先日、生まれて初めてサーフィンしてきました。

僕は子供の頃、海の近くに住んでいたことがありますし、大人になってからもトライアスロンをやっていたこともあって、海やビーチにはわりと慣れ親しんできた方だと思っていたのですけど、あの、サーフボードを持って入る海は、僕の知っている海とは何もかもが違いました。別世界です。水面の高さから見るパノラマ景色。ゾクゾクしちゃうね。

うまい具合にボードの上に立てた時は、それはそれですごく嬉しい。でも、何もできずに波にもみくちゃにされてるだけでも何故か楽しいんだ。慣れないもんだからボードが顔面に当たっちゃってね。アドレナリン出てるから痛くも何ともないの。鼻血たらしながら波に向かっていく姿を見て、冷静な方の自分が呆れ返ってました。

サーファーってちょっと特殊な人たちだと思いませんか？いえいえ、彼らを変人扱いするわけではありません。僕が言ってるのは彼らに共通する特有のムードのこと。「悟り」とでも言えばよいでしょうか。僕らには見えないものが彼らには見えているような気がするの。バイクに乗る人や山に登る人たちにも似たようなところがありますけど、サーファーのそれは中でもちょっと特別だと思います。職業や年齢や地位や生活環境は関係ないんだ。サーファーはサーファーなの。

サーフィンと言えば、ハワイとか西海岸とか、いかにもパームツリーな土地のことを想像するけど、聞けばニューヨークにもサーファーはいるみたいですね。彼らは海辺に共同で小屋を借りてて、サーフィンに必要なものは全部そこに置きっぱなし。週末になると手ぶらで海に集まって来るそうです。移動手段は地下鉄。波乗りの後はビーチニック。波がなくても小屋でパーティー。やってることは世界共通なんだけどね。ファッションとか音楽とかやっぱりちょっと洗練されているようです。

ふうむ。もし、生まれ変わってサーファーになるとしたら、やっぱり僕は断然ニューヨーカーだね。

ノーノー、マックさん。何か忘れてやしませんか？

え？

ニューヨークもいいですけどね。マックさんにはヨーロッパを目指してもらいたいです。

あら？ヨーロッパにもサーファーがいるの？

あたりまえですよ。サーフィンに必要なのは海と波。そもそも地球は海と波でできてるんですから。サーファーのいない土地なんてありませんよ。

そんな友人のレコメンドはグランブルーなサーフィン。「グランブルー」って知ってますか？若い人はわかんないかなあ。２０年ぐらい前にヒットしたリュックベッソンの映画。海とイルカに魅せされた素潜りダイバーのお話。地中海やエーゲ海、南ヨーロッパの美しい海が舞台でね。ロマンスあり、友情ありのストーリーもいいんだけど、とにかく目にするものが全てかっこいいの。海、街並、建物、車、レストラン、登場人物とその出で立ち、、。グランブルーに影響受けたって人、僕らの世代にはけっこう多いと思います。

地中海やエーゲ海にもしっかりサーフ・ポイントはあるらしいです。ただ、波が立つシーズンが限られていたり、風の流れを読みにくかったり、良い波に出会うのはそう簡単ではない。だからこそ価値があるんですよ。と友人は語る。グランブルーなサーファーたちは、６０年代とかのエアコンもついてないような古い車に使い込んだサーフボードとアコースティック・ギターと大量のワインを詰め込んで、波を求めてビーチからビーチへと旅して回る。あ、パーティーに誘われた時のために、ちゃんとジャケットと蝶ネクタイも携帯しています。

僕だったら、普段着はオーチバル（オーシバル）の赤いボーダー、短かめのシルク・スカーフを首に巻いて、真っ黒でまん丸レンズのサングラス。パーティーにはやっぱり白いリネン素材のジャケットだよなあ。シューズはスニーカーでよろしい。車は赤いフィアット５００でトレーラー引っぱってるのが希望だけど、友達がフォルクスワーゲンのタイプ２を持ってるんでね。そっちに乗せてもらうことにします。

グランブルーなサーフィン。いかがですか？