旅の扉

  • 【連載コラム】***独善的極上旅日記***
  • 2023年1月6日更新
フリージャーナリスト:横井弘海

ハワイに行くなら、一度は「戦艦ミズーリ」見学を!

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戦艦ミズーリ入口

 2023年が幕を開けました。昨年の急激な円安は落ち着き、新年の為替レートは昨年よりも少し円高に振れるまでになりました。久しぶりに海外に出かけるならば、まずはハワイのオアフ島へ!と考えて、今年の計画を立てていらっしゃる方もいることでしょう。

 初めての方にとっても、リピーターの方にとってもオアフ島は誰もが楽しめる、しかも何度行ってもまた行きたくなる特別な島ですね。出かけたい場所はたくさんあると思いますが、もしもまだいらしたことがなければ、一度「戦艦ミズーリ」を訪れてみませんか?

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対峙する戦艦ミズーリと戦艦アリゾナ

★歴史的な戦争の跡地に開館した記念館を訪れる意義 

「Remember Pearl Harbor!」
今でも比ゆ的に使われるこのフレーズを何となく聞きたくないと感じるからか、休息に来ているのだから、戦争のことはまた違う機会にと思ったからか、これまで何度かオアフ島を訪れましたが、パールハーバーに行ったことはありませんでした。
 しかし、今、ロシア・プーチンによるウクライナ侵攻が長引くにつれて、戦争というものを突然身近に感じるようになりました。現地を訪れてみたら、「Remember!!」などと言われるなんて杞憂。それより、戦争、平和、人間について、たくさん思うところがありました。

 真珠湾(パールハーバー)は、ホノルル国際空港から約5km、ワイキキから約18kmの位置にある入り江です。湾内はアメリカ海軍太平洋艦隊司令部などが置かれている軍事拠点です。

 旧日本軍による真珠湾攻撃は、1941年(昭和16年)12月8日未明、ホノルルでは現地時間7日日曜日の朝でした。
その際に爆撃されて沈没した戦艦アリゾナ ( USS Arizona Memorial)は海中にそのまま静態保存されています。真珠湾攻撃を記憶に残し、亡くなった兵士を慰霊するため、1962年に、船体をまたぐように記念館が作られました。米国海軍が運航する船で往復するアリゾナ艦上の記念館は、いつも多くの訪問客がいます。

 そして、戦艦アリゾナに向かい合うように、錨もおろさない、海に浮いた状態で、もうひとつ記念館があります。艦上で第二次世界大戦の正式な停戦条約が締結された戦艦ミズーリです。

 戦争の始まりと終わり。戦艦ミズーリがたどった歴史を実際に戦艦の中を歩きながら振り返るとともに、未来の平和を考える場所として、世界中の人々に伝える意義深い記念館です。

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第二次世界大戦の正式な停戦条約が締結された戦艦ミズーリ

★戦艦ミズーリとは?

 排水量が満載で58,000t、全長887 ft 3 in (270.4 m)、全幅108 ft 3 in (33 m)、吃水38 ft (11.6 m)、最大速 33 kn (61.1 km/h)。こうして数字を並べてみるより、戦艦に乗ってみれば、大きさを実感できるでしょう。乗組員は第二次大戦の頃は3,000名を数えました。そんな大国と日本はよく戦争をしようと思ったなぁとあらためて思うのではないでしょうか。

 1941年(昭和16年)1月6日、ニューヨーク州ブルックリンのニューヨーク海軍造船所で造船が開始され、12月7日にパールハーバー攻撃を受けた時は造船中。この攻撃により、造船が早まったと言われます。3年後の1944年(昭和19年)1月29日に進水式を迎え、同年6月11日、アメリカ海軍最後の戦艦として就役。硫黄島、沖縄、茨城県日立市や北海道室蘭には艦砲射撃も行ったそうです。

 1945年(昭和20年)9月2日、東京湾内に連合国側の戦艦250隻に取り囲まれて停泊した戦艦ミズーリにて、乗組員3000人が見守る中、降伏文書調印式が行われました。 マッカーサー元帥を始めとする連合軍代表と、日本からは政府全権重光葵外務大臣、大本営全権梅津美治郎参謀総長ら11名が出席。
これにより第二次世界大戦が正式に終結を迎えました。日本を巡る関係はここまでですが、その後、戦艦ミズーリは朝鮮戦争に赴きます。1955年の退役以降以降は予備役の状態でしたが、近代装備を整えたのち、1986年には再就役。1991年には湾岸戦争にも行きました。1992年に世界中の戦艦のなかでは最後に完全退役。1999年1月29日に博物館として公開が始まりました。


神風特攻隊のコーナーもありますzoom
神風特攻隊のコーナーもあります

★日本語ツアーが絶対におススメ!

 日本語ガイドがいれば、なのですが、35分の日本語ツアーを催行しています。私はみどりさんという英語も堪能なガイドさんに説明をしていただきました。戦艦ミズーリに乗っていた退役軍人の方々はじめ、様々な方々に話を聞いて勉強していらっしゃるのがよくわかりました。何を聞いても、答えてくれます。
ガイドツアーに参加されれば知識が増えるのはもちろんですが、日本と米国とその時代に生きた人たちの思いをより深く感じることができて、きっと感動するはずです。ツアーの詳細は、来館後、戦艦の上にあるカウンターで確認してください。

★神風特攻隊と戦艦ミズーリ

 セカンドデッキに「Kamikaze展」の展示があります。意外な気がしましたが、鹿児島県南九州市の知覧特攻平和会館の協力のもと、特攻隊員の遺品や家族や愛する人へ宛てた手紙などが展示されているのです。
 1945年(昭和20年)4月11日、ミズーリは沖縄海域にて上空約30メートルから一機の神風特攻機の攻撃を受けました。右舷艦尾付近に衝突し、火災を起こした後に、デッキの上に残骸とともに、特攻隊員の遺体を発見します。
 翌日、当時の艦長、ウィリアム・キャラハンの命令により、特攻隊員の水葬が戦艦ミズーリの甲板上で行われました。「敵とはいっても国のために命を懸け、自分の使命を全うしている。それは同じ兵士として尊敬に値する。亡くなった後は、敵も味方もない。一人の戦争犠牲者でしかない」というのが艦長の考えだったと、みどりさんが説明してくれました。
 遺体には乗組員が手縫いした旭日旗をかけ、海軍式の水葬が行われたそうです。キャラハン艦長は兄をガダルカナル島の戦いの時に、日本軍の攻撃で亡くしていたそうです。それでも敵兵は敬うという姿を見せた。いう話が残っています。パイロットの身元も数年かけて調べた結果、鹿児島県鹿屋から出発した2人まで絞ることができたそう。あらためて、戦争とは何かを考えさせられました。

「神風特攻機の話をするときにどんな思いで話しているのか?」と、みどりさんはよく聞かれると言います。「テロリストアタックが《神風》なのではなく、戦況が悪化し、最終的に人間を武器として使うことになってしまい、終戦から10か月前のフィリピンから終戦まで4000人亡くなった一方、米国はこの攻撃により30隻以上の船を失ったこと、また神風特攻隊の意味も必ず伝えています」とみどりさん。日本語ガイドさんの役割は重要です。

元気で優秀なガイドのみどりさんzoom
元気で優秀なガイドのみどりさん

★ダグラス・マッカーサーの突然のスピーチ

 戦艦ミズーリの艦上で第二次世界大戦は正式に終結しました。甲板にはその日の出席者の写真や原寸大の降伏文書の複製などが展示されています。出席者の前に現れたマッカーサー元帥が、調印式に先駆けて2~3分、予定にないスピーチを行ったエピソードをみどりさんが教えてくれました。
 
 その日の通訳を務めた外交官の加瀬 俊一氏の回想です。原稿も打ち合わせもないなか、マッカーサー元帥が話したのは、降伏や服従などの言葉は一切なく、「自由、寛容、正義の世界が生まれるような世界を願っている、それが全人類の希望である」という前向きなスピーチだったそうです。

 日本は戦後80年近く戦争をせず、平和を何とか保っています。でも、戦争がいかに愚かなことかとわかっていても、そこに突き進む人が今もいるという現実をどうしたら変えられるのでしょう。

 ハワイの青い空と青い海を誰もが心から楽しめる日が早く来ますようにと、ここに来て、心から感じました。

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乗組員3000人が一緒に生活していた巨大な戦艦

★ワイキキからのアクセス:

*車なら:
H1フリーウェイで空港方面へ“Pearl Harbor”の標識に従い進みます。
"Arizona Memorial/Stadium" と書かれた15A出口を出ます。("NAVAL BASE"の出口ではないのでご注意ください。)
"Pearl Harbor Historic Sites"とかかれた茶色の道路標識に従って進むと、パールハーバー・ビジターセンターへ到着します。

*ワイキキからバスで:
20番又は42番の西方面行きのバスを利用します。
所用時間は 1時間前後。パールハーバー・ビジターセンターの駐車場で下車。
午後のバスの中には、パールハーバー・ビジターセンター敷地内に入らず、一般道沿いのバス停にのみ停車するものもあるので、ご注意ください。
ただし、ほとんどの人が降りますので、わかると思います。

*パールハーバー・ビジターセンターから
シャトルバス(料金は観覧用パスに含)が、
パールハーバー・ビジターセンターから8:00から約15分おきに毎日運行。
バス乗り場は、太平洋艦隊潜水艦博物館の山側(アリゾナ記念館の入り口から右方向)。

尚、戦艦ミズーリ記念館は米軍基地のフォード・アイランド内にあり、一般は通行禁止です。

★インフォメーション
*戦艦ミズーリ記念館 (The Battleship Missouri Memorial at Pearl Harbor, Hawaii.)
https://ussmissouri.org/jp/#

フリージャーナリスト:横井弘海
元テレビ東京アナウンサー。各国駐日大使を番組や雑誌でインタビューする毎に、自分の目で世界を見たいという思いが強くなり、訪問国は現在70カ国超。著書に「大使夫人」(朝日新聞社刊)。国内旅行は「一食一風呂入魂!」。美味しいモノと温泉を追いかけて、旅をしています。
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