鮮に映るかもしれません。鑑賞後は、その足で銭湯に駆け込みたくなること間違いなし!の傑作映画です。
●映画『湯道』 2月23日(木・祝)全国東宝系にて公開
公式サイト https://yudo-movie.jp

日本全国の『界』21施設で実施する宿泊プランの魅力とは?
かたや、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」は、1泊2日で湯治体験ができる「うるはし現代湯治」がおなじみ。ガイド役の「界の湯守り」によって大浴場が快適な状態に保たれ、入浴法や呼吸法、くつろぎ方など、より楽しく効果的な湯治方法を伝えています。日本独自の入浴をひとつの道ととらえ、入浴という文化を大切にしたいという両者の想いが一致し、映画の世界を追体験できる今回の宿泊プランが誕生したのだそうです。
宿泊プラン実施中の、長崎・雲仙温泉「界 雲仙」大浴場の内風呂。色鮮やかなステンドグラスがお湯に映り込む朝風呂がおすすめ。zoom
宿泊プラン実施中の、長崎・雲仙温泉「界 雲仙」大浴場の内風呂。色鮮やかなステンドグラスがお湯に映り込む朝風呂がおすすめ。
この宿泊プランを体験すべく訪れたのは2022年11月25日、長崎県・雲仙温泉に開業したばかりの「界 雲仙」。雲仙天草国立公園内にあり、雲仙地獄のパワーを間近で感じるロケーションに加え、江戸時代後期から栄えた華やかな南蛮文化に触れることができる、長崎ならではの異国情緒あふれる温泉旅館です。

プランの特典は、映画『湯道』に登場する「湯道会館」で家元が説く湯への心得と作法を紹介したガイドブック、入浴前の水分補給「潤し水」を飲むときに使う水呑みと、朱色の手拭い。水呑みには家元の家紋と界のロゴがあり、手拭いの朱色は映画の中で最上のランクとされるもの。さらに、映画のタイトル入りの手桶の貸し出しがあります。ガイドブック、水呑み、手拭いの3点は持ち帰ることができるので、自宅に帰ってからも映画の世界と「界」を思い出しながらバスタイムを楽しむことができます。
客室の滞在スペースの半分以上が露天風呂の客室は、あえて「客室付き露天風呂」と名付けられています。zoom
客室の滞在スペースの半分以上が露天風呂の客室は、あえて「客室付き露天風呂」と名付けられています。
さらに館内では、湯上がり処で牛乳やコーヒー牛乳を提供。温泉に入った後、腰に手を当ててグイッと飲み干す冷たいドリンクの美味しさは格別。スポーツドリンクやビールの選択肢もあるけれど、なぜか郷愁を誘う瓶入りの牛乳に、温泉気分が盛り上がります。
ガイドブックに従い入浴してみると、映画のなかで家元が説く入浴の心得や作法と、「界」の「うるはし現代湯治」には共通点がいくつもあることに気付くはず。理にもかなっていて、体に負担が掛かりにくく、入浴効果が高まるばかりでなく、大浴場でみんなが気持ちよく入浴を楽しむためのマナーに通じる部分もあり、これこそ日本人が世界に誇ることができる文化に違いありません。
湯上がり処で提供される、冷たい牛乳。施設によりご当地ブランドが登場するのも楽しみ。zoom
湯上がり処で提供される、冷たい牛乳。施設によりご当地ブランドが登場するのも楽しみ。
「蛇口をひねると、そのまま安心して飲める水が出て、それを人が浸かるために沸かす国なんてほとんどありません。日本人はお風呂に入るたびにそのことに感謝すべきなのです」とは、小山さんが「湯道」立ち上げのきっかけとなった大徳寺真珠庵住職、山田宗正さんの言葉なのだそうです。毎日の入浴で湯船に浸かる習慣があるのは、世界でも日本人くらいとのこと。普段、日本で暮らしているとお風呂場に浴槽があるのが当たり前ですが、海外ではバスルームにはシャワーだけのホテルや家庭は珍しくありません。旅先から帰国してお風呂に使ったときの解放感と心地よさをひしひしと感じた経験を思い出し、改めて日本の入浴文化『湯道』の素晴らしさを実感しました。
宿泊プランは全国21の「界」で実施中。上/「界 仙石原」(左)と「界 霧島」(右)。下/宿泊プランの特典。水呑みには、映画内に登場する家元の家紋と「界」のロゴが入っています。zoom
宿泊プランは全国21の「界」で実施中。上/「界 仙石原」(左)と「界 霧島」(右)。下/宿泊プランの特典。水呑みには、映画内に登場する家元の家紋と「界」のロゴが入っています。
「ああ、やっぱりお風呂っていいなぁ……」、そんな日本人ならではの幸福感を、映画&宿泊プランのW体験で、ぜひとも堪能してみてください。

●映画『湯道』の世界を追体験できる宿泊プラン
全国21カ所の温泉旅館「界」で3月31日まで実施中
※専用サイト https://www.hoshinoresorts.com/sp/kaiyudo/
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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