旅の扉

  • 【連載コラム】ナンバーワンよりオンリーワン
  • 2022年5月23日更新
旅の道中、「愛すべき変なもの」を見つけたら、書かずにはいられない!
トラベルジャーナリスト:松田 朝子

もうすぐ閉館!世界中のインスタグラマー憧れのミュージアム

花と人の森、埋もれ失いそして生まれる。1年間の花が1時間かけて変わっていきます。 写真:y-photo / iijima yuji zoom
花と人の森、埋もれ失いそして生まれる。1年間の花が1時間かけて変わっていきます。 写真:y-photo / iijima yuji 
2018年6月、青海のパレットタウンにオープンした、森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダーレス。ここは世界で一番最初にできたデジタルミュージアムで、
翌年2019年には米TIME誌が選ぶ、「世界で最も素晴らしい場所」にも選ばれています。そんな素敵なミュージアムも、パレットタウンの再開発により、2022年8月31日で閉館となります。オープンと共に世界中のインスタグラマーの憧れの地となったミュージアム、閉館前にみておきたくて足を運んでみました。

今や世界中に広がるアート集団「チームラボ」による「チームラボボーダレス」。名前の通り、コンセプトは「ボーダーレス」、境界がないのです。このミュージアムの一番大きな特徴は、順路がなく、地図もない。迷路みたいな空間をさまよい、探索し、発見するといった、従来の美術館とは違う楽しみ方があるミュージアムなのです。
境界のない群蝶、人から生まれる儚い命。蝶の生まれる部屋は見落としてしまいそう。zoom
境界のない群蝶、人から生まれる儚い命。蝶の生まれる部屋は見落としてしまいそう。
最初に辿り着いた部屋は、「バタフライハウス」。ここは人がいないと真っ暗なのですが、部屋に入ってしばらくすると、自分の体に蛹が現れ、蝶へと変化していきます。またその蝶は、隣接する作品「花と人の森、埋もれ失いそして生まれる」へ。飛んでいきました。様々な花が咲くこの空間では10秒ぐらい立っていると、足元から花が咲き、壁に咲いた花も触れると散っていきます。人がいて初めて作品が変化し、境界がなく作品が続いていく世界は、チームラボボーダーレスのコンセプトでもあり、入ってすぐにそのコンセプトを体験することができます。

地形の記憶。迷路のようになった「棚田」の中を歩きます。 写真:y-photo / iijima yuji zoom
地形の記憶。迷路のようになった「棚田」の中を歩きます。 写真:y-photo / iijima yuji 
「地形の記憶」。実際の現実の時間の流れと共に、作品も変化する棚田を表現した作品です。
この中を歩いていると、そこはかとなく青々しい香りが。ミュージアムの中では、作品ごとに異なるアロマが焚いてあります。なので、部屋が変わって、作品空間も変わったことが香りからもわかるようになっているのです。
Black Waves - Continuous。海外のアートファンから人気が高い作品。写真:y-photo / iijima yuji zoom
Black Waves - Continuous。海外のアートファンから人気が高い作品。写真:y-photo / iijima yuji 
Black Waves - Continuousというこの空間は、古典的な東アジアの美術の技法を用いて、線の集合で波を描いたもの。空間内を所狭しと渦巻く荒波は線と泡だけで表現されたものなのです。ここもそうですが、ミュージアム内は床が鏡面のところが多く、床に写り込んだ作品も含めて写真を撮ると、ボーダーレス感も一際高まります。
呼応するランプの森 - ワンストローク、藤 (上)呼応するランプの森 - ワンストローク、ツツジ(下) 写真:y-photo / iijima yuji zoom
呼応するランプの森 - ワンストローク、藤 (上)呼応するランプの森 - ワンストローク、ツツジ(下) 写真:y-photo / iijima yuji 
ミュージアムオープン直後に世界中のインスタグラマーを魅了し、今も大人気なのが、「呼応するランプの森」。ベネチアングラスで作られた無数のランプは、人の気配を察知すると、最も近いランプに灯が点ります。そのランプはさらに隣の2つのランプを輝かせます。そうやって次々と横に伝播していく光は、一筆書きを描くように、一度も同じ場所を通らないで自分の場所に戻ってくるのです。美しい数式によって作られている、ランプによる三次元の一筆書き。どれが自分の光か追跡できないほど、あっという間に光の洪水に包まれます。季節によって変わる作品は、今月5月は藤とツツジ。迫り来る藤棚にいるような一体感を味わえるでしょう。
人々のための岩に憑依する滝。 写真:y-photo / iijima yuji zoom
人々のための岩に憑依する滝。 写真:y-photo / iijima yuji 
「人々のための岩に憑依する滝」では小高い岩に上がり、壁に背中をつけて立っていると描かれていた滝の水流が変わっていきます。滝の水は、人の体の上や岩に流れて様々な水紋を描き、一つとして同じ模様は見られません。また、立っている背中から次々に花が咲き始め、いつの間にか花でいっぱいに。ここでは1時間かけて1年間の季節の花が見られ、様々な作品が常に混ざり合います。

世界中のインスタグラマーが憧れるミュージアム「チームラボボーダレス」は、渡航制限が解除されると一気にチケットが完売になる可能性があるため、来館は海外旅行客が増える前の今がおすすめ。なお、チームラボボーダーレスは8月末の閉館後、2023年には都内に移転が決まっており、
ボーダーレスの世界は to be continue となります。詳細はまだ未発表ですが、こちらもまた楽しみですね。

会場情報
森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダーレス
東京都江東区青海1-3-8 お台場パレットタウン
https://borderless.teamlab.art/jp/

大人(高校生以上)3200円、障がい者割引1600円、子ども(4歳〜中学生)1000円
営業時間は毎月異なるため公式HPを確認
トラベルジャーナリスト:松田 朝子
頭の中は、旅と猫とアルゼンチンタンゴで占められているトラベルジャーナリスト。日本旅行作家協会所属。大好きな地層と砂漠と赤い岩山のあるアメリカに良く出没。

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