旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年2月10日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

島旅・五島 #5 島の恵みを味わうイタリアンと、毎日通いたいカフェ&居酒屋

「島食Gino」のランチコースの前菜。ハーフピッツァかハーフパスタ、デザート、ドリンクが付いて1500円は、コスパよすぎです!zoom
「島食Gino」のランチコースの前菜。ハーフピッツァかハーフパスタ、デザート、ドリンクが付いて1500円は、コスパよすぎです!
島旅の魅力の一つに、その場所でしか味わえない“食”があります。
長崎県五島市の福江島は、海の幸はもちろんのこと、野菜やお肉にも特徴のある島。「島旅・五島」の最終回は、その島の恵みを味わえるスポットを3カ所、ご紹介します。


五島の食材をふんだんに使った人気のイタリアン「島食Gino(ジーノ)」
のどかな田園地帯にぽつんと立つ白い建物は、知る人ぞ知る地元で評判のイタリアン「島食Gino(ジーノ)」。店内に入ると、窓の外には1枚の絵のような田園風景が広がり、キッチンから漂ってくるのは、食欲をそそるガーリックと香ばしいピッツァの香り。
田園風景に白い壁が映える店ヘは、街の中心部から車で約10分。zoom
田園風景に白い壁が映える店ヘは、街の中心部から車で約10分。
お店を切り盛りするのは、オーナーシェフの柳野達治さんと奥さまの栄里さんご夫妻。柳野さんは五島出身で、いずれは島に店を開くことを夢見て長崎県内のイタリアンで腕を磨いたのだそう。野菜、肉、魚、それぞれの持ち味を生かした料理を得意とし、それをギュッと凝縮して味わえるのが、ランチコースの前菜(トップの写真)です。
この日のメニューは、脂がのったブリのカルパッチョに、季節の野菜のサラダ、五島豚の自家製ロースハム、フリッタータと五島野菜のピクルスの盛り合せ。一つひとつに食材の味がしっかり感じられ、なかでも野菜の味が濃い! ブリの上品な脂の甘み、ロースハムのきめ細かな肉質からあふれる旨みにもうっとり。

この店でぜひとも食べてみたいのが、石窯で焼くピッツァ。「五島つばき酵母」で発酵させた生地は引きが強く、モッチモチの食感。小麦の香りもしっかり感じられ、トッピングの肉や野菜の風味もこれに負けていません。口のなかにいつまでも味の余韻が残ります。
生地に五島つばき油を使った、「五島産ほうれん草と五島豚のサルシッチャのピッツァビアンカ」(1300円)。zoom
生地に五島つばき油を使った、「五島産ほうれん草と五島豚のサルシッチャのピッツァビアンカ」(1300円)。
シェフは狩猟免許の持ち主。イノシシやシカなどのジビエ料理が並ぶこともあると聞き、次回はディナーに訪れ、ワインのペアリングとともにじっくり時間をかけて味わいたいと思いました。

■島食Gino(ジーノ)
長崎県五島市岐宿町河務593
TEL 0959-82-1680
11:30~15:00、18:00~21:30
月曜休
https://www.facebook.com/gotogino/


ひとり旅でも立ち寄りやすい島のコミュニティカフェ「ソトノマ」
ランチやティータイムに毎日でも通いたいのが「ソトノマ」。みんなから「お母さん」と呼ばれ慕われている創業者の有川和子さんは、東日本大震災を機に大阪から故郷へ戻り、「自分の家の居間や茶の間のようにくつろいでもらえる場所を作りたい」と、この店をオープンしたといいます。
「家の外にある居間=外の間(ソトノマ)」が店名の由来。zoom
「家の外にある居間=外の間(ソトノマ)」が店名の由来。
その有川さんが腕を振るうランチのメニューは日替わりで、五島豚の煮込みハンバーグ、コロッケ、カツなどのメイン料理に、ひじきの煮物やきんぴらといった小鉢とお味噌汁付き。お米、野菜、卵、調味料もほとんどが五島産です。

グループでもゆったり過ごせるテーブル席、おひとりに居心地がいカウンター、靴を脱いでくつろげる小あがりもあり、思い思いの場所で過ごせるのがいい。このアットホームな雰囲気に、お店にやってくるのは地元在住の子連れママさん、おじいちゃんおばあちゃんのほか、移住者や、一人旅の女性も。ボリュームがあるのに優しい味付けの料理とくつろげる雰囲気、近所にあったら毎日でも通いたくなります。
「日替わりランチ」各850円。ボリュームはあるのだけれど優しい味付けだから、毎日でも食べたくなる。zoom
「日替わりランチ」各850円。ボリュームはあるのだけれど優しい味付けだから、毎日でも食べたくなる。
店内では、店の料理にも使われている卵や調味料のほか、自家製のパン、地元アーティストの作品も販売。これらを眺めていると、この島の食の豊かさが伝わってくるように感じました。

■ソトノマ
長崎県五島市堤町1348-1
TEL 0959-88-9191
9:00~16:00(夜は予約対応で営業)
木・金曜休
https://sotonoma.wixsite.com/home/


新鮮な魚介と創作料理が楽しみな「居酒屋 盛(もり)」
最後に、五島ならではの新鮮な魚介を味わえる「居酒屋 盛」をご紹介。福江港に近く、目利きの大将が選んだ魚と創作料理が食べられる店です。まず注文したいのが、「刺身の盛り合わせ」。その日によって内容が変わるので、おまかせでお願いするのがおすすめ。訪れた日は、ハガツオ、ミズイカ(アオリイカ)、アジのほか、「伊勢エビより旨い」という人もいるウチワエビも。濃厚な甘さととろけるような食感には、九州のたまり醤油がよく合います。
「居酒屋 盛」では、刺身盛合せと「五島牛の握り」を必ず注文したい。五島産の焼酎との相性も申し分なし!zoom
「居酒屋 盛」では、刺身盛合せと「五島牛の握り」を必ず注文したい。五島産の焼酎との相性も申し分なし!
一品料理では、すり身あげ、キビナゴとアオサの天ぷらのほか、鶏のから揚げ、だし巻き玉子といった居酒屋の定番メニューもきっちり押さえています。〆に食べたいのが、五島牛の握り、五島うどんのカルボナーラ……、などなど。これでも、メニューのほんの一部。さらに、裏メニュー的創作料理が登場することもあるのだとか。島に数日滞在し夜な夜な通っても、全品食べつくすのは難しいほど豊富な料理も魅力です。 

選ぶ魚の種類やお酒の量にもよりますが、お腹いっぱい食べて飲んで一人5000円ほど。人気店なので、旅の予定が決まったらなるべく早く予約しておくことをおすすめします。

■居酒屋 盛
長崎県五島市栄町5-15
TEL 0959-74-1622
18:00~22:30(L.O.)
日曜休

四方を海に囲まれた五島市の福江島。食材の鮮度と力強さだけでなく、それを調理し食べさせてくれる料理人やお店のスタッフの人柄にも魅了されます。こんなお店が地元にある福江島の人たちを、うらやまずにはいられません。年間約200人の移住者がいることでも注目されている五島。食の豊かさも、その理由のひとつであることは間違いなさそうです。
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
risvel facebook