旅の扉

  • 【連載コラム】トラベルライターの旅コラム
  • 2022年2月9日更新
よくばりな旅人
Writer & Editor:永田さち子

島旅・五島 #4 釣り人あこがれの聖地で大物をキャッチ!

高級魚のアオハタをキャッチ! 青い魚を想像していたら、縁起のいい金色。zoom
高級魚のアオハタをキャッチ! 青い魚を想像していたら、縁起のいい金色。
釣りをしたことはありますか?
長崎県・五島列島は、海釣りをする人なら誰でも知っている釣り人の聖地なのだとか。特に五島市の福江島は長崎・福岡からのアクセスが便利なうえ、五島列島の南端に位置することもあり、黒潮の影響で釣り場として絶好の条件に恵まれているのだそうです。

それを聞いたら、体験せずにはいられません。
「島旅・五島」4回目は、まったくの初心者でも、“グ、グ、グィィ~ッ!”とくるエキサイティングな引きを味わえる、海釣り体験のクルーズをご紹介します。

手ぶらでOK。漁師さんの手ほどきで、いたれりつくせりの釣り体験

とはいえ、マイ釣り竿などの道具もなく、仕掛けやエサの付け方もわからない初心者が、いきなり海釣りができるのかしら……
いえいえ、「五島市体験交流協議会(株式会社JSH)」に1週間前までに申し込みをしておけば、そんな心配は一切なし。ベテランの漁師さんがすべて準備を整えてくれるから、あとは当日、指定の港に集合するだけ。荒天の場合は魚をさばくなどの体験に変更してもらえるので、ぽっかり予定が空いて途方に暮れることもありません。
「みさき丸」の船長・松本隆三さん。眼光鋭い?漁師さんですが船上での気配りが素晴らしく、トークでも楽しませてくれます。zoom
「みさき丸」の船長・松本隆三さん。眼光鋭い?漁師さんですが船上での気配りが素晴らしく、トークでも楽しませてくれます。
今回、お世話になったのは、「みさき丸」船長の松本隆三さん。釣り体験民泊も行っている漁師さんです。開口一番、
「今日はみなさんに、釣っていただきますからね!」
と、力強い言葉。参加者は女性ばかり5名。全員、釣りは初心者です。じつは私、管理釣り場で数回、海釣りもボート釣り程度の経験があるのですが、自分では仕掛けもエサも付けられないレベル。初心者といって間違いないでしょう。
この日は1年に数えるほどしかないという穏やかな釣り&クルーズ日和。zoom
この日は1年に数えるほどしかないという穏やかな釣り&クルーズ日和。
港を出た「みさき丸」は20分ほど航行し、釣り場を目指します。この日は風もなく穏やかな晴天。海も凪いでいて、快適なクルーズ日和です。釣り好きが高じ、五島に移住して約16年になるという松本船長。日本中にある島のなかから福江島を選んだ理由や、この土地の魅力もたっぷり語ってもらっているうち、あっという間に目的のスポットに到着です。

船を停泊させ、手早く人数分の竿と仕掛けの準備を始める松本船長。エサは、キビナゴ、お刺身でも食べられそうな活アジ、ルアーも登場しました。糸のたらし方、リールの操作方法などを教えてもらい、5人の“にわか釣りガール”も準備万端。

釣りが全く初めてでも、釣り竿の持ち方から糸のたらし方、合わせ方まで船長が丁寧に教えてくれます。zoom
釣りが全く初めてでも、釣り竿の持ち方から糸のたらし方、合わせ方まで船長が丁寧に教えてくれます。
ビギナーズラックだっていいじゃない! 太公望気分の海釣りデビュー

釣り場の水深は60~70m。ちょこちょこと竿を動かしながら誘っている(つもりになっている)と、“コツン”とアタリが来ました。「もしや、これは!?」、竿を合わせた途端、グ、グィ~ッとくるではありませんか。60m分のリールを巻くのは思ったより時間がかかりますが、段々と引きが強くなってくるのがわかります。必死で巻き続け、海面に姿を現したのは紅白のストライプが鮮やかな魚。
「これは、なんだろうねぇ。五島では食べない魚だね」
と松本船長。つまり、およびじゃない外道(げどう)ということなので、残念ながらリリース。

そうこうしている間に、高級魚のアカヤガラ、本日の本命アオハタも掛かり始めて、船上のあちこちで歓声があがります。最後の引き上げの瞬間に魚が外れてしまうことがないようサポートしてくれる松本船長のかたわらで、タモ網を用意する人、カメラを構える人と、船上では見事な連係プレイができあがっていました。
アカヤガラは関東では見かけることが少ない魚ですが、関西以西では高級魚としてお吸い物によく利用されるのだとか。アオハタはクエの仲間でハタ科の魚。お刺身のほか、鍋ものにしてもいい出汁が出るそうです。
今回の釣果は、左から外道、高級魚のアカヤガラ、本日の本命アオハタ。zoom
今回の釣果は、左から外道、高級魚のアカヤガラ、本日の本命アオハタ。
一度体験すると病みつきになる楽しさ

ひと騒ぎして落ち着いたところで松本船長が用意してくれたのは、先ほどまで生け簀で泳いでいたミズイカ(アオリイカ)のお刺身。
「今日は特別にサービスです!」
鮮度抜群のイカは、コリコリの食感ととろけるような甘さ! ちょこっと醤油をたらし、イカワタを絡めて食べると、その美味しさに箸が止まりません。釣りの楽しさとともに、この美味しさも病みつきになりそう。

釣り人あこがれの聖地といわれる五島市の福江島。実際に、空港では釣り竿やクーラーボックスを携え、バリバリの“釣り師”ファッションの人を何人も見かけました。海釣り、しかも船で沖に出ると聞くとハードルが高く感じますが、気軽なクルーズと同じ感覚で楽しめるのが、この釣り体験のいいところ。釣れた魚は持ち帰りや宅配で送ることもできますし、「みさき丸」のように釣った魚を調理して食べさせてくれる民泊を利用するのもいいでしょう。
直前まで生け簀で元気に泳いでいたミズイカ(アオリイカ)のお刺身は、松本船長からのサービス。zoom
直前まで生け簀で元気に泳いでいたミズイカ(アオリイカ)のお刺身は、松本船長からのサービス。
必要な装備は、多少濡れたり汚れたりしても平気で防寒になる服装と、足もとは滑りにくいシューズのみ。船上は紫外線も強いので、日焼け止めと帽子、サングラスがあると安心です。あとはタオルを1枚用意しておくと便利。

釣り竿から伝わってくる感触と、魚が海面に姿を現した時の興奮は、体験した人にしかわかりません。竿から伝わってくるあの感覚が今でも手に残っていて、またすぐ海を超え再び”釣り人”気分を味わいたい気持を抑えられないでいます。

■五島市体験交流協議会(株式会社JSH)
長崎県五島市末広町3-4
TEL 0959-76-3600
9:00~18:00(問い合わせは平日のみ) 
※乗船時間は応相談、申し込みは1週間前までに。
https://www.goto-shimatabi.com

■みさき丸
長崎県五島市小泊町171
TEL 080-5283-0026
https://misakimaru.business.site/
YouTubeチャンネル【釣り体験民泊みさき丸】で検索。
Writer & Editor:永田さち子
スキー雑誌の編集を経て、フリーに。旅、食、ライフスタイルをテーマとし、記事を執筆。著書に、「自然の仕事がわかる本」(山と溪谷社)、「よくばりハワイ」「デリシャスハワイ」(翔泳社)ほか。最近は、旅先でランニングを楽しむ、“旅ラン”に夢中!
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